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20090606 超音速と白い雲(2)

 航空機がほぼ音速で飛翔している時に作り出す雲についての続き$${^{*1}}$$。この突然現れる雲は「vapor cone$${^{*2}}$$」と呼ばれているらしい。

 音速を超えた瞬間にこの雲が発生すると説明しているページがある$${^{*3}}$$が、どうも納得がいかない。音速を超えた瞬間に雲が発生する理由が解らない。件のページには超音速になると飛行機の先端にできている空気の高圧層が突然解放されるから雲が発生するとある。

 通常の雲はどのようにして発生するのか$${^{*4}}$$。水蒸気を含んだ空気の温度が下がって水蒸気の一部が細かい水滴となると雲になる。空気が水蒸気を溜め込む限界量は温度で決まる。その限界量を超えた分が水滴になる。水蒸気を溜め込むことができる限界量を飽和水蒸気量といい、この量は温度が下がると減っていく$${^{*5}}$$。空気の温度が下がるのは、急に空気の圧力が下がることによる$${^{*6}}$$。圧力が急に下がるということは高圧の空気層が周りの普通の状態の空気を押し退けることである。その押し退けた仕事の分だけ高圧の空気層に溜っていたエネルギーが減る$${^{*7}}$$。空気の持っているエネルギーとは空気の温度の高さなので、エネルギーが減れば温度が下がる。逆に周りから押しつぶされれば温度が上がる。こうやって雲ができる。

 飛行機の周りに雲ができたと言うことは、水蒸気を含んだ空気の圧力が減ったからに他ならない。水蒸気を多量に含んでいれば少しの圧力変化でも大量に水滴が発生するだろう。だから湿気の多い時に飛行機の周りに雲が出易い。とにかく飛行機の先端にできた水蒸気を多量に含んだ高圧の空気層の圧力が急に下がらなければ雲ができない。

 普通に飛翔している時は、雲ができないのだから高圧の空気層の圧力は急激に下がらないのだろう。ならば航空機の速度が少し低下したらどうなるだろう。今まで連続的に飛行機の先端で空気を押し退けて高圧の空気層作っていたのを急に緩めるのである。すると先端で次から次へと押し退けられていた空気の量が減り、それまでできていた高圧の空気層の圧力が急に低下するのではないか。そうすれば雲ができる。

 つまり少し減速した時に雲が発生するのである。音速の壁を破る瞬間とは全く逆だ。これは全く根拠のない発想ではない。このように旋回中にも雲が発生$${^{*8}}$$している。一瞬、航空機の速度が緩んだのではないか。勢いがある$${^{*9}}$$ので、地面に対しての速度はそんなに急に変化はしないかも知れない。大気に対しては風や部分的に気圧が低下している部分はいくらでもあるから飛行機の先端の空気層が急激に低下する場合はあるだろう。そう言う領域に入れば、雲ができても不思議ではない$${^{*10}}$$。

 因にプロペラ機でも条件次第で雲ができる$${^{*11}}$$ようなので、音速の壁は全く関係ないことがこの現象でも言える。

*1 20090605 超音速と白い雲
*2 Vapor Cones – FYFD
*3 第4節 ドップラー効果 ◆ジェット機が音速をこえたときに雲ができる理由について
*4 雲のできる仕組み
*5 飽和水蒸気量
*6 雲を作ろう
*7 20031125 空気で湯を沸かす給湯器
*8 Point Mugu 2007 F22Mugu6oClock.jpg
*9 20010331 慣性
*10 ChamorroBible.org: November 12, 2006, Psalm 66:1-7. Manguaguan na Palabran Si Yuus - God's Precious Words
*11 Point Mugu 2007 MuguC130Vaporing.jpg


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