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数年ぶりの読書で「十角館の殺人」を読んだらテンションがおかしくなった

この投稿がしたくてわざわざnoteに登録した。

当方旧Twitter(意地でもXとは言わない)に生息するアラサー会社員。読書は2年ぶり。
たまたまTwitterの読書屋ひろたつさんの「#絶対に読んどけっていうミステリー小説」ランキングを見た時に、第一位に入っていたのが『十角館の殺人』だった。

第一位の作品だったから気になって読んだのか?といえばそうではなく、第二位が『そして誰もいなくなった』だったというのがより重要なことであった。

『そして誰もいなくなった』(以下『そし誰』)はアガサ・クリスティの代表作のひとつ。読んだことはなくとも名前を耳にしたことのある人は多いはず。
私にとって『そし誰』は小学校高学年の時からのオールタイムベスト小説で、読了時は鳥肌が身体を駆け巡った。「とんでもない本を読んでしまった」と、母にテンション高く報告したことをいまだに覚えている。
メディア展開も定期的にあり、日本でも数年前にドラマ化していた記憶がある(個人的にはBBC制作の全3回のドラマ版が好きでした)

自分にとっても思い出深く、世間にも名の知れた作品。ひろたつさんのランキング詳細を見るまでは、『そし誰』が一位なのでは?と思ってページを開いた。

過去もずっと一位だったのは『十角館の殺人』⁇
まあ今回もそうとは限らないよね?
……また一位かい!!
いやそんなにすごいの??
マジで???
『そし誰』以上の衝撃なの????

と、綾辻行人ファンに真正面からぶん殴られそうなくらいの上から目線を発動した。

ここまでくると、どうしても気になる。

しかし冒頭に書いた通り私は数年読書をしていなかったアラサー。昔のような集中力、思考力はない。
そんな自分が、絶対複雑な(しかも400ページはある)ミステリーを今更読んで楽しめるの……?
と不安しかなかった。

が、ある日偶然にも条件が揃った
・まとまった時間
(読むなら一気に読まないと投げ出す)
・読書に丁度良い環境
(適度に緊張し、かつリラックスできる場所)
・活字を読みたいという意欲
(結局ここが1番大事)

形から入るタイプなので、土曜の昼下がりに東京日本橋の丸善に行き本を購入、そのまま上階にある丸善のカフェへとなだれこんだ。

丸善のカフェといえば檸檬。
高校時代に『檸檬』で「カーン」に衝撃を受けた身なので、なんとなく檸檬に関するものを食べたくなる

そこは檸檬じゃないのかよ、といわれそうな檸檬シフォン
おいしい

糖分も頭に入り、読書をスタート。

※以降、綾辻行人『十角館の殺人』のネタバレとアガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』のネタバレにさりげなく触れながらひたすら感想を垂れ流します。
この駄文をここまで読まれて、上記未読の方がいらっしゃったら回れ右してください。マジでこんな感想文で一生ものの体験を棒に振って欲しくないので……







表紙をめくって早速課題。クリスティ作品だとよくある、表紙内側の人物紹介がない。

詰んだ。

今回、なるべく事件の真相に自力で辿り着きたいという思いがあった。
同じ本を何度も読むことができるが、真実に辿り着く喜びを得られるのは最初だけ。なるべくベストなコンディションで結末に向かいたい。

ミステリで重要になりやすいのは登場人物の整理。
日本の作品はまだいいが、海外作品は本当に登場人物がややこしく、時間をかけて読むと毎回記憶を呼び戻すところから始まる
謎を解きたいのなら作中の人間関係や行動、発言はかなり気をつけて読まないといけない。

とりあえず内容を読み進め、本を買った時のレシートに簡単に登場人物を書いた(描いた)ものの想像力と絵心が乏しいため残念な結果になった

レシート裏の悲劇


一日目


いきなりお互いをクセ強ニックネームで呼び始めたので、あっこれはよく人が死ぬタイプの話だ……となんとなく察した。『金田一少年の事件簿』を読んで育ったので、やってんなって感じの学生を見ると基本最悪の結末を予想してしまう。漁師さんちょっと引いてない?大丈夫??

以下は事件が始まるまででの7人の印象

【エラリイ】
・地頭はいいしコミュ力もありそうだし描写されるアイテムを見てもお洒落。ただ本人の意図せぬ感じでいけすかないやつって周りからやっかまれていそう
・絶対終盤まで生き残る。そうじゃなかったらこいつは判事
・普通の大学生推理モノならあんたが主人公や

【カー】
・見るからにエラリイに嫉妬ニキ。容姿の描写、発言、どれをとっても残念な感じが目立つ。周囲からの好感度もだが作者もこいつのこと嫌いじゃないの??
・絶対すぐ死ぬ、殺人鬼がいるかもしれないってのにこんなところに全員でいられるか!俺は部屋に帰らせてもらうぜ!って言いそう

【ルルウ】
・後輩キャラ。フォルムが弱々しいコナンくんのイメージ
・なんか大した活躍もなく中盤で消えそう(ごめんね)

【ポウ】
・好き、狂人どもの中ではまだまともそう
・医者の卵ってことは後々遺体の情報操ったりしないよね?(この疑いが最後まで足を引っ張る。だいたいアガサ・クリスティが偉大すぎるせい)

【アガサ】
・最初のソバージュ描写で美人確定!ってなった(マジで美人設定)
・恋愛感情なさそうなサークルメンバーとのジメジメした無人島旅行なのに着ているものがいちいちお洒落、今から40年近く前の話なのに今でもお洒落だろって思えるからすごい
・性格も悪くないので神様は不平等だな
・『そし誰』のヴェラポジ?気も強そうだし

【オルツィ】
・中々描写が出てこないのでいきなり死ぬタイプかな?って思ったらまあまあしっかり描写された。絶対黒髪のぺったりおかっぱだろって見ていたらショートカットだった
・おとなしくて自分に自信がないけど、別に卑下するほどの感じじゃなくて逆に周りをイラつかせる部分がありそう

【ヴァン】
・あまり性格に特徴がない、見た目の描写もそこまでなくて1人だけ似顔絵が雑
・伯父がリゾート地を…って舞台用意できるポジションのやつ大体最初に死ぬか犯人説あるんだが、なんか風邪引いてるし薬飲まされて静かに退場しそう


冒頭の文面的に犯人が女性の可能性は低いなと思っていたので、初日時点だと怪しいやつランキングは

1位:ポウ
2位:エラリイ
3位:ヴァン

って感じだった。が、島組以外に本土組のストーリーがあると気づき状況は変わる(章立ての島と本土ってそういう仕組みね)


【江南】
・いきなり裏主人公みたいなのがきた
・見た感じサークルも辞めているから死なないし、犯人ポジではなさそう

江南(ドイル・またの名をコナンくん)の話によると、どうやら「中村千織」なる人物の死が関係しているらしい。
新年会の急性アルコール中毒、あの島のメンバーがどうせ悪い展開なんだろうけどそんな後輩女子にイッキとかさせる陽キャサークルには見えない、絶対カーあたりが主犯だろ(偏見)

普通ならわりとよくある苗字だけど、今回は島ででてきた別の中村さんがいるからまあ関係者か何かというのは察しがつくしそのへんは割と早々に真実に辿り着く。

本土編には他にも4人ほど出てくる

【守須】
・千織の件には関わっていない(コナンと帰ったから)
・絵を描いている、学部不明だけどコナンくんとタメ

【東】
・島の男子メンバーの誰か、実家住みらしい
・そういや島メンバーのフルネームはおろか苗字すら出てこない。これ何か意味あるんか?(※大あり)

【中村紅次郎】
・中村青司の弟だが、なんか怪しい。ワープロ持っているし手紙も作れる
じつは青司と入れ替わっているとかないよね?と疑うが、流石に周りは騙せんよなあ

【島田】
・探偵風のカマキリみたいなおじさん
・怪しいけど、犯人ではない?けど怪しい

こんな感じで一日目が終わった。
そし誰』ならもう死人が出ているが意外と平和である


二日目

オルツィの話からスタート。
あっこの子は犯人じゃない、死ぬ。と察する。
千織と仲良かったみたいだが……

そしてきました、見立て殺人の暗示、役割プレートの登場。
(手作り感あるのがちょっと微笑ましいなと思うなどした)

見立て殺人って今まで数多の作品に出てきていて、まあ大体その通りに事件は起きちゃうんですよね……小説は基本完遂されるイメージ
(なお漫画『金田一少年の事件簿』は2〜3人死人がでないとはじめちゃんが本気を出さないから大体最後の1人だけ助かる)

まあまあギスギスした空気になる島の面々だが、後々読み返すとまあカーの言っていることは正しいのよな。とはいえこの段階ではまだどうにも判断し難いというのが正直なところ。

一方本土でもちょっと気になる話
中村青司の事件で行方不明になった庭師さんのことはあまり気にしていなかったが、その後紅次郎を訪ねたときに家にいない?という描写が気になる。

★残念推理ポイント
絶対ミスリードなんだけど、紅次郎が怪しく見えて仕方がない


三日目

ついに始まりました、事件です

最初の犠牲者はオルツィ。ポウが彼女の死を確認し、さらに左手首がないことがわかる。
絞殺、手首……半年前の事件かな???

★残念推理ポイント
ポウが本当は切り取られていない手首をわざと切り落とされた、とか言ってない?誰にも遺体に近づかせないようにしているし……実はオルツィは生きていて……という完全にあの作品の脳が働く

次の場面ではカーの独白、次の退場者は君だ!(確信)

そしてエラリイも中村青司生存説を唱え始めた
この時点で出てくる説=真実にはならないと思うぞとメタなことを思う。

ルルウが気になることを言っている。ルビつきの文章は絶対に何かある。
遡ってみたものの、この時点ではわからず。

そして初日にもあったトランプ。このくだりなんか意味あるんか?

が、そんな中、アガサの入れたコーヒーでカーが絶命してしまう。第二の被害者が出てしまった

殺意のスピード感上がったな

カーを看取ったのちすぐさま状況確認に移るが、誰の犯行かを決め打つ証拠は出なかった

しかし、誰もこの時点で動機について考えないの?というのが疑問でしかない。
大体一般的なミステリだと、各人の家に届けられた怪文書の話がこの辺で出てくるんだけど、タイミング的に島のメンバーは見ていない、ということになる。
(この時点でそこをもう少し考えておいたほうがよかった。犯人にしてみれば動機を知られる方が都合が悪い、あるいは動機について彼らが思い至ることに意味なんてないのだと)


話は本土に
ここで新しい収穫がひとつあり、初日にミス研の面々を送り届けた人から、十角館のある角島と本土を行き来することは比較的容易ということがわかる話を聞けた。

★残念推理ポイント
紅次郎なら島を行き来できるのでは?

もう完全に紅次郎犯人説が私の中でできはじめている。おちつけ。


四日目

島はルルウの場面から始まる。なんか重要なことにつながる気がするんだけど……
体調不良者が多い。かなりの極限状態だから仕方ないよね。

5人で半年前の事件で消失した青屋敷へ。
そこで存在が怪しまれていた地下室の存在に気づく、が、罠によってエラリイが負傷する

★残念推理ポイント
すでに死人が出ている状態で怪我で済むやつ、名探偵コナンの世界ではほぼ自作自演

ここで発見された空間の状態から、エラリイは中村青司生存=犯人説をさらに強めていく

持ち物検査案も出たが、やらずに終わった

夕食の準備にてアガサがヒスる。バトロワ展開…?と見守っていたら大丈夫だった。

睡眠薬をわたすくだり、ポウが推せてしまうから困る。なんでこの人がいて千織ちゃんは死んでしまったん???新年会のシーンは後々描写あるのかな

そしてまたしてもルルウが何かに気づこうとしている。頑張ってくれ。
が、めぼしい気づきはなく四日目は終わる。
犠牲者なし!


話は本土に。
コナンくんとカマキリ島田さんの旅が続く。
この日は疑惑の人物紅次郎に話を聞く日だった。

島田さんメンタル強者すぎる。大学時代からの付き合いとはいえ、センシティブな話題をゴリゴリに紅次郎に聞いていく。ゲームバランスとして大丈夫?お助けキャラにしては強くない??

★残念推理ポイント
紅次郎はやはり2日目夜〜にアリバイがなかった。島行けるじゃん

なお紅次郎の言うことを信じられれば、
・庭師さん:行方不明
・中村青司:半年前に死亡
この状態が正しいとなる。
庭師さんには特筆すべきバックグラウンドもなく、千織の本当の父が紅次郎なら、青司にもミス研メンバーを狙う理由がない。どちらが生きていたとしても。

が、紅次郎怪しいモードの私にはまったく頭に入らない話だった〈完〉

残念ながらまだ続く。


五日目

またもや島はルルウの場面から始まる。
ついに千織ちゃんに気づいた、遅えよ。

まてまて、何かを思い出したはいいが1人で崖に行くのは死フラだぞ。火サスとか見たことないのかしら

というところで、アガサに視点チェンジ。ルルウ、終わったな……

いつも美しく、凛々しくありたいと思う彼女は昨日の醜態を恥じていた。偉いなあ。おばさんあなたの歳くらいの頃なんて忘れたい醜態だらけだよ。

アガサが「戦う顔」をしたところでさらに場面はヴァンへ。こいついつも体調悪いな。

アガサの場面から時間経過があり、彼女は無惨な姿で発見された(あっ、口紅……)
ヴァンはポウを呼ぶ、ポウっていつも寝覚め良いイメージあるわ

★残念推理ポイント
ポウ、あんたみんなに薬盛ってる???

さてここで3人はルルウの部屋の前にある「3人目の被害者」カードを発見。アガサより先に犠牲になっていたことがわかる。

慌ててルルウ捜索に向かうと、青屋敷近くて倒れるルルウが……

この時、エラリイは周囲の足跡に疑問。が、ルルウを運ぶため一度その場を離れました。やはりめざとい

一度十角館に戻った3人は改めて事件を整理する
カー事件のトリックに使われたコーヒーカップの謎が解かれるなど、明らかになる部分があるものの、明確な犯人を示すものはない。
エラリイとヴァンは、ポウが怪しいと言い、動機について触れるが……

このあたりで、エラリイはほぼ犯人ではないな、と感じる。動機は千織絡みと考えてもバックボーンが薄い。

★残念推理ポイント
私の中でも状況的に島メンバーだとポウが怪しいと感じられていて、本土の紅次郎と繋がっている可能性は?とか考え始めていた。

が、ここで島を雨が襲う、先程の気づきを思い出したエラリイたちは慌ててルルウ殺害現場に戻る。
間一髪、消えかけの足跡を確認し、不審な部分について検討する。このあたりは、やっぱり島を行き来する「誰か」はいるっぽいとはわかる。

ここで、エラリイはようやく千織と青司の関係に言及する。気づいていたんだな。
復讐心を持たれている自覚が彼にはあり、かつ「そんなことで」とか「自分たちは悪くない」とならないあたりは潔い。やっぱりあんた犯人側じゃないわ。

しかしここで無情にもタバコに仕込まれた毒によりポウが倒れる。

★残念推理ポイント
ポウがいなくなった…(ここで思考が止まる)

さて、この後は残されたエラリイとヴァンは十角館の隠された秘密を解き明かす
だがその末に待っていたのは、謎の腐乱死体と、十角館の炎上……

六日目以降

ここからは事件の真相が明らかになる。
完全に謎解きを放棄した私はただただ事の顛末を追いかけることしかできなかった。



で、「例の一文」を目にした。


叫んだ、読んだ瞬間全てが違って見えた。
なんだあれ。天才か(それはそう)


以降は反省です。ちゃんと読めよ、という。

なお真実に辿り着くまでの間、当然レシート裏ではメモが足りなかったので再度本を購入した丸善に行きメモ帳を買いました、ありがとう丸善。

★反省点1:違和感を疑え
・ある人物の描写や思考開示が少ない(と、感じる)
・角島までの移動手段
・セオリー通りじゃないならそいつが怪しい

★反省点2:集めた情報を活かせ
・全員のタバコの銘柄を最後まで追い続けろ
・身体描写はしつこく気にしろ
・名前、めちゃくちゃ意味がある

★反省点3:そもそももっとちゃんと読め
・関係なさそうな動作にも意味がある(気づくには医学的知識もいるが…)
・左手!!!

★反省点4:そし誰など既知の作品を引きずりすぎ
・変に当てはめて読んでいる部分が足を引っ張っている。

★惜しかった点
・タバコの銘柄を気にしていた
・島を行き来できる、という認識はあったし、アリバイの考え方もある程度正しかった
・ミス研メンバーの名前についての疑問をもっていた

最後に最悪な形式でミス研メンバーの本名を知ることができたが、イメージ通り!って感じの名前ですごく良かったです。この名前の出し方だけはなんとなく予想できていた。

オチは因果応報感もあって個人的にはよかったです。正直千織の死の詳細は全く明らかになっていなくて、殺害されたメンバーにとってはとばっちりだった可能性もあるにはある。それを完全に私刑でやったのが今回の犯人なので、残されたミス研メンバーがただただ不憫。

そしてカマキリ島田さん、あなたに惑わされたよ

なんかこの先の館シリーズにも出てくるって聞いたんだけど、あなたを信じないわ……
(最後のシリーズで犯人とかだったら泣くかもしれない)


と、読了後もスッキリ感と悔しさといろんな感情がないまぜになりながら殴り書きました。ほぼ7000字ある。

実写化するって知らなかったので、そういう意味でもネタバレ踏む前に読めて良かった。
気力があったらまた他シリーズの感想を書こうかな。


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