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20020101 カルマン渦

 木枯らしが吹くと電線などがビュービューと音を立てる。これはカルマン渦列$${^{*1}}$$と呼ばれる空気の渦の規則正しく電線の付近に発生するために、それが音となって聞こえるらしい。

 カルマン渦の「カルマン$${^{*2}}$$」とはカルマン渦列を詳しく研究した人の名前である。水や空気の流れの中に物があるとその後ろに渦が出来ることは昔から知られていたが、この渦の出来方を解明したのがカルマン$${^{*3}}$$だった。

 この様な渦がどうして出来る$${^{*4}}$$のか。感覚的には流れの中にある障害物の表面で水や空気が引きずられて障害物の付近とそれ以外の部分との圧力の差が発生して渦ができる$${^{*5}}$$のであろう。

 カルマン渦は一般生活ではどんな場面で利用されているのだろうか。一般生活とはいえないかも知れないが、楽器のフルートなどそれ自体に振動する弁がない楽器は歌口でカルマン渦を発生させて音を出している$${^{*6}}$$。ラッパは唇が振動して音を出すので楽器自体に振動する弁はないが、カルマン渦が発生して音が出ているのではない。

 自動車のエンジンにカルマン渦列が利用$${^{*7}}$$されている。最近の自動車はエンジンに取り込む空気の量を測ってガソリンの噴出量を調整して燃費や排気ガスの成分を制御している。この吸い込む空気の量をカルマン渦列を使って測定している。空気の通り道に棒を立て、その棒で発生するカルマン渦を超音波を使って渦の数を数える$${^{*8}}$$。渦の数と空気の流れる速さとは比例関係にあるので、それからエンジンが吸い込む空気の量を知ることが出来る。

 小さな渦ばかりではない。大きな渦も発生する。鳴門海峡の渦潮$${^{*9}}$$もカルマン渦である。アメリカのタコマ海峡橋$${^{*10}}$$も1940年に造られた最初の橋$${^{*11}}$$はカルマン渦列の発生で崩壊してしまった。橋が大きくうねる映像$${^{*12}}$$はテレビジョンの自然の驚異というような題目の特集番組などでよく見かけることがあった。宇宙から地表を見ると島で発生したカルマン渦状の雲$${^{*13}}$$が観測出来るらしい。日本の近くでも観測出来ている。この映像$${^{*14}}$$の解説では済州島$${^{*15}}$$でカルマン渦が出来ていると書かれているが、よく見ると屋久島$${^{*16}}$$でもそれらしきものが出来ている。

 小さな渦でも被害はないこともない。道を歩いている時に何となく$${^{*17}}$$をこきたくなる時もあるだろう。自分の後ろに人がいる時などは自分が放屁したことがばれやしないかとはらはらしてしまう。しかし自分は歩いているので、空気の流れで屁がかき乱されてすぐに臭わなくなるのではないかと思うかもしれない。座っていたり立ち止まっている時など、わざわざ歩きだして放屁することもあるだろう。

 ところが空気の中を動けば自分の後ろにカルマン渦が発生する。渦に屁が吸い込まれて屁の臭いがかき乱されるどころか一層濃縮されることになる。後ろの人にばれない筈が余計明確になってしまうだろう。気を付けたいものである。

*1 Gallery of Fluid Mechanics: Karman Vortex Streets
*2 Theodore von Karman and History of Aerodynamics
*3 Theodore von Kármán
*4 Karman Vortex Street
*5 Vortex Wake of a Stationary Circular Cylinder
*6 知っていると役に立つ管楽器の原理とメカニズム
*7 三菱電機技報
*8 FF page AirFlowMeter
*9 鳴門うず潮
*10 Today's Tacoma Narrows Bridge
*11 Tacoma Narrows Bridge
*12 Gallery of Fluid Mechanics: Tacoma Narrows Bridge
*13 von Karman vortex street satellite image.
*14 済州島の風下にできるカルマン渦列
*15 トラベル「みも」.....済州島(チェジュド)
*16 屋久島町役場 商工観光課 付 録 MAP付
*17 冬休み特別研究レポート 「燃屁の実験」

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