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20050227 石の貨幣

 貨幣とは何か。何のために貨幣は存在するのか。貨幣は人類が発明した最も有用な仕組みであろう。金さえあれば何でも解決できる$${^{*1}}$$。金で解決できないことなどこの世の中に存在しないぐらいである。それぐらい万能な仕組みだ。

 昔、貨幣は実体が伴っていないと一般には理解されなかったが、現在はクレジットカードや電子貨幣のように実体がなくても通用するようになった。つまり貨幣とは、物の価値を表すと同時に、物の価値のみを純粋に抜き出してそれ数値や嵩(かさ)などに直し、それに見合った量の物と交換できることを決めた約束事である。太古は物々交換が基本$${^{*2}}$$だったが、不便なので貨幣が発明された。約束事なので物をわざわざ持ち運ぶ必要がなくなった。

 貨幣は約束事だから、その内容が簡単に変えられると交換が成り立たない。そのために人々は貨幣が簡単に変えられないように工夫をしてきた。金や銀などのように簡単に手に入らず変質しない物を貨幣に使ったり、容易に偽造できない印刷物やデータで代用している。

 物の価値のみを抽出しているので、元々の物よりも小さくて軽くないと貨幣の意味があまりない。結果としてある物よりも貨幣の方が大きく重くなる場合もあるが、日常でそのようなことが発生していては不便で仕方がない。その点からすればクレジットカードや電子貨幣は大きさも重さもない究極の貨幣になる。

 大きな貨幣と言えば大判とか南洋の石の貨幣$${^{*3}}$$を思い浮かべる。大判$${^{*4}}$$は、金貨では世界最大らしい。恩賞用らしいので貨幣とは少し違う$${^{*5}}$$かも知れない。長さが17cm程度あるらしい。

 南洋の石の貨幣$${^{*6}}$$はもっと大きい。何故こんなに大きいのだろう。交換の約束事を決めているだけだからもう少し小さくてもいいような気がするが、「約束事の内容が簡単に変えられない」という機能が優先されたのだろうか。大きいと作るのが大変である。簡単に一回り大きなお金を作ることができなくなる。

 貨幣には孔しかないので、おそらく文字を持たなかったのだろう。そうなると価値の違いは大きさで表現するしかない。その結果、どんどん大きくなっていったのかも知れない。大きく重くなると持ち運べないので不便である。実際に大きなものになると支払のために石の貨幣を移動させることはないらしい$${^{*7}}$$。所有者が変わるだけのようだ。不動産登記$${^{*8}}$$の所有者変更みたいなものである。

 約束事の象徴だから、象徴自体が移動する必要はない。そうであれば不便でも何でもない。大きな石の貨幣は原始的な貨幣だと思っていたが、考えてみると貨幣の究極的存在であることが分かる。約束事の内容は当事者同士で決めることなので、やはり「金で解決できないことはこの世にはない」ことになる。

*1 20030624 金で解決できないことはない
*2 独立行政法人造幣局 ぞうへいきょくたんけんたい
*3 独立行政法人造幣局 ぞうへいきょくたんけんたい (めずらしい世界の貨幣)
*4 日本貨幣史7
*5 エッセイ1-5
*6 Yap Island: The Island That Uses Giant Stones For Their Currency yap_stone_money.jpg
*7 マンタレイ・ベイ・ホテル- ヤップ島
*8 不動産登記のABC

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