見出し画像

地下に広がる塩の宮殿・ヴィエリチカ岩塩坑 【Bucket List09】

世界三大地下洞窟というものをご存知だろうか?
ご存知なはずがない。私が勝手に言っているだけだからだ。
今回は私が独断で選ぶ世界三大地下洞窟の一つ、ポーランドのヴィエリチカ岩塩坑について取り上げたい。

ヴィエリチカ岩塩坑はこんな場所

ヴィエリチカ岩塩坑(Wieliczka Salt Mine/Kopalnia Soli Wieliczka)は、ポーランド南部マウォポルスカ県にある岩塩の採掘坑である。
1044年から操業を開始し、1996年に商用採掘を休止するまで実に9世紀以上にわたって採掘が行われた岩塩坑の全長は300km以上に及び、廃坑になっていないものとしては世界最古の歴史を誇る。

ヴィエリチカとボフニャの王立岩塩坑群」として世界遺産に登録されており、これは1978年に世界遺産として世界で初めて登録された12件のうちの1つである。

ヴィエリチカへはクラクフから電車で約20分程度の距離だ。
また駅からも5分程度と近く、看板も出ているので特に迷うことなく着くことができるだろう。

地底の王国

地下への入り口は、一見そうは見えないような普通の建物になっている。

この岩塩坑はポーランドの中でも屈指の観光地となっていることもあり、かなり人気がある。そして内部見学はツアーのみ可能となっており、人数制限があるので、予めウェブサイトで予約を行うのが無難だろう。

なお、ツアーは英語を含めて様々な言語に対応しているが残念ながら日本語のツアーやオーディオガイドはない。

いよいよここからが地下への旅スタートである。
木製の階段を降りていく。

果てしなく降りていく。

たどり着いたのは地下64m。ここからが岩塩坑の入り口だ。

ガイドさんの説明を受けながら3.5km程度の坑道コースを進んでゆく。
3.5kmと聞くとなかなかの長さだが、9世紀以上にわたって掘り進められた坑道の中のわずか1%程度にしか過ぎないという。
坑道は1年を通じて気温15度程度に保たれているそうだ。夏場でも羽織るものがあったほうがよいだろう。

途中途中で採掘に使われていた道具などがそのまま展示されている。

しかし何よりここが岩塩坑であることを如実に物語るのは周囲の壁である。

どこもかしこも塩である。壁を触った指を舐めるとしょっぱい。
まるで鍾乳洞のように塩のつららができているところもある。

また、坑夫たちが彫った塩の彫刻なども展示されている。

坑夫にとって守護神的な存在であったとされるキンガ姫や、
夜になって坑夫がいなくなった頃に採掘をし始めていたという伝説のある小人たちなどがいずれも塩で生き生きと彫られている。

ヴロツワフといい、ポーランド人は小人が好きなのかもしれない。

他にもポーランドの偉人なども塩で表現されている。

このソシャゲ向けに魔法使いキャラとしてデフォルメされたような出で立ちの彼は、天動説を唱えたポーランドの偉人コペルニクスである。

こういった展示を観ながら坑道を降りてゆき地下100mに達した頃、狭い坑道から一気に開けた場所にでる。そこが岩塩坑観光のハイライトだ。

塩の宮殿

観光のハイライトとなるのは、聖キンガ礼拝堂だ。

岩塩坑で働く坑夫たちの安全を守るための礼拝所として作られたとされるこの礼拝堂の驚くべきポイントは、全てが塩でできていることである。
壁に掘られた彫刻はもちろんのこと、

祭壇も、

天井のシャンデリアに至るまで、そのすべてが塩である。

特に塩の彫刻が明かりに照らされた姿は、水晶を思わせるかのような美しさである。

これらのいずれも、著名な彫刻家の作品ではなく、塩の採掘に従事していた坑夫たちの作であるというから更に驚きだ。
地下深くで自らの安全を願う気持ちが、このように壮大な礼拝堂を作らせたのだろう。

王妃の伝説

この礼拝堂を含め、何度か名前の上がった「キンガ姫」とは、ポーランドの王妃であり、ヴィエリチカ岩塩坑の歴史に深い関わりを持つ人物である。

ハンガリー王ベーラ4世の長女として生まれたキンガ姫は、1239年にポーランド王ボレスワフ5世との結婚が決まる。
ところが、その結婚に気乗りのしなかったキンガはハンガリー国内の岩塩坑の中に婚約指輪を投げ捨ててしまう。
しかし、婚約は避けることができず、王妃としてポーランド王室へと嫁ぐことになった。

それから10年後、当時のポーランドの首都クラクフ近郊にあった小さな岩塩採掘所であったヴィエリチカ村より「王室の方のものと思われる立派な指輪が見つかった」との報告が入り、確認したキンガは仰天する。
なんと10年前に自らがハンガリーで投げ捨てた指輪だったのである。

当時、ヴィエリチカでもすでに岩塩の採掘は行われていたものの、小規模であり、ハンガリーから輸入された岩塩の貯蔵庫としても使われていたそうで、巡り巡って岩塩とともに指輪がポーランドへと戻ってきたのだ。

これを偶然と考えなかったポーランド王室は、本格的にヴィエリチカ岩塩坑の採掘を進めたところ、地下から莫大な岩塩床が発見されたのである。
以後国立の事業として岩塩採掘が進められることとなり、当時大変貴重であった岩塩はポーランドに莫大な富をもたらすことになるのである。

先の彫刻も、この指輪の発見のシーンがモチーフとなっている。

地底は続く

ハイライトを終えてもまだ見どころは続く。
地底にも緑に輝く湖がある。当然塩湖だ。

そして、礼拝堂ほどの派手さはないが、ミハウォヴィツェの間も必見である。

天井の高いホールのようになっており、それを支える白亜の木組みが美しい。

途中、作業服を来た子どもたちの一団とすれ違った。

彼らは見学ガチ勢というわけではなく、別ルートの見学者だ。
私が参加したツアーはTourist's Routeというものだが、それとは別にMiner's Routeというツアーも存在し、採掘や運搬などといった体験ができるそうだ。体力を使いそうだが、実際に坑夫になった気分を味わえる貴重な機会かもしれない。

そしてドゥロズヴィッツェの間にはカフェや土産物コーナーがあり、
岩塩やバスソルト、塩の飾り物などのヴィエリチカらしい土産を手に入れることができる。

岩塩坑の地下にはホールも作られており、会議やパーティ、コンサートなども行われているそうである。

ヴィエリチカのマグネット

ヴィエリチカのマグネットがこちら。

夜のうちに坑道を掘り進めていたと言われる小人が描かれている。
岩塩坑内の売店では、良いマグネットが見つけられなかったのだが、外に何店舗か存在する土産物屋でかろうじて手に入れられた一品だ。
あまり小人の顔をまじまじと眺めてはいけない。意外と劣悪な環境で働いていたのかもしれない。

長きに渡ってポーランドの産業を支えるために、地下に広がり続けた地底の世界は、今も観光地としてポーランドに人々を惹きつけることに一役買っているのである。

なお、地下の世界からの帰還にはエレベータが使えるので安心だ。


最後までご覧いただきありがとうございました。


この記事が参加している募集

いただいたサポートは、新たな旅行記のネタづくりに活用させていただきます。