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末摘花の唐衣

『香子ー紫式部物語』第3巻、
引き続き読んでいます。

玉鬘の裳着の儀に祝いの品を贈った末摘花。
お祝いに相応しいとは言い難い色や素材や古めかしさの品々を律儀にも贈って、源氏の君を呆れさせている。

添えられた歌は、

わが身こそ恨みられけれ唐衣
君が袂を馴れずと思えば

我が身が恨めしい、あなたと親しくさせていただいてはいけないと思います、という卑下の歌だという。

謙虚を通り越して卑下。
そして毎度毎度「唐衣」。
末摘花は和歌のセンスもなく、なんとも不器用で、昔気質で。

末摘花の歌に源氏の君はこう返歌する。

唐衣また唐衣唐衣 
かえすがえすも唐衣なる

あなたの歌はいつもいつも
「唐衣」なんですねと。

爆笑した。

本来なら、源氏の君の養女である玉鬘の裳着の儀式に、お祝を贈るのも憚らねばならない立場の末摘花。
だって紫の上や花散里や、カースト上位の女人が数多いるわけで。現に空蝉は立場をわきまえ、お祝を控えたというではないの。
なのに昔気質の彼女は「こういうときはお祝いをせねばならない」と思い込んで、場違いな気働きをして、愛しい源氏の君に恥をかかせ、なんなら軽く立腹もさせている。

にしても。
ひどいなー、源氏の君。
唐衣また唐衣唐衣、ってひどすぎる。

「私なんか」っていう女は私もキライ。
「そんなことないよ」って返しを欲しがる気持ちがミエミエで。
でも末摘花はそういうタイプとは違うと思う。ほんとにピュアで不器用で、振る舞い方も駆け引きも知らない。
ただただ、一途に好き、源氏の君のことが。

広い額に長い鼻、鼻の先っちょは赤く、痩せ過ぎ。ビジュアルにも恵まれない末摘花。
没落貴族で極貧やから暖房の油にも事欠いて、防寒のためにテンの毛皮のベストを着込んでいる。でもでも、貴族のプライドは持ち続け、生活のために先祖代々譲り受けた品々を売り払ったりしない。

末摘花を愛しいと、私は思う。
源氏の君もホントのところは末摘花が好きで、だから余計に歯がゆくて、からかったりいじめたりしたくなるのかな。
小学生の男の子みたい。

平安の昔から、いくつになっても男の子は男の子なのかもなー。

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