見出し画像

20041029 ラジオメータ(2)

 ラジオメータ$${^{*1}}$$の羽根の回転速度は何で決まるか。羽根が回るのは、ガラスの中の気体分子が羽根にぶつかってこれが勢いよく跳ね返る時の反動による。跳ね返る勢いは羽根の表面の温度によって決まる$${^{*2}}$$。

 羽根の表面の温度が高いということは、羽根の表面を構成する原子や分子が激しく運動していることである$${^{*3}}$$。運動していればそこにぶつかった気体分子は強く跳ね返される。温度が高ければ速く動いていることになるので、跳ね返る勢いも大きくなる。

 気体分子は羽根の裏表で跳ね返るので、跳ね返る勢いの差が大きければ羽根はよく回る。跳ね返る勢いがの差が大きいと言うことは、裏表の温度差が大きいということに他ならない。

 羽根の温度は光の照射によって上昇する。色が黒ければ光をよく吸収するので温度が上がりやすい。白ければ光を反射するのでなかなか温度が上がらない。羽根は裏表が白黒に塗り分けてあるので、これによって裏表で温度の差が生じる。

 真空中の物体の表面温度は、その表面で出入りするエネルギーの量で決まる。エネルギーは光として出入りしている。温度の低い物体は遠赤外線を放射し、高い物は白い光を出す$${^{*4}}$$。これは全ての物質で共通なので、特殊な物質だけが遠赤外線を出すわけではない$${^{*5}}$$。人体も路傍の石もすべてその温度分の光を出している。他の物体から光を受けてエネルギーを受け取ればそれに見合った分だけ自分の温度が上がる。何もしなければ光を出す一方なのでどんどん温度が下がっていく。

 本当に周りに空気も光も何もなければ温度は自然にどんどん下がっていって氷点下273℃、絶対零度$${^{*6}}$$になるはずである。地上では空気や太陽の光が溢れているので、物質はそれらからエネルギーを常に受け取り温度が室温に落ち着く。

 温度が一定になっている状態から新たにエネルギーを受け取ればその物質の温度は上昇する。受け取るエネルギー量が同じならば温度の上昇も同じになるだろうか。その物質の元々の温度によって温度の上がり方は違うだろう。

 物質から光として放射されるエネルギーの量はその表面の温度の四乗に比例する$${^{*7}}$$。ここで言う温度とは絶対温度$${^{*8}}$$のことで、周りに一切何もない宇宙空間のような状態で温度が下がりきった時を零度とする温度である。10度の時と100度の時とでは放出しているエネルギーは一万倍も違う。与えるエネルギーの量が、例えば10度の千倍程度だったらどうか。10度の時は大きく温度が上昇するが、100度の方はエネルギーを受け取るので少しは上昇するが焼け石$${^{*9}}$$に種火である。つまり受け取るエネルギーが同じならば、もともとの温度が低い方が上昇しやすいことになる。

 羽根の回転速度は表裏の温度差で決まる。ラジオメータに照射される光の強さが一定ならば羽根の元々の温度が低ければ低いほど温度が上昇しやすい。ということは裏表で温度の差が大きくなりやすい。ラジオメータを冷やせば羽根がよく回ることになる。

 やってみた。ラジオメーターを冷凍庫の中に入れて暫くした後、取り出して光をあてた。室温の時よりも勢いよく回る。周りのガラスが霜で白濁しているにも拘わらずよく回っている。予想通りだった。気体分子の衝突で羽根が回転している証左である。

 放電管の中で回転する羽根車の実験$${^{*10}}$$というのがある。電子の流れによって羽根車が動く思われていたが、実はラジオメータと同じで電子の衝突で羽根が温められることによって回転するらしい。これを実証するには上に書いたように放電管$${^{*11}}$$を冷やしてみればいいだろう。電子の流れが直接羽根を回転させるのであれば放電管の温度は関係ない。ラジオメータと同じならば羽根車は速く動くことになる。

*1 20041028 ラジオメータ
*2 3-1-3 気体分子の熱運動 ◆気体分子の運動エネルギーと絶対温度
*3 ?を!に...>解説集>>熱と温度
*4 Kiyoshi Shiraishi:黒体輻射
*5 トルマリンとは?
*6 絶対温度について
*7 HORIBA : 放射温度計プラザ
*8 20031221 華氏
*9 焼石駅 - Google マップ
*10 20000511 放電管
*11 s_crooke.gif

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?