置き去り猫を助けたい!⑧
重い責任
無事にビワ一家を捕獲できたことにほっとして、しばらくケージの前でぼーっとしていました。その放心状態が徐々に解けるとともに襲ってきたのが、とてつもないプレッシャー。
ケージで固まるビワちゃんを見て、改めてビワちゃんのこれまでの生活を突然奪ってしまった実感が湧いてきたのです。明日もお気に入りの場所に行こうとしていたかもしれないし、仲良しの猫と遊ぼうと思っていたかもしれない。風や草の匂い、土の感触、日向ぼっこ、そういうものすべてをなんの前触れもなく奪ってしまったことがとてもショックで、涙が止まらなくなってしまいました。初めての体験、初めての感情でした。
ここで改めて、もう後には引けないし絶対に幸せにしなければならないと決心できた気がします。これまでの環境を人のエゴで奪うのだから、せめて安心して暮らせる環境を何が何でも見つけてあげなければと。ケージの前で顔面をグショグショにしながら、ビワ一家にそう決意表明をしたのでした。
保護主は通過点でしかない
夜になってケージをそっと覗きに行くと、親子3匹ちゃんと仲良くくっついて寝ていました。ビワちゃんはビクビクしているものの威嚇はなく、しばらくするとおっぱいをあげたり毛づくろいしたり淡々と子猫のお世話を始めました。しかもまったく鳴くこともなく、ブロードラインも大人しく着けさせてくれ、なんなら少しだけ指を舐めてくれたり、なんて優しい猫なんだろうと驚きました。
ビワ一家は捕獲でき次第東京のmayabellさん宅で預かってもらうことになっていたので4日後にはここを離れる予定でした。すぐにさよならだとわかっているのに、子猫たちはとんでもなくかわいいしビワちゃんのこともすごく好きになってしまい、それがとても苦しかったです。
自分の猫ではないんだ、私は通過点でしかないんだと自分に納得させるのが大変でした。捕獲時同様、これまでの人生で経験したことがないまったく新しい感情に、かなり戸惑ったことを覚えています。
1つだけ、ビワ一家をお世話している時にひと騒動ありました。
普段鳴かないビワちゃんが夜中の3時に大音量で鳴いて暴れている音がしたので慌てて見に行ってみると、なぜかケージの外にきょとんと座っている子猫たちと、それを見てパニックになるビワちゃんの姿が!
急いで子猫たちを捕まえてビワちゃんの元に戻すとピタッと落ち着いてくれたのでそれは良かったのですが、一体どうやって脱出したのか...。ケージをくまなく見てみると、下のトレーを引き出すところが若干広めに開いていて、多分そこから這いつくばって出てしまったのかと。
急遽ダンボールで全体を囲み、それからは子猫たちがケージから出てしまうことはなかったです。ちなみに私が買ったのはこちらです。後日実家から2段ケージを借りることになっていたので、若干小さいかなと思いましたがこれにしました。
そしてお別れの朝
ついにやってきてしまったビワ一家との最後の日。とても寂しいし、ゆっくり別れを惜しみたいところですが、しんみりしている暇はなくやることてんこ盛り。まずは猫たちをケージからキャリーに移さなくてなりません。子猫たちは余裕として、ビワちゃんが未知数です。捕獲時の大パニックを見てるのと1回噛まれたので、キャリーに移すのが若干恐怖...。
朝の短時間にできるのか心配だったので、事前に頼りになる方に相談しました。その方は保護猫カフェの元店長さんで、いわば保護猫のプロ。この方にはことあるごとに相談させてもらいました。備忘録として手順を書いておきます。
1.頭にタオルをかぶせて不動化させ、そのまま洗濯ネットに入れる
2.洗濯ネットには頭から入れる。タオルが外れたらすかさず別のタオルを被せてとにかく視界を遮る
3.頭と前足が洗濯ネットに入ったら、ネットの開口部を床に沿わせて自分の方に引き寄せる(自然と猫が動いて奥に行く)
4.洗濯ネットのファスナーはチャンスがあればどんどん閉める
5.洗濯ネットのファスナーを少しだけ開けてタオルを引き出す(タオルが取れると暴れる猫や馬力のある猫はタオルをそのままでも良い)
6.洗濯ネットに入れたまま上からタオルをかけて簀巻きにしてキャリーin
※洗濯ネットの大きさは60×55cmが入れやすい
※猫と自分の手の間に必ずタオルがあるようにすると良い
これを参考にビワちゃんに挑んだところ、拍子抜けするほどあっさりキャリーに入れることができました。初めての挑戦が大人しい性格のビワちゃんで助かりました。キャリーへの移動はこれから散々やることになるので。
大きめのキャリーに3匹を無事に入れ終わり、いよいよ東京へ。電車の中で鳴かれたらどうしようと心配でしたが、ビワちゃんは気配を消し子猫たちはひたすらわちゃわちゃ遊び、たまにキャリーがゴト...ゴト...というだけだったので約2時間の移動もトラブルなく終えることができました。
mayabellさん宅に到着すると、親子を迎えるために色々と準備してくれていました。ケージの中にはふかふかの猫ベッド、たくさんのおもちゃ、そして1部屋丸々を親子の部屋として空けて待っていてくれました。
房総半島の田舎を離れて東京のど真ん中へ。生まれ育った場所にはもう戻れないけど、その寂しさを忘れるくらい良いご縁を見つけるからね。
ビワ一家にそう誓ってお別れしました。
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