第三話:中身のない箱(小春日和の京都街歩き)
前回記事はこちらから。
街歩きコースはこちら(今回は①から③まで進みます)
前回は、河原町御池の交差点(①)を眺めながら、京都の街の歴史の重層性に感慨に浸っていたが、ようやく街歩きスタート。河原町通という京都随一の繁華で交通量の多い通りを南に下っていくのだが、早速工事中の建物が目に入る。
ここには京都ロイヤルホテル&スパというホテルが建っていた。1階のレストランは常に賑わっていた記憶がある。
このホテルは2018年に閉館ということで、コロナ禍は関係なく老朽化による建替えということのようであるが、コロナ禍で京都の観光業界が大打撃を受けていることは改めて言うまでもない。まさに、この解体中のホテルの向かいに建つガラス張りのビル(②)は、その打撃を受け倒産したFIRST CABIN が入っていた。
2階のあたりにデカデカと「FIRST CABIN」のサインを掲げていたのだが、それは撤去され、入り口も当然閉め切られている。かろうじて残るガラス面に貼られたシールのサインがこの建物がFIRST CABINであったことを物語っている。
FIRST CABINは「まるで飛行機のファーストクラスのようなコンパクトな快適さ」をウリにしたカプセル型の簡易宿所であり、リーズナブルに旅行をしたい若者やビジネス客、インバウンドに人気を博していたが、この河原町三条店は直営店だったこともあり、真っ先に閉店したようだ。
カプセルホテルでなくなっても建物は凛としてそこに建っている。箱はあるのに中身がない。街中の建物なので、ずっと借り手がつかず、取り壊しもされずに廃墟のように朽ち果てる、ということはないだろうが、今後どうしていくか決まっていない「中身のない箱」の行く末は案じるほかない。
ちなみにこのFIRST CABINの二軒北側のホテルアリエッタ京都は星野リゾートのOMOにリブランドするらしい。元の建物の形状や立地など微妙なところで明暗が分かれてくるのだと思う。
三条通りを左折し東へ直進して東山の方面へ目指す。その途中でまた「中身のない箱」に出くわした。
高瀬川沿いに建つこの建築は、安藤忠雄の名作、TIME’Sという商業施設である。こちらも全部のテナントが退去して空きビルになっており、今や入口のゲートは閉ざされている。
つい最近まで、デザインTシャツ屋さんやアボカド料理の専門店など、少し尖ったお店がいくつか入っていたが、最後にこれらのテナントが抜けていった。数年前、まだお店がいくつか入っていたころに奥の方まで覗きこんでみたが、小ぶりながら通路幅や屋根のかかり方などで奥行きを感じる不思議な建築だと思った。一方で、空きテナントの窓ガラスが割れっぱなしになっていたりと、メンテナンスされていない感じが少し不安であったが、とうとうこの時が来たか、と思った。
しかし、こんなに好立地で建築家が設計したデザイン的にも面白い建物なのになぜ、テナントが次々に抜けて行ってしまったのか?
使いづらかったのか?
老朽化が止められなかったのか?
家賃が高すぎたのか?
理由は定かではないが、こういった「中身のない箱」が街中に溢れ始めているとすると、少し怖くなってくる。
京都ですら、これなのか?
そう思ってしまうのは慢心か?
ちょうど前回の話で、「京都を誇らしく思う」と書いておきながら、その自信が揺らいでくる。次へ進もう。
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