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20031221 華氏

 温度の目盛りには摂氏、華氏、絶対温度がある。摂氏と絶対温度との変換は、単に摂氏温度に273.15を足せば絶対温度になるので簡単だが、華氏は馴染みがないし、変換$${^{*1}}$$も面倒臭い。なぜこんな変な単位になったのだろう。

 そもそも温度というのは「単位」と言えるのだろうか$${^{*2}}$$。温度では、長さや重さのようにはっきりした「一塊り」というような単位が想像できない。100℃といっても「1℃」が100個集まったのではない。水が沸騰する「熱さ」を示しているだけである。だから沸点の温度は例えば「100」でなくても「50」でもいいが、人情としては「10」とか「1000」とか切りのいい値にするだろう。

 華氏はそうなっていない。水の沸点の温度は212度になっている。何故、人情に逆らってこんな不思議な値になったのだろう。

 物の熱膨張を利用した温度計はガリレオが発明した$${^{*3}}$$。その後ニュートンが温度計に目盛りを付けた。氷点を0度、人間の体温を12度としたらしい$${^{*4}}$$。「10」よりも約数の多い「12」を採用するのは普通の感覚である。

 華氏温度はドイツのファーレンハイトという人がつくった目盛りだ。ファーレンハイトを「華倫海」と中国語で音訳したので、単位の漢字表記が「華氏」となった。ファーレンハイトはまず0度の基準を、実験室で簡単に作ることのできる温度とした。氷に塩を入れると氷点よりも低い温度が得られる$${^{*5}}$$。これを温度の基準とした。次にニュートンと同じように体温を12度とした$${^{*6}}$$らしい。のちに測定精度を上げるために一目盛りを八等分して体温を96度とした。健康な人が温度計を口にくわえた時に得られる温度$${^{*7}}$$を96度としたようだ。web上には「ファーレンハイトは体温を100度とした$${^{*8}}$$」という記述が見受けられるが、これは間違いである。この時、水の氷点を30度としたらしい。なぜ30度にしたのか。実際に96等分の目盛りを付けた時に氷点が30度ぐらいになったからだろうか。

 この目盛りを使って水の沸点を測ると212度になった。氷点と沸点との間を180に等分した方が合理的で便利だと言うことで、氷点は30度から32度になった。こうやって華氏温度の基準は「水の氷点を32度、沸点を212度とする」となったらしい。

*1 単位換算
*2 20010521 温度の単位(1)
*3 20020527 ガリレオ温度計(3)
*4 HORIBA : 放射温度計プラザ
*5 お菓子DE(で)科学 || 氷と塩のヒミツ || おとな向けのかいせつ
*6 Encyclopedia: Fahrenheit
*7 About Temperature The Development of Thermometers and Temperature Scales
*8 Google 検索: ファーレンハイト 100 体温 華氏

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