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20051117 茶碗

 先月、ふと思い立って京都に行った。名古屋から自動車で二時間程度である。上の息子は部活動で出掛けていたので、残りの家族四人で行った。お参りしたり、舞妓さんなどを見た後、十数年前に訪れたきりの「竹虎堂$${^{*1}}$$」という陶器店$${^{*2}}$$を覗いてみた。清水寺$${^{*3}}$$の近くにある。ここでご飯茶碗を買った。最近は安物の茶碗ばかり使っていたので、少し奮発した。奮発したと言っても七、八百円程度である。絵柄$${^{*4}}$$が気に入ったので買った。手長海老$${^{*5}}$$と水草の菱$${^{*6}}$$とが描かれている。

 茶碗は今まで使っていた物よりも薄くて軽い。これで思い出したのは、中学生の頃の道徳の授業である。確か道徳だった。「殿様の茶碗」という物語である。昔、どこかの国の殿様は、優れた陶芸師が作った透き通るような薄手の茶碗を使っていた。毎日その薄い茶碗に熱々のご飯を盛られたので、いつも手が熱いと思いながら食事をしていた。が、そのことについては家臣に伝えていなかった。

 ある日、狩りか何かに出掛けた時、遅くなったので近くにあったあばら屋で一晩世話になることにした。そこで夕飯に出された茶碗は分厚くて重いものであった。城で使っていた茶碗と違って持つ手は全く熱くない。あばら屋の主人のもてなしに殿様はたいそう喜んだという。

 大体こんな話だった。茶碗が薄いと言うことだけで思い出したのだが、一体この寓話は何を伝えたかったのか当時よく分からなかったと思う。「薄い茶碗は熱い(厚い)」という洒落ぐらいだったか。他人を思いやる心が大切である。独りよがりはいけない。と言ったことだろう。調べてみるとこの物語は小川未明$${^{*7}}$$が作ったらしい。知らなかった。

*1 竹虎堂
*2 chikkodo.jpg
*3 音羽山 清水寺【公式ホームページ】
*4 chawan.jpg
*5 テナガエビ 十脚目テナガエビ科
*6 ヒシ (ヒシ科) <菱>
*7 小川未明文学館のホームページへ、ようこそ。

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