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20061024 ベイズの理論

 ベイズの理論$${^{*1}}$$というのがあるようだ。ベン図$${^{*2}}$$ではない。ベイズである。イギリスの牧師であったトーマス・ベイズ$${^{*3}}$$と言う人が考えた理論らしい。三百年ぐらい前の人$${^{*4}}$$である。

 ベイズの理論における確率とは、ある事象が将来起こるかどうかを判断する人にとっての不確からしさであって、それは過去の事象から決められる、ということだ。事象$${A}$$、事象$${B}$$があるとする。「『事象$${A}$$ならば事象$${B}$$が起こる確率$${P(B|A)}$$』と『事象$${A}$$が起こる確率$${P(A)}$$』との積」は、「『事象$${B}$$ならば事象$${A}$$が起こる確率$${P(A|B)}$$』と『事象$${B}$$が起こる確率$${P(B)}$$』との積」と等しいという定理である。数式で書くと$${P(B|A)P(A)=P(A|B)P(B)}$$となる。従って『事象Aならば事象Bが起こる確率$${P(B|A)}$$』を求めたければ『事象$${B}$$ならば事象$${A}$$が起こる確率$${P(A|B)}$$』と『事象$${B}$$が起こる確率$${P(B)}$$』との積$${P(A|B)P(B)}$$を『事象Aが起こる確率$${P(A)}$$』で割ればよい。

 何かに例えれば判りやすくなるだろう。事象$${A}$$を「一日一回、芋を食う」、事象$${B}$$を「エレベータに乗ると必ず屁をこく」とする。事象$${A}$$、$${B}$$というのは全世界の人類が各々の自由意志によって無作為に起こる事象なので、仮にそれぞれ百人に一人、千人に一人としよう。つまり事象$${A}$$の確率$${P(A)}$$は$${1/100}$$、事象$${B}$$の確率$${P(B)}$$は$${1/1000}$$である。この時点では事象$${A}$$と事象$${B}$$との因果関係は全く解らない。

 ある日、エレベータで居合わせた人が知らぬ顔をして物凄く臭い$${^{*5}}$$をしたとする。この人がエレベータに乗る前に芋を食ったのかどうかを予測する$${^{*6}}$$。

 そのためにエレベータで屁をこく人が芋を食べている確率、つまり事象$${B}$$ならば事象$${A}$$となっている確率$${P(A|B)}$$を考える。ある知人はエレベータに乗り合わせると必ず屁をこき、問い質すとエレベータを利用することが二度あると事前に一度芋を食べてた。$${P(A|B)=1/2}$$であった。この経験からベイズの理論に従って計算すると、今エレベータで居合わせた人が事前に芋を食べていた確率$${P(B|A)}$$は、$${(1/2)*(1/1000)/(1/100)=1/20}$$となる。ただしこの確率が判ったとしても何ら役に立たない。

 $${P(A|B)P(B)=P(B|A)P(A)}$$という式が表す値はベン図でいうとA∩Bの部分$${^{*7}}$$の確率となる。事象$${A}$$、$${B}$$が同時に起こりうる確率は$${P(A|B)P(B)}$$もしくは$${P(B|A)P(A)}$$で表すことができるという意味である。上の例だと二千人の内、一日一回芋を食う人は二十人$${(=2000人×1/100)}$$、エレベータで必ず屁をこく人は二人$${(=2000人×1/1000)}$$。エレベータで屁をこく人の内、芋を食べていた確率は$${P(A|B)P(B)=1/2×1/1000=1/2000}$$。従ってエレベータで屁をこく人の内、芋を食べていた人は一人$${(=2000人×1/2000)}$$となる。一方、エレベータで居合わせた人が事前に芋を食べていた確率も$${P(B|A)P(A)=1/20×1/100=1/2000}$$。従って同様に一人となる。

 ベイズの理論では事象$${A}$$、$${B}$$が因果関係$${^{*8}}$$にあっても成り立つとしている。$${A}$$ならば$${B}$$で成り立つなら、$${B}$$ならば$${A}$$でも成り立つと言う前提で確率を求めている。本来の確率計算では因果関係についての保証はないので注意が必要である。芋を食えば屁が出ることがあるが、屁が出るから芋を食ったとは必ずしも言えない。腹の調子が悪い場合もある。あそこの宝くじ屋は良く当たるからそこで買うといいと言う事例にも当てはまらない。宝くじの当たりはその宝くじの販売終了後に決まるからである。

*1 グーグル、インテル、MSが注目するベイズ理論:スペシャルレポート - CNET Japan
*2 場合の数と確率 ベン図
*3 Thomas Bayes
*4 The Reverend Thomas Bayes, F.R.S. - 1701?-1761
*5 20020101 カルマン渦
*6 An Intuitive Explanation of Bayesian Reasoning
*7 第7回 集合論――数学の「集合論」に,RDBの正体を見る:ITpro
*8 20020216 命題(2)

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