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Histoire De Zazie Films 連載⑯ イタリアは呼んでいる、あるいは、最後はなぜかうまくいくイタリア人。

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社名もフランス映画由来だし、草創期にゴダールを連打したイメージからか、扱っている作品はフランス映画が中心だと思っている方も多いザジフィルムズなのですが、実は海外との取引でここ十数年、一番多いのはイタリアの会社。かつてフェリーニ映画祭を開催した時は、その時点で10作品以上のフェリーニ監督作を扱っていたし(あの頃は、うちも景気が良かった。泣)、ベルトルッチ、ヴィスコンティ、エルマンノ・オルミ監督のクラシック作品も手掛けてきました。今回の“ザジフィルムズ見放題パック”30本の中にもヴィスコンティ『夏の嵐』、『家族の肖像』、フェリーニ『ボイス・オブ・ムーン』、オルミ『聖なる酔っぱらいの伝説』、パゾリーニ『豚小屋』、パゾリーニを含むオムニバスの『ロゴパグ』が入っています。DVD化の仕事では、アントニオーニ、タビアーニ兄弟、トルナトーレ、アルジェント作品にも携わっています。

近年は新作の配給もイタリア映画が多め。ジャンニ・アメリオ監督作は、『家の鍵』で初めて配給して以来、見放題パックにも入っている『最初の人間』(フランス語映画)、昨年の『ナポリの隣人』の3作品、フェルザン・オズペテク監督の『カプチーノはお熱いうちに』、“Help!The映画配給会社”プロジェクトに応援コメントを寄せてくれたガブリエーレ・マイネッティ監督の『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』、そしてコロナがなければ今頃公開されていたはずの『わたしはダフネ』もイタリア映画です(監督と主演のカロリーナさんにぜひ来日してもらいたいので、来年の夏まで公開を延期しました。来年春にはコロナがすっかり収まっていることを祈ります…)。

なぜイタリア映画が多いのか?社内で根強くささやかれている説は、「イタリアン・スクリーニングの招待枠を確保するため」。はて?イタリアン・スクリーニングとは何でしょう?
私も業界にいながら以前は全く知らなかったのですが、海外におけるイタリア映画の振興を目指すイタリアの業界団体が、各国のバイヤーを一堂に集めて、イタリア映画の新作を3日間集中的に観せる、いわゆるショウケースで、イタリアのいろいろな都市に開催地を変えて行われています。特筆すべきは、このスクリーニング、航空運賃、ホテル代は主催者持ち。滞在中は親交を兼ねて朝昼はホテルのブッフェ、夜はレストランの一角を貸し切っての食事会なので、基本食費も主催者持ち、という全く経費のかからない出張なのです。招待する会社の選定はもちろん主催者側にゆだねられていますが、日頃イタリアと取引の多い会社は、当然セールス会社が推薦してくれて有利になる、という噂です…。

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いや、タダでイタリアに行きたいから、イタリア映画を買っている、なんて人聞きの悪いことを言わないでください!たまたまです!たまたま!ザジは毎年必ず招待枠に入っているワケではありません。開催時期の6月下旬は、カンヌが終わった翌月なので、日本の他の会社の担当者はお忙しい方が多く、招待を辞退されて、思いがけずうちに順番がまわってきたりするんです。で、結果的にここ数年、バーリ、ナポリ、レッチェと南イタリアの街で行われていたイタリアン・スクリーニングに参加していたのです。たまたまです!(しつこい)

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もうひとつ、イタリア映画の買付けが増えた理由はイタリアのセールス会社の担当者の方々のキャラクターによるものでしょうか?もちろん日本人ひとりひとりが違うように、“イタリア人”をひと括りに出来るワケはないのですが、総じて皆ラフで話しやすい。一般的にイメージされるように、明るくて親しみやすい人が多い気がします。一方でいい加減なところもいっぱいあって、油断するとトラブルの種になるのですが、そこは開けっぴろげだったり、トラブルの原因があちらにある場合は素直に否を認めたりしてくれるので、尾を引きにくい。題名が前から気になっていて、まだ読んでいないのですが、宮嶋勲さんというワイン・ジャーナリスの方が書いた「最後はなぜかうまくいくイタリア人」(日経ビジネス人文庫)という本のタイトル通りだと思っています。その本の帯に曰く…

「嫌いなことはやらない。
商談よりも食事が大事。
空気は読んだことがない。
それでも、結果が出るのはなぜなのか?」

極論、暴論かもしれませんが、当たってる気もします…。

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もしかして、やっぱりこんなふうにコミュニケーションを取れているのも、イタリアン・スクリーニングに続けて参加していたおかげなのでしょうか?最後の晩は毎年恒例で食事の後にDJが入ってダンスタイムになるのですが、私が踊る姿を見たことがあるのは、イタリアのセールス会社の人たちと、同席した同業他社のバイヤーのみ。弱みを握られているとも言えます(笑)。

今年は当然新型コロナウィルスの影響で、イタリアン・スクリーニングは中止。いや、オンラインでやるのかな?オンラインで招待されても全然嬉しくないけどな…、ってほらやっぱりタダでイタリア行きたいんじゃん(笑)。

※画像は上から順に、来年7月岩波ホールで公開予定の『わたしはダフネ』。他の3点は、2018年、2019年のイタリアン・スクリーニングの開催地、ナポリでの写真です。


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