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20080529 唖鈴の語源

 唖鈴は何故、「唖(おし)$${^{*1}}$$の鈴」と書くか。

 意味は「唖が持っている鈴、唖が使う鈴」ではなく「唖のような鈴」である。「亜鈴」とも書く。「唖」は差別になるということで、書き換えられた言葉だ。「亜」は、「亜熱帯$${^{*2}}$$」「亜硝酸$${^{*3}}$$」「次亜塩素酸$${^{*4}}$$」のように「次の」という意味になる。元々の字体の「亞」の由来は、墓室を象っているらしい。有力だった者の墓で儀式を執行する者を「亜」と言い、儀式を執り行う者は有力者の次の位ということで「次の」と言う意味になってきたようだ。

 となると「亜鈴」は「次の鈴」と言う意味になり、「唖 のような鈴」とは少し違ってくるが、「亜流」のような語感も手伝って何となく意味が通じる。言葉狩り$${^{*5}}$$のさなかにおける妥協の産物としては上出来であろう。

 では「鈴」は何を表しているのか。「唖鈴$${^{*6}}$$」は運動器具の一種$${^{*7}}$$で、筋肉を鍛えるのに使う。何故、柄の両端に重りを付けたこれ$${^{*8}}$$が鈴なのか。

 そもそも「唖鈴」は英語の「dumbbell」の訳語である。「dumb」は「唖」、「bell」は「鈴」だ。この場合、鈴と言うよりも「鐘(かね)」である。教会にあるような鐘だ。普通の鐘は音が鳴るように中が空洞になっている。ところがこれが全部埋まってしまって分銅$${^{*9}}$$の様になっている。これが所謂「音の出ない鐘」つまり「唖のような鐘」、「dumbbell」である。取っ手のある「dumbbell$${^{*10}}$$」は後の発明であろう。

 以前から、分銅のような「dumbbell」の画像を探していたが、なかなか見つからなかった。最近、Droopy$${^{*11}}$$のDVDを買って観ていたら、そのものの絵が出てきた。これ$${^{*12}}$$の筋肉男が持ち上げているものではなく、足元に描かれている物がそれである。これが本来の「唖鈴」だ。

 と思っていたら全然違うようだ。「dumbbell」の語源は錘(おもり)そのものの形ではないらしい。元々は教会の鐘撞き装置$${^{*13}}$$の様な物で、鐘が付いていない運動器具$${^{*14}}$$を指していたようだ。「音の出ない鐘撞き装置」つまり「唖の鐘撞き装置」である。これが運動に使う分銅のことを指すようになり、分銅よりも持ちやすい取っ手の付いた錘を指すようになった。

*1 20060411 差別用語(2)
*2 亜熱帯総合研究所 沖縄県 サンゴ マングローブ研究 - 特徴 
*3 亜硝酸とは?
*4 次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ソーダ)
*5 20060410 差別用語
*6 あれい 1 0 【亜鈴/▼唖鈴】 - goo 辞書
*7 ダンベル型ナノサークルRNAでRNA干渉効果を長期安定に | 独立行政法人 理化学研究所プレスリリース
*8 dumb.jpg
*9 HM03.JPG
*10 The Iron Barbell
*11 Tex Avery Screenshots
*12 dumbbell.jpg
*13 NEN Gallery : Church Bells
*14 Online Etymology Dictionary

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