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【夢見る魚】

リュウジは都会での日々に疲れ、仕事から帰るとすぐにベッドへと沈んでいました。夢の中で彼は魚になり、深く青い海を泳ぎ回りました。鮮やかな珊瑚、カラフルな魚たち、そして広大な海の自由な感覚は、現実の喧騒から解放される至福の時間でした。

しかし、目覚めたとき、リュウジは現実と夢の境界がぼやけていることに気づきました。電車の窓から見える景色は海底の風景に見え、同僚の声は水中で響く音のように聞こえました。

この不思議な現象を解明すべく、リュウジは夢の研究者であるドクター・ユメノを訪れました。ユメノはリュウジの話を聞き、驚くべき事実を告げました。「あなたが体験していること、それは仮想現実から真実の自己を思い出す過程です。我々は元々海を泳ぐ存在で、今の都市生活はプログラムされた仮想現実なのです。」

この事実にリュウジは衝撃を受けました。しかし、自分の体験とユメノの言葉が一致することから、彼はそれが真実だと認識しました。しかし、この真実を伝えれば世界は混乱に陥るでしょう。人々は自分たちのアイデンティティを疑い、社会は混沌とする。

リュウジはこの真実を自分だけの秘密にすることを決めました。そして、彼は夢の中で魚としての自己を思い出し、現実の世界では都市生活を送るという二重生活を始めました。彼は都市生活と海を泳ぐ夢の中での生活を繋ぎつつ、「夢見る魚」となったのです。

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