見出し画像

20041208 年賀状の絵柄

 中学の頃から年賀状の絵柄に凝るようになってきた。ゴム板を使って版画を作った。絵柄は浮世絵をよく使った。題材は「三世大谷鬼次の奴江戸兵衛$${^{*1}}$$」「市川鰕蔵$${^{*2}}$$」「市川団十郎$${^{*3}}$$」などであった。これらを取り上げた理由は、当時、図案に浮世絵が採用された切手$${^{*4}}$$が高値で取り引きされていたからである。

 浮世絵は多色刷りだが、年賀状では技法の都合から単色刷であった。そのまま絵柄を模写するだけではつまらないので、少しずつ変えた。例えば歌舞伎役者の顔に書かれた「隅取$${^{*5}}$$」の代わりにその年の西暦の下二桁をアラビア数字$${^{*6}}$$で大きく書いたりした。

 浮世絵を初めて年賀状に採用した年に父から警告があった。「その絵柄は正月相応しい物なのか」という点が問題であった。もし相応しくなければ作り直しである。

 言われるまで、正月に相応しいかどうかなど当時考えたこともなかった。とにかく面白ければいいと思っていた。そういう警告を受けても、取り上げた浮世絵は雑誌やテレビジョンなどで頻繁に登場するから全く問題ないと考えていた。

 この問題はどういう経緯で収束したのかよく憶えていない。確か「絵の題名に不吉な文字が含まれていなければいい」ということになったような気もする。年賀状には元絵の題名など書かないが、分かる人には分かると言うことであろう。指摘された絵の題名には「大谷鬼次$${^{*7}}$$」と「鬼」の字が入っていた。結局、作り直しはしなかった。

 葉書は誰の目にも触れる物なので、子供の間で面白がるだけでは済まない。特に年賀状は家族全員で見る機会が多い。これによって自分の行為が世間からどういう目で見られるかを考えるきっかけになった。浮世絵程度での当時の父の警告は鬱陶しかったが、自分の子供がもっと奇抜な発想をすれば、「待った」をかけるかもしれない。ただし今のところそんな心配は無用のようだ。

 年賀状制作当時、「大谷鬼次の奴江戸兵衛」の切手はなかったが、後年にはこの絵柄の切手が発行$${^{*8}}$$されている。

*1 文化遺産オンライン 三世大谷鬼次の奴江戸兵衛 131010000250001.jpg
*2 Ichikawa Ebizo
*3 錦絵標準画像 団十郎舞台似顔絵 w0000002.jpg
*4 キッテコム(切手.COM) 日本切手カタログ Internet版
*5 文化デジタルライブラリー 歌舞伎編・その壱
*6 20020509 アラビア数字の訓読み
*7 写楽、讃岐人説-四国新聞社
*8 キッテコム(切手.COM) 日本切手カタログ 切手趣味週間 切手趣味週間

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?