見出し画像

20030724 ブラックライト

 ブラックライト$${^{*1}}$$と呼ばれる照明器具がある。

 ドラえもん$${^{*2}}$$に登場する未来道具に「夜昼ランプ$${^{*3}}$$」というのがあった。昼間にこのランプを点けると電球から光が出るのではなく、電球の周りが暗くなるという道具だった。周りが明るくて昼寝が出来ない時とか、周りが暗くないと雰囲気がでないので受験勉強がはかどらない時に使われていた。「ブラックライト」という言葉からはこんな様な照明器具を連想してしまうが、全く違う。

 「黒」とか「暗闇」というのは光がない状態なので、「黒い光を出す」ということは、言葉の意味からでも物理的な意味からでも間違っている。ただし、光は波の性質を持っている$${^{*4}}$$ので波を打ち消し合うことによって光を見えなくすることは出来る。ガラスに透明のシールを貼ると気泡の周りやガラスとフィルムとに挟まれた部分の周りに縞模様$${^{*5}}$$が現れる。この縞模様の暗い部分は光の波が打ち消し合って光が見えなくなった部分である。これを「光の干渉$${^{*6}}$$」と呼んでいる。ガラスとフィルムとの極薄い隙間で反射した光と透過する光とがある条件で打ち消し合う場合がある。これで「暗くなる」のである。

 打ち消し合うには光の方向や光の波が上手く揃わないといけないので、昼間の明るい場所のように方々からいろんな波の光が来るところで全てを打ち消すことは不可能である。従って「夜昼ランプ」は作ることが出来ない。

 ブラックライトは「夜昼ランプ」ではないので現実に存在する。見た目が黒い$${^{*7}}$$のでブラックライトと呼ばれる。

 この黒い蛍光灯からは紫外線が出る。目に見える光は出てこない。もともと蛍光灯のガラス管の中では人間の目に見えない紫外線しか発光していない。それが白く光って見えるのは蛍光灯のガラス管の内側に紫外線を白い光に変換する蛍光塗料が塗ってある$${^{*8}}$$からである。

 普通の蛍光灯のガラス管に蛍光塗料を塗らずに、ガラス管のガラスに紫外線を透し易いものを使えば「ブラックライト」になる。そういった特徴を持つガラスが濃紺色$${^{*9}}$$、つまり黒く見えるわけである。

 蛍光灯でなくても、水銀灯$${^{*10}}$$ならば、蛍光灯と同じ様な原理で紫外線を出している$${^{*11}}$$ので、可視光線を透さず紫外線を透しやすい濃紺色のガラスにすればブラックライトになる$${^{*12}}$$。

 電球型のブラックライト$${^{*13}}$$も見かける。電球のガラスが濃紺色になっている。白熱電球のガラスを変えただけでブラックライトになり得るのかと思うが、普通の白熱電球からも紫外線は出ている。殆ど出ていないが、少しは出ている$${^{*14}}$$。

 電球の中のフィラメントの温度は2000~3000度になっている$${^{*15}}$$。物質が高温になって白い光を放っている時は赤外線、可視光線、紫外線など様々な光を放っている。温度が2000~3000度では赤外線や可視光線の量が圧倒的に多いが、紫外線もわずかに出ている$${^{*16}}$$のである。電球のガラスがブラックライトの濃紺色のガラスになっていれば可視光線が電球から出ないで、紫外線だけが出てくる。従って白熱電球でもブラックライトになり得る。

 白熱電球型のブラックライトでは紫外線の量が微量なので、蛍光物質を光らせる$${^{*17}}$$能力が小さい。周辺をかなり暗くしないと蛍光物質が光っているのは観察できないだろう。

*1 電通産業ブラックライト
*2 ドラえもんチャンネルへようこそ!
*3 ドラえもん学 第4章
*4 20020825 ヘリウムの発見
*5 ニュートンリング 干渉縞
*6 光の干渉の様子 - 羽根・佐々木研究室
*7 ブラックライトブルー | 製品特長
*8 Q 送電線の下で蛍光灯が光るのはなぜですか?
*9 TOSHIBA(TLT) 商品紹介/ランプ・光源/蛍光ランプ/HIDランプ・ブラックライト
*10 20000416 桜の花
*11 TEPCO : 電気・電力辞典 | 水銀灯
*12 HIDブラックライトのページ
*13 ブラックランプ・電球・おもしろ電球
*14 連続スペクトル(Continuous Spectrum) 電球の明るさとスペクトル
*15 エネルギア「なん電だろう」調査隊
*16 赤外線、黒体、放射率について | ジャパンセンサー株式会社
*17 宇宙・物理研究室 Exp-近紫外線の世界

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?