トップメッセージ発信の落とし穴:後編
※前編はこちら
前編の内容
1 _ 重要性が増すトップメッセージ
2 _ 紙社内報の落とし穴
3 _ 素が出る動画メッセージ
4 _ 素の出る動画の好事例
じつは今回私たちが、トップメッセージについて語りだしたきっかけは、とある大手企業の新春トップメッセージ動画を見たことからでした。その動画は特に奇をてらった企画ではなく、淡々と社長がメッセージを語っていく、スタンダードなものでした。おそらく、カメラの横にインタビュアーがいて、インタビュアーの質問に社長が答えた内容を編集したと思われるものです。動画で見ると、社長の目線はカメラの横(インタビュアー)に向いているので、視聴者がPCで動画を見ると、社長と自分の目線が真正面に向き合うのではなく、少し外れます。私たちの想像ですが、インタビュアーは社長がよく知った人物。社長はリラックスした状態で話をしていました。このような画角は、目線がカメラから外れれば外れるほど、観る人にとっては客観視が可能となり、視聴者側もリラックスして観ることができます。それによって、より中身に集中しやすくなるのです。いいインタビューになるかどうかは、いい質問を用意できるか否かにかかってきます。「読者が何を知りたいと思っているか」が想像できなければ、良いインタビューになりません。ちなみにインタビュアーの質問は、動画上ではテロップで表示されるだけなので、インタビュアーの音声は入らないスタイルでした。
この動画のポイントは、こうしたスタイル「型」が成功し、トップメッセージの仕上がりが自然体で良かった、というのもありますが、視聴者側の心が動いたのは、社長メッセージの本音です。メッセージの内容は、ご自身の言葉で語っていることが、手に取るように分かりました。もちろん制作工程を知らない、視聴者側がだまされる(誰かが作った原稿を社長が、さも自分の言葉にして語っているようにした)可能性もゼロとは断言できません。しかし、私たちは、これまで1000を超えるトップメッセージを見たり、書いたり、制作をしてきたので、これは本人が腹の底から語っているか、誰かが作ったものをしゃべっているかは、九分九厘ハズレはないと自負しています。さらに、ある一つのシーンを見て、これは間違いないと確信を得たくだりがありました。それは、未来の自社の業界に対する推測です。一般的なトップメッセージでは、社長はカッコよく「未来はコレコレ…」と語りがちですが、この動画の社長は、質問に対してしばらく間を置いて「私も分からないよ」とおっしゃったのです。
前編のカッコよく見せる、たてまつる企業の社内報であれば、このシーンはカットになっていたかもしれません。それまで流ちょうに話していた社長が、間をおいて「分からない」と言うのですから。しかし、そういったシーンも入れながら、社長は社員に自身の思いを実直に、上から目線ではなく、語っていく。じつに良いトップメッセージだなぁと心に響きました。企画のアクセス数を見ると、他の企画に比べダントツです。この会社の社員さんがいかにトップメッセージに関心をもち期待をしているかも、窺い知ることができました。ちなみに一般的なWeb社内報のトップメッセージは、他のコンテンツに比べアクセス数が、伸びないのは圧倒的に多いものです。
5 _ アクセスが伸びないWeb社内報の特徴と、挽回方法
Web社内報で、アクセスが伸びないトップメッセージの特徴を挙げておきます。
サムネイルが毎回一緒
タイトル、画像、本文も変わり映えナシ
Webは、速報性を重視するあまり、「とりあえず出す」というスタンスになりがちです。結局、トップメッセージという重要コンテンツであっても、そればかりに手間暇はかけられない…というのが、担当者の本音で、登場するトップ自身も、そこまで口出しをしない、こだわらない。という実態が少なくないのでしょう。つまり、社長自身も本気で社内報を通じて自身のメッセージを伝えようとしておらず、編集担当者も、何となく義務感で作成している(ように見える)記事は山のようにあります。
もちろん「機械的作業」「義務感」「本気度」というワードに焦点を当てれば、Webというツールに限ったことでないかもしれませんが、やはり「速さ」や「Webの手軽さ」という側面から見ても、紙や動画に比べ顕著に傾向として出ているようです。
…と、ネガティブな話が続きましたが、一方で、Web社内報の特徴をとらえ、簡単にでき、かつ、多くの企業がなかなかできていないことを紹介しておきます。
それは、「情報の更新」です。トップメッセージの中で、「~~に取り組んでいきましょう」というメッセージを出したあと、その「~~」は、どのように進捗しているのか? そこを追わず、言いっぱなしになっているケースが非常に多いのです。もちろん、紙や動画でも更新情報は出せますが、Webであれば、極端な話、トップメッセージが出た数日後、1週間後、1カ月後など、その「~~」を、各現場ではどのように取り組んでいるのか?「~~」をする際の、ネックはなんなのか? など「~~をやっていこう」のその先は、随時更新できるハズですが、そういった追い記事が、あまりにも少ないのが現状です。このテコ入れをするだけでも、もっとトップメッセージは存在感を増し、トップメッセージの本気度が読者に伝わるのではないでしょうか。
6 _ 「プロンプター問題」の解決法
再び動画社内報のプロンプター問題にもう少し触れておきたいと思います。前編のプロンプター棒読み社長の話では、結局社長の覚悟ができていないと申し上げました。確かにその通りなのですが、もし自社の社長がプロンプターを使いたい、でも上手く使えずに棒読みになってしまう…という場合の対処法はないのでしょうか。これは、原稿作成に問題があることが最も多いのです。原稿はすでに書き文字で作られることが多いので、そのまま読めば「読んでる感」が満載になります。書き原稿を読み原稿に直すとかなり違います。
ここで読み原稿づくりのポイントを挙げておきます。
話し言葉で作る
同音意義語は、言い換える
ブロックごとにテーマをしっかり分ける
特に3の、ブロックごとにテーマをしっかり分けておくと、カット割りがより効果的になり、カット割での強調ポイントなど、リズムをつけることができます。
そして、プロンプターを使うならば、プロンプター練習も欠かせません。これはかなり練習をしないと、目線が動いたり、自分の間合いで語る調になりません。操作をする人との呼吸を合わせる、スピードコントロールも大事です。
じつは、なぜプロが流ちょうに話せるかというと、一つにはプロンプターの種類も違います。おそらく大半の企業では、横書き縦スクロールのプロンプターを使用していることでしょう。一方プロ用は縦書きで、その時点でしゃべるべき原稿を中央に表示できる。ところがPCベースの素人用のものは、もともとが英語版のため横書きで、目線が横に大きく動いてしまうのです。
繰り返しになりますが、トップメッセージの動画で最も大切なポイントは、トップに、より自然に自分の言葉として思いを語ってもらうことです。プロンプターは、その演出を助ける一つの道具に過ぎません。撮影環境によっても大きく変わることもありますが、カメラ目線、少し外した目線、横向きの顔により、同じメッセージを語っていても、視聴者側が受け取る印象は変わってきます。これに加えてカメラの位置。インタビュー対象者と同じ目線の目高(めだか)、下から煽り、上からアップ、構図とサイズ…。アングルによる印象の違いがあり、それらを組み合わせて演出とします。
このあたりの詳しい話は、動画のプロに学びましょう。ざわざわでは、またnoteで共有していきます。今後にご期待ください。
7 _ ツール別のまとめ
ここまでのツール別トップメッセージのポイントを列挙すると
紙社内報で「読まれない」最たる理由は、代筆原稿。たとえ本人の執筆でも、トップの世界観の押し付けはNG。リードやビジュアルには、編集者の本気度が表れる。
動画で最も大切なことは、より自然にトップ自身の言葉として思いを語ってもらうこと。トップがリラックスして語り、視聴者もリラックスして観れることが理想。
動画でプロンプターを使う場合は、読み原稿に作り直すこと。プロンプター練習も必要。
Webの読まれない原因は、速報性にとらわれ、サムネイルから本文まで、変わり映えのない機械的な記事作成。「トップメッセージのその後」を追いかければ、Webの効果が発揮できる。
私たち“ざわざわ”では、トップメッセージについてまだまだ語り続けています。みなさんのご意見もお聞かせいただけると嬉しいです。
まとめ:古川由美
この記事について
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