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20000511 放電管

 放電管$${^{*1}}$$に高電圧をかけて陰極線$${^{*2}}$$を発生させると、その中で羽根車が回る実験$${^{*3}}$$を教育テレビか何かで見たことがある。ガラスの放電管の中に2本の細いガラスのレールが設けてありその上には水車のような羽根車が乗っていた。このような放電管$${^{*4}}$$が小学校か中学校の理科室にも置いてあった。すぐ壊れそうな造りなので恐る恐る手に取ってみると、電圧をかけていなくても羽根車が勢いよくレールの上を走り出した。
 放電管の中は真空なので少しでも放電管を傾ければ、羽根車は空気の抵抗を受けずに転がっていくのであった。

 結局、小中学校の頃には放電管の羽根車の実験は見ることが出来なかった。恐らく高電圧電源の扱いに先生が慣れていなかった為であろう。

 ある本$${^{*5}}$$を読んでいたら羽根車が回るのは放電管の陰極から放出された電子が羽根車の羽根に当たって回転力を与えているのではない、とあった。
 では何故まわるのか。羽根に当たった電子の運動エネルギーが羽根の表面温度を上昇させる。放電管内に残っている気体分子が羽根の表面に当たると熱エネルギーをもらって勢いよく跳ね返る。その時の反作用で羽根が回る、というのだ。

 これはラジオメーター効果$${^{*6}}$$と呼ばれている。ラジオメーター$${^{*7}}$$は陰極線の電子の代わりに外からの光$${^{*8}}$$によって羽根車が温められる。羽根の表は黒く塗ってある$${^{*9}}$$が裏は光が反射するようにしてある。これによって黒く塗られている方だけが温められる仕掛けである。

 上記の本には放電管の羽根車も熱の作用で回るので熱が逃げやすいアルミのような金属で材料で羽根を作るとうまく回らないとあった。

 しかし小学校か中学校で見た放電管の中の羽根車は一円玉のような銀色をしていた様な気がする。この記憶が正しければアルミだとうまく回らないと言うのはおかしい。ただし、上に書いたようにその実験器具の羽根車が回っているところは見られなかった。

 残留気体分子の熱作用で羽根車が回転するのは本当だろうか。なぜ電子の運動エネルギーが一旦、羽根の表面の温度を上昇させるエネルギーに変換され、再びそれによって気体分子の運動エネルギーになりそれが羽根の回転のエネルギーになるのか。そんな面倒くさいことをしなくても電子の運動エネルギーが直接、羽根の回転エネルギー$${^{*10}}$$になってもいいような気がする。

 放電管にわずかに残っている気体によって羽根車が回転するならば、放電管の中の空気を真空ポンプで抜いていって、真空度をどんどん上げてやればだんだん羽根車が回らなくなるのだろう。こういう実験をすれば理解しやすい。どんどん真空度を高くすると放電し難くなる$${^{*11}}$$からうまく実験できないのだろうか。でも放電すれば羽根車は回るような気がする。

*1 グロー放電(glow discharge)
*2 Science Museum London - Treasures
*3 Electrons
*4 http://www.chss.montclair.edu/~pererat/s_crooke.gif
*5 『間違いだらけの物理概念』・『続 間違いだらけの物理概念』
*6 よせなべ物理サークル会誌139号
*7 ラジオメーター(放射計)
*8 The Atoms Family - Dracula's Library - Radiometer
*9 Solar Radiometer
*10 Home Page of R. Logan
*11 パッシェンの法則 (Paschen's law)

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