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20001019 長い単語

 ある程度以上の文字数や音節数で構成される単語はその語源を探ると短い基本的な言葉の合成語になっている。これは地球上の言語全てに言えることであろう。それに対して短い単語はそれ以上分解して語源を遡れない状態に大抵なっている。日本語の場合「火(ひ)」「水(みず)」「雲(くも)」「山(やま)」「海(うみ)」などで、例えばどうして火を「ひ」と言うかよく判らない。めらめらと燃え上がる炎を「ふ」と言っても、それが最初から「ふ」であれば、火のことを「ふ」と言っても全く差し支えがない。つまり基本的な単語は符号化、記号化してしまっているので語源という考え方自体が意味を成さなくなっているのかもしれない。

 ある程度言語が発達すれば、ある新しい物事や概念を表すために符号として多くの任意の音節を与えて単語を作ることはしないと思われる。こんな非効率的なことはどんな言語でもしない筈だ。やはり関連する言葉を合成して新しい単語を作るのが普通だろう。

 日本語でも同じ事であるが、英語を学ぶ際、少ない文字数の基本的な単語は機械的に覚えなくてはならない。これはその文字や音節の並びが符号になっているので仕方がない。英語以外に他のヨーロッパ言語を既に習得していれば、英語の場合は基本的な単語であってもその語源がギリシャ語やラテン語、フランス語、ドイツ語などの他のヨーロッパ言語による場合が少なくないので少しは楽かも知れない。
 しかし文字数が増えてくると機械的に覚えるのはかなり苦労する。中学生の頃「dictionary」の綴りを正確に覚えるのにかなり時間を要したような気がする。この原因は「dictionary」を単なる符号として捉えていたからである。「dictionary」が何故「辞書」と言う意味か、その語源を知っていればこの苦労もかなり軽減されるだろうし、綴りの間違いもかなり減らせるであろう。

 英単語で一番長い単語としてpneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis$${^{*1}}$$がよく出てくる。これを単なる符号として見てしまうとdictionary以上になかなか覚えられないし綴りも間違えやすい。この長い単語を覚える必要があるかどうかは別として、この語源を理解していればある程度簡単に覚えられるし、綴りの間違いも殆どなくなる。

 この単語は

pneumono(肺の)ultra(超)microscopic(顕微鏡の)silico(二酸化珪素の)volcano(火山)coni(塵)osis(症)

と言った具合に切ることが出来る。

 pneumonoは発音しない「p」から始まっているので、どうやって発音するのか判らなくなり単語全体が文字の羅列のように見えてしまう。「ニューマノゥ」と読む。自動車好きであればシトロエン$${^{*2}}$$の「ハイドロニューマチック$${^{*3}}$$」のニューマと覚えればいいかも知れない。pneumには「肺」と言う意味の他に気体とか呼吸とか空気いう意味がある。ハイドロニューマチックのハイドロは水とか液体、ニューマは気体で、これらを使った機械的な仕組みを指す。シトロエン車はこの仕組みをサスペンションに使っている。

 ultraはそのままウルトラ。microscopicは更に分解すればmicro(微視的な)scopic(観察器械)。silicoはsiliconシリコン$${^{*4}}$$の酸化物。volcanoはそのまま火山。coniはギリシャ語のkonia(塵) から。osisは症状や状態を表す接尾辞である。

 語源からすると結構長い訳語になりそうだ$${^{*5}}$$が、実際は「塵肺症$${^{*6}}$$」と訳される。顕微鏡や二酸化珪素や火山が抜けてしまっている。通訳のコントで相手が長く色々喋っているのに、それを通訳者が一言で片付けてしまうのとよく似ている。

*1 19991207 My name is Q
*2 20001011 シトロエン
*3 Citroën hydropneumatic suspension
*4 20000428 CZ
*5 pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis | Search Online Etymology Dictionary
*6 塵肺症

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