見出し画像

20030328 鰹節とミイラ

 鰹節を削りながら$${^{*1}}$$つくづく思うのは、何故こんなに硬いのだろう、ということである。鰹節が割れた所をよく見ると固い樹脂やガラスの割れた部分に良く似ている$${^{*2}}$$。元々は海で泳ぎ回っていた生き物$${^{*3}}$$が何故こんなに硬くなってしまうのだろう。

 鰹節の作り方は$${^{*4}}$$、三枚に卸して$${^{*5}}$$、煮釜で煮て、燻(いぶ)して、最後にカビを全面に生やして出来上がりである。

 乾燥させてカビを生やすと硬い鰹節$${^{*6}}$$が出来るらしい。燻して乾燥させるだけではあの様な硬い物にはならない$${^{*7}}$$というのだ。カビを生やすことによって、カビが乾燥した鰹節の内部の水分を更に吸収$${^{*8}}$$させて、硬くなるというのである。カビが増殖する過程で、カビがタンパク質分解酵素が分泌されうま味が出来、更に脂肪分解酵素の分泌で鰹の脂身が分解される$${^{*9}}$$。これら全ての作用によって硬い鰹節が出来るのであろうか。乾燥すれば元の細胞の大きさよりも小さくなるはずだから脆くなりそうだが、そうはならないということは細胞の中の水分と他の何かが入れ替わるのだろうか。考えてみると不思議である。

 これは鰹節にしか適用できないのだろうか。他の魚でも出来そうな気がするが、鰹節以外は聞いたことがない。私が聞いたことがないだけであって他の魚でも$${^{*10}}$$「$${^{*11}}$$」はあった。

 魚以外ではどうだろう。動物の肉を燻せば乾燥させることが出来る$${^{*12}}$$。そのあとにカビを生やせば鰹節みたいに硬くなりそうである。

 ミイラ$${^{*13}}$$を作る上で鰹節のように硬く乾燥させることは思いつかなかったのだろうか。エジプトではカビがあまり生えなかったのかも知れない。死者の魂がミイラに戻ってくると言う考え方なのでカビでミイラが硬くなり過ぎると駄目なのだろう。

 即身仏$${^{*14}}$$はどうだろう。即身仏の目的は「即身仏になること」のようだから長く保存できるようにした方がいい。実際には、鰹節のようにカビを生やすことはなかった。即身仏はエジプトのミイラ$${^{*15}}$$や鰹節のように大量に加工することが出来なかったので、技術が発達し得なかったのかもしれない。

 死蝋化$${^{*16}}$$という現象がある。乾燥せずに体の脂肪などが蝋燭のろうの様になる。腐敗せずに何十年も何百年も原型をとどめているらしい。蠟だからそれ程硬くないだろう。ただし保存はかなり難しいようだ。空気に触れたり温度が高いと駄目らしい。その点、鰹節は保存が簡単である。湿気に気を使えばいい程度である。

*1 ZAKKERS-桐鰹節削り器-
*2 破損の原因調査(破損解析)
*3 春を告げる魚「かつお」
*4 鰹節の製造方法
*5 三枚卸し
*6 鰹節について
*7 発酵で爆弾を作る!-江戸のバイオテクノロジー
*8 玄米酵素 … 「トピックス」
*9 発酵食品鰹節
*10 鰹節の仲間
*11 鰹節の面白話-鰹節の「節」とは
*12 燻製狂騒曲…Rhapsody in Smoke
*13 Mummies of Ancient Egypt
*14 大日坊即身仏
*15 デジタルミュージアム [第二部 コンテンツ]医学
*16 ADIPOCERE Chemistry

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?