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20000505 Mitsouko

 Rita Mitsouko$${^{*1}}$$というフランスのロックバンドがある。リタミツコと聞くと「利田ミツコ」という女性がやっているように勝手に思ってしまうが、男女二人のバンド名である。ただし、リタもミツコも二人の名前の中には入っていない。Les Rita Mitsoukoと複数形の定冠詞「les$${^{*2}}$$」が付いているので二人でリタミツコというのであろう。

 「ミツコ」の部分はゲラン$${^{*3}}$$の香水「Mitsouko$${^{*4}}$$」から付けたらしい。「Rita」は何なのか分からない。

 ゲランのMitsoukoは何が由来なのか。MitsoukoはNaomi$${^{*5}}$$と違って日本人女性の名前から付けられた。Mitsoukoとは日露戦争を題材$${^{*6}}$$にしたClaude Farrereの小説「La Bataille」に出てくる主人公でTogo将軍の妻である。Togo将軍とは東郷平八郎$${^{*7}}$$がモデルになっているらしい。

 香水はその容器である瓶自体も商品価値を決める要素になっている。Mitsoukoの瓶$${^{*8}}$$の形は肩の部分がアールヌーボー$${^{*9}}$$の影響を受けている。また逆ハート型の蓋は継ぎ手の小さい環を形取っている。

 しかしこの瓶の形を見るとTogo将軍$${^{*10}}$$から仁丹の将軍マーク$${^{*11}}$$を連想してしまう。もしかしてMitsoukoの夫Togo将軍、それならば日本の仁丹、ということだったかもしれない。これは極端ではあるが、瓶の肩の飾りや蓋の形はナポレオンの肖像$${^{*12}}$$を彷彿とさせる。やはり将軍ということから瓶の意匠が創り出されたのだろうか。

 調べてみるとこれは違うようだ。
 Mitsoukoの瓶とゲランの香水「L'Heure Bleue$${^{*13}}$$青い時」の瓶とは同じ形である。Mitsoukoの発表は1919年$${^{*14}}$$であるが、L'Heure Bleueは1912年$${^{*15}}$$であった。Mitsoukoの方が後なのである。しかもL'Heure Bleueとは太陽が完全に沈んだ夕暮れ時の辺り一帯が青く染まる時間を指しており、将軍とは全く関係がない。

*1 LeS RiTa MiTsOuKo
*2 フランス語奮闘記2: 性の知識、リエゾン、否定
*3 Guerlain - cosmetic company : cosmetic beauty supply, beauty tip, skin care, beauty tip, health and beauty products
*4 Mitsouko ⋅ GUERLAIN
*5 19990910 ナオミ・キャンベル
*6 日露戦争と帝国議会
*7 見学施設【海軍記念館】
*8 http://www.guerlain.fr/pics/parfums/produits/popup/mitsouko/flacon.jpg
*9 ミュージアム再発見第11頁
*10 Tsushima
*11 森下仁丹
*12 ナポレオンコレクション | 東京富士美術館
*13 http://www.guerlain.fr/pics/parfums/produits/popup/heure_bleue/flacon.jpg
*14 香りへの招待
*15 香水博物館

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