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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【7月21日㈬~7月27日㈫】

先週、先々週、当通信で告知させて頂いた、7月24日の岩波ホールでの『わたしはダフネ』フェデリコ・ボンディ監督と主演カロリーナ・ラスパンティさんのオンライン舞台挨拶、無事終了しました。

オリンピックも始まったし、この酷暑だし、お客様に全然ご来場して頂けなかったらどうしよう?カメラを客席に向けて、監督とカロリーナさんにこちらの様子を見て頂くことも出来ない…と不安だったのですが、おかげさまで大勢のお客様がお越し下さり、後半のQ&Aタイムも活発な質疑応答が行われて、充実した時間となりました。ご来場下さった皆さん、どうもありがとうございました!イベントの模様は、担当のStaff Hが当noteにアップしてくれているので、ぜひお読みください。

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※カロリーナさんのzoomがうまく繋がらず、監督の機転でカロリーナさんはFace Timeを利用しての変則的登壇となりました。監督にはずっとこの姿勢で申し訳なかったですが、お客様には無事、カロリーナさんのお姿を見て頂けたので良かったです。

カンヌ国際映画祭も終わり、海外の権利元からは「ロカルノ国際映画祭出品作のお知らせ」だの、「ヴェネチア国際映画祭コンペ部門へのエントリーが決まりました」だのというセールスメールが連日何十通と届いている今日この頃です。感染者数が再び上昇傾向にある国も多いヨーロッパですが、ロカルノもヴェネチアも、今年はカンヌと同様に現地で開催されるようで、少しでもコロナ前の状況に戻したい、という主催者の意志が強く感じられます。私も行きたいけど、ワクチン接種はこれからだし、渡航先での到着後の隔離は無かったとしても、帰国時の隔離は免れられないでしょうし、まだ当分は無理かなぁ、という感じです。

例年なら6月末から7月にかけて行われていたイタリア映画の新作ショウケース、Italian Screeningも、先週イタリア現地で行われ、今週オンラインで行われています。昨年当noteで連載した“Histoire De Zazie Films”の16回目「イタリアは呼んでいる」の中で詳しく書いているのですが、イタリア映画振興を目的として、各国のバイヤーを招待して行われる催しで、私も一昨年まで何度か招待を受けて参加していました。2年毎に開催地を変えて行われ、私が参加したのは、バーリ、ナポリ、レッチェという南イタリアの都市で開催された回。今年は参加者が限定されるからでしょうか、フラスカーティという、ローマ近郊で行われたようで、イタリアのある会社のセールス担当者は、会食の楽し気な様子をインスタにアップしたりしていて、羨ましい限りでした。

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※一昨年、レッチェで開催されたItalian Screeningでの懇親ディナーの様子。

『わたしはダフネ』の買付けを決めたのは、一昨年のベルリン国際映画祭だったのは何度か書きましたが、Italian Screeningで観て買付けを決めた映画についても、「どうせ観光気分で、仕事なんてしてないんでしょ?」と疑惑の目を向ける方に向けて(被害妄想。笑)、書いておきましょう。それは、2019年2月に公開した『ナポリの隣人』(’17)。ナポリの下町に一人暮らす、娘との確執を持つ元弁護士の老人が、隣に越してきた若い夫婦とその子供と交流を育んだのも束の間、悲劇的な事件に遭遇、実の娘との関係を見つめ直すことになる、というヒューマン・ドラマ。ザジでは『家の鍵』(’04)、『最初の人間』(’11)を配給しているジャンニ・アメリオ監督の作品。何の予備知識もなく、自分が今いるナポリが舞台となっているのも知らずに、「アメリオ監督作なら、チェックしとかなきゃ」と軽い気持ちで試写しました。

原題は「LA TENEREZZA」。“やさしさ”というような意味なので、温かい家族ドラマなのかな?などと油断していたら、ズドンッとやられました。アメリオで、単に温かい家族ドラマなんて、冷静に考えたら有り得るはずはありません。深く感動したので、続けて別の映画を観る気分ではなくなり、「とりあえずカフェにでも入って一休みしよう」、と初めてのナポリの街を適当に歩いて店を探しました。ミラノの大聖堂ドゥオモの脇にある、有名なギャラリアの縮小版のようなアーケードを見つけ、外にテーブルを出しているカフェに席を取りました。

「いい映画だったけど、配給するのは簡単じゃないよなぁ」、「ジャンニ・アメリオ監督、日本じゃ未だに知名度低いしなぁ」などとネガティブな気持ちになりつつ、ぼんやり道行く人を眺めていて、ん?ここ見覚えがある…。あれ?デ・ジャヴ?いえ、そこはたった今観てきたばかりの映画の、前半の転機となる印象的なシーンに登場するカフェだったのです。あぁ、呼ばれている…。作品に呼ばれている。大いなる思い込みとは分かりつつも、オファーすることを決めた瞬間でした。

『ナポリの隣人』sub6

※『ナポリの隣人』、問題のシーン。カフェだとは分かりにくいですが、まさにこのシーンです。右下にかろうじてテーブルと椅子が見えます。ちなみに今回のトップ画像は、ナポリの風景です。

こんな作品との運命的な出会いも、オンライン・スクリーニングでは起こり得ませんよね。次に海外の映画祭やマーケットに出かけられるのは、いつのことになるのでしょうか…。

texte de daisuke SHIMURA



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