メガネ初恋 (毎週ショートショートnote参加)
夏祭りの射的で当てたメガネは、それを通して見た人の、初恋の人が視える。そんな訳で人の初恋話を聞いてまわっている。
祖父の初恋は親戚のおねえさん。
色白のふっくらしたその人に叱られたくて、わざと悪戯ばかりしていたらしい。
母の相手は日に焼けた小学生。
「野球少年だったのよ」と少女の顔でうっとりしている。
歳をとると初恋の話がしたくなるようだ。
甥っ子を抱いた兄夫婦が顔を出した。
義姉の横には金髪碧眼の美少年。そういえば義姉さん帰国子女だったな。
兄は・・まあいいか。
産まれたばかりの初孫に夢中な母に邪険にされたので、幼馴染のマコの家に遊びにいく。
「初恋はケーキ屋さん、ケーキ好きだったからー」
ゆるく笑って、それから少し目を伏せたマコの横に学生服を着た兄の姿がある。
うん、知ってたよ。
「私は歯医者の若先生、やっぱり白衣最強ですよ」
マコの肩越しに見える壁掛け鏡には、おどけて笑う私とまだあどけないマコが視えた。
お互いずっと、変わらないね。
(410字)
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