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20060415 飛び石自動車

 小学生だった頃の話し。通学路の途中に中古車屋$${^{*1}}$$があった。店は大きな通りに面していて、何台かの自動車が置いてあった。その店から少し離れたところには店頭の自動車よりも多くの自動車が所狭しと並べてあった。今思うとこれらの自動車は下取り自動車か販売在庫だったのか。当時そんなことは全く判らない。とにかく薄汚れた自動車が沢山置いてあると思っていた。この自動車置き場は通学路に面していた。毎日、この自動車置き場の横を歩いていた。店がある大通りは交通量が多いので通学路になっていなかった。

 ある日、学友と一緒に鬼ごっこか何かをしながら下校した際、件の自動車置き場に誰かが入っていった。その誰かは自分だったかも知れない。自動車の陰に隠れるなどして鬼ごっこがどんどん盛り上がっていった。そしてついには自動車の上に乗り、飛び石$${^{*2}}$$を渡るように自動車の屋根を跳んで追いかけ合っていた。屋根が自分の体重で凹んでは「ぼこっ」と音を立てながら元に戻る。これがまた面白かった。罪悪感は全くなかった。捨ててある自動車と勝手に思っていたし、踏んでもすぐに元に戻るから問題ないと思っていた。

 近所にプロパンガス配達をしているお兄さんがいた$${^{*3}}$$。下校途中に配達中のトラックによく乗せてもらった。配達が終わってからそのトラックの荷台に登ったりトラックの屋根に上がって飛び跳ねて遊んでいた。だから自動車の屋根は凹んでも音を立てて元に戻ることを知っていた。この時、お兄さんはにこにこして私が遊ぶのを見ていた。

 何日かすると全校の朝礼で校長が中古車置き場で自動車の屋根に乗って遊んでいる人がいたという通報が入っていると言った。学友全員名乗りでなかったので、この件はうやむやになった。店に謝りに行った記憶がないので、うやむやになったはずだ。

 朝礼で校長に言われて初めて「あれは悪いことだったのだ」と気付いたのだった。

*1 20020409 中古車
*2 茶の庭・双樹庵
*3 20040214 ジャイアントコーン

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