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20080701 裏後光

 ときどき、雲の隙間から差し込む太陽の光が後光のような光の筋$${^{*1}}$$に見えることがある。これは光芒と言う。この光の筋は太陽を中心に放射状に伸びている様に見える。小学か中学の理科の授業で太陽の光は電球の光と違って、平行な光線$${^{*2}}$$であると習った。太陽は遥か遠くにあるので、そこから来る光は殆ど平行に見えると言う説明だった。しかしたまに見かけるこの空の放射状の光の筋は、太陽が雲のすぐ上にあるかの様に放射状に広がって見える。これはどのように説明されるのだろうと不思議に思っていた。

 真っ直ぐに延びる線路を思い浮かべると合点がいくと言う$${^{*3}}$$。確かに真っ直ぐな線路はどこまでも交差せず平行な筈だが、遥か向こうの地平線との交点で一点に収斂している様に見える。地平線まで長くなくてもある程度長ければ線路は先細に見える。雲の隙間から漏れた光の筋も同じで、少なくとも雲から地上までの距離であれば完全に平行と見なすことができるが、視界は放射状に広がっているので 遠くの物は小さく見え、平行線は先細って見える$${^{*4}}$$。

 まさに非ユークリッド幾何学$${^{*5}}$$の世界だ。非ユーグリット幾何学の世界は平行線が無限遠点で交わるとしても幾何学が矛盾なく成り立つ世界である。目の前に真っ直ぐ延びる線路ははるか彼方で一点に収斂していると定義しても三角形の合同などが証明できる$${^{*6}}$$のだ。平行線は目の前に延びているが、頭の後ろの方にも延びていてこちらも無限の彼方で一点に収斂している。ということは太陽が地平線近くにある時には、平行な太陽光線が太陽のある方の地平線からその反対側の地平線まで延びていて、場合に因っては太陽の反対側で放射状に広がった光の筋が見えることになる。ただし光線の進行方向は太陽側にできる光の筋と逆で、地平線の一点に向かっていることになる。

 この写真$${^{*8}}$$が太陽と反対方向の光芒である。このような太陽の反対側に現れる光の筋は見たことがない。今度、朝方か夕方に太陽の周りに光の筋が出ていたら、その反対側も注意して見る様にしよう。そうすれば裏後光が見えるかも知れない。

*1 Crepuscular Rays - Atmosphere - Digital Images of the Sky
*2 情報処理推進機構:教育用画像素材集 - 情報 - マルチメディア表現 - 高度な3D表現(こうどな3Dひょうげん)
*3 光芒 (薄明光線)・反薄明光線
*4 Crepuscular Rays
*5 20020411 ベルトラーミの頭巾
*6 1. 合同変換
*7 APOD: 2001 October 30 - Anticrepuscular Rays Over Colorado

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