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Histoire De Zazie Films 連載⑮    欲望の法則、あるいは、本編観たくなる予告作りを目指して。

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前回の記事はこちら☞ 連載⑭マラソンマン
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今回は予告編作りのお話です。
普段映画館で、本編の上映前に何気なく見ている予告編ですが、我々、独立系配給会社が配給する、いわゆるミニシアター系作品に関しては、日本版の予告編が完成して上映されるまでに、配給宣伝スタッフ、予告編のディレクター、そしてメインで上映してくださる劇場の担当者の、何度にも渡る話し合いが行われています。編集は一発OK、ということはほぼ無く、修正に修正を重ねて(時に10度、15度と修正して)ようやく完成するのが普通。これが楽しくて大変な仕事です。

予告編で一番大事なのは、至極シンプルですが観た人に「本編が観たい!」という気持ちになってもらうことです。何の予備知識もなく、初めてその作品の予告を観た人が、「やだ、何これ!面白そう!」と、2分前後の短い映像を観るうちに、前のめりになってくれるのがベスト。帰りがけに前売り券を買ってくれれば、それはもう大成功!ということになります。

が、これがそう簡単なことではないんですよねぇ。作るほうはその映画を当然観た上で、セールスポイントを熟考して作っているつもりですが、予告を初めて観るお客さんは本編を観ていないので、内容を匂わせたり、暗示したりするつもりで入れたシーンやセリフを、瞬時にキャッチして理解出来るかどうか、その匙加減がホントに微妙なのです。作り込んでいるうちに独りよがりになって、「で、どんな映画なの?」という分かりにくいものに仕上がる危険性をはらんでいます。

逆に、分かり易く分かり易く、と作り過ぎて、既視感バリバリ、「あぁ、ああいう映画ね」と興味を引いてもらえなかったり、時には本編見た人に「予告はネタバレだったんじゃん!」と、後からSNSでつぶやかれちゃう、みたいなこともあります(実際、私はある映画でそれをやらかしたことがあります(何の映画かは秘密です。笑)。

予告制作の困難さばかりをツラツラと書いてしまいましたが、私の場合は、もう40本以上一緒に作っていて、絶大な信頼を寄せている予告編ディレクター、常に客観的に見て、的確なアドバイスをくださる劇場の方々の存在があるので、とても心強いです。

ザジの予告が目指しているのは?と問われれば、たぶん言えるのは「オーソドックスな予告」ということになると思います。奇をてらわず、伝えることは伝えて、内緒にしとくことは内緒にしとく(学びました。笑)。
一度は「おっ!こんな斬新な予告があるのか!」というのをやってみたい気はするのですが、なかなか勇気が出ません。ずいぶん前に『ある日、突然。』というアルゼンチンのモノクロのガーリームービーを配給した時に、ランジェリーショップに勤めるヒロインがつまんなそうにカウンターに座ってる長まわしワンショットの予告、っていうのを作りかけたことがありますが、皆に止められて世に出ることはありませんでした(笑)。

個人的に楽しいのは、予告編ナレーションのキャスティング。ナレーションを入れるかどうかは、ケースバイケース。入れるとしても、毎回著名な方を起用するワケではないのですが、「この人にやってもらえればなぁ」という具体的な方が思い浮かんだ場合は、果敢にオファーしています。

前にお話した原田知世さん(『幸せになるためのイタリア語講座』、『人生はマラソンだ!』)以外にも、少年目線のナレーションが入れたくて松田洋治さん(『ベルサイユの子』)、静かにヒロインを見守る神目線の西島秀俊さん(『題名のない子守歌』)、「小さな村」繋がりで三上博史さん(『北の果ての小さな村で』)、フランス映画社さん風の予告が一度作ってみたくて故・来宮良子さん(『四つのいのち』)。
最近では、メジャースタジオのダークヒーロー物にも負けない映画だぜ!ってことで遠藤憲一さん(『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』)、アニメ「鋼鉄ジーグ」へのオマージュで、ヒロイン卯月美和役だった名声優吉田理保子さんに『皆はこう呼んだ~』のマナーCMを担当して頂いたりしました。


そして今はまさに、秋公開の韓国映画の予告の制作に入ったところです。ディレクターに大まかな流れの希望を伝えて、文字要素も伝えて、あとは一発目はディレクターのセンスで繋いでもらって、それを見せて頂いてから、箇所箇所を詰めて行く、という作業。「やだ、何!面白そう!」が出来ますように…。

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次の連載記事はこちら☞ 連載⑯イタリアは呼んでいる
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