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ベルリンで「主戦場」を韓国人たちと見て、監督と話して考えたこと。

日本でも話題になった、慰安婦問題を取り扱った日系アメリカ人監督ミキ・デザキ氏による「主戦場」をベルリンで見てきた。

現在ミキ氏はヨーロッパで上映ツアーを行っており、その一環としてベルリンでも2日間に渡って上映会が行われたのだ。監督本人も同席し、上映後にはQ&Aもあり監督と直接話をすることもできた。

1日目は日本語・英語字幕、2日目は韓国語・英語字幕での上映(私は2日目に行った)だったが、両日ともに会場は満員、立ち見や入場制限もかかるほどだった。私が行った2日目は、韓国人のお客さんも多かったと思う。
会場は日本人2割、韓国人3割、ドイツ人その他5割というくらいだった。

<前提>私は東京で育って、ほぼ30年東京でごく普通に生きてきた。慰安婦問題も人並みにニュースやネットなどで知っている程度で、特に強い関心があるわけではない。この映画も友達に教えてもらわなければわざわざ見に行かなかったと思う。韓国人の友達も普通にいるし、特に韓国に対してヘイト感情があるわけではない。

映画を通してまず感じたこと。

・予想より中立的な映画だった。
日本のニュースなどでこの映画が問題になっている、上映禁止にもなったという事は知っていたので、もっと過激な目線での映画(日本にとって都合の悪い)かと思ったが、思った以上に監督は中立性を保っている印象を受けた。(最後のシーンなどは少し韓国寄りかな、とも思ったけれども)

・自分の無知さに改めて気づいた。
安倍さんが右寄り、憲法を変えようとしていることは知っていたが、映画終盤に出てくる人物(この映画で初めて知った)、そして日本会議など右翼団体がいかに今の日本の政治に影響力を持っているか、そういうことはまるで知らなかったのですごく関心が湧いた。

・日本のメディアの公平性、透明性に改めて疑問を持った。
映画でも紹介されていたが、日本の報道の自由度ランキングは世界でもどんどん下がっていっている。(2010年には11位だったが、2019年は67位)
確かに私も普段yahooニュース、Twitterなどで日本の情報にアクセスしているが、それだけではリーチできない情報もあるのだということを知った。それだけこの映画から、私の知らなかった事実を学ぶことができたということだ。

・自分は中立な目線を持っていると思っていたが、自分はやはり日本人としての目線でこの問題を見ていたんだな、と感じた。
会場には実際の慰安婦像(レプリカ?)が置いてあった。映画の最後に司会の女性が、「よければ皆さん是非実際の慰安婦像と写真も撮れますのでどうぞ!」というアナウンスをした。普段私はミーハーなので映画に出てきたモノとは写真を撮りたいタイプなのだが、やっぱり慰安婦像に関しては、あえて一緒に写真を撮る気にはなれなかった。微かだが嫌悪感も覚えた。今まで自分はこの問題に対して偏った目線を持っていると自覚したことはないが、やはり当事者の一人(日本と韓国)として完璧な中立では居られていないという事を改めて思い知らされた。

<監督と話して>
私:日本人の反応は?
ー知ってる限り、日本人は概ね前向きに受け止めている。慰安婦問題について表面的にしか知らなかった人が大多数だと思うので、この映画がその人たちにこの問題に関して関心を向けさせるきっかけになれば。
私:韓国人の反応は?
ー韓国でも好評だった。韓国人の反応として多かったのは「日本人の中にも慰安婦の存在を肯定している人達がいるのは知らなかった」ということ。

私:慰安婦問題って、日本と韓国の多数の人はどう捉えている?
ー韓国人も正直この長年に渡る慰安婦論争に疲れている人も多い。
正直日本人は多数の人はそこまで興味ないんじゃないかな。

私:この映画を見て知らなかったことも多くて興味が湧いたから、帰って色々調べてみるよ!
ー是非!ただネットで調べる時はソースに気をつけてね。「慰安婦」で検索すると、「5分でわかる慰安婦問題」とか、そういう読みやすい記事がたくさん右翼によって書かれているから。情報の出所をきちんと精査しないと、偏った情報だけ集まっちゃう。

監督自身もアメリカ生まれながら日本人の血を引いており、沖縄に英語教師として働いていたり、僧侶になっていたりYoutuberであったりすごく面白い経歴の持ち主だった。

<会場の反応>
終わった後のQ&Aでは、主に日本、韓国以外の人からの質問が多かったように思う。彼らは純粋にこの問題について人権問題という視点から関心があるような印象を受けた。
私自身もこの映画をベルリンというある意味アウェーな環境、そして当事者同志である韓国人とも同じ空間で鑑賞することで、より第三者の反応を肌で感じることができた。私も終わった後会場の韓国人の人達と話をした訳ではないけれど、みんなで監督を囲んで質問をしている時の質問内容を聞いていると、やはり日本人以上に韓国人の方が知識があり関心のあるトピックだな、という印象を受けた。

<まとめ>
この映画を見て、もっと私もこの問題について調べてみようと思った。偏りのない目で見て本質を知りたいなと感じた。私にとっては細かい日韓で食い違う人数や言い争いより、大きな目線でこの問題が世界に注目されることで、より女性の人権という問題がフォーカスされることが一番大事だなーと感じた。(映画に出てきた、初めて国連で「slave」という言葉を使ったlawerの人の言葉『この言葉で、世界中に蔓延る同様の問題を、初めて人権問題として広く世界中に知らしめた』という言葉が印象的だった)

この映画をより多くの日本人の人達(特に、この問題に深く関心を持っていない人)に見て欲しいなー、と思った。



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