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あの先にもこの向こうにもその裏にも表にもサービスとかものの向こうに、人人人。人がいる。


今年に入り、カスタマーサポートのような部署で働き始めた。
ような、とつけたのはカスタマーサクセスを目指すカスタマーリレーションズという部署であるからなのだけど、分かりやすくするためカスタマーサポートのような、にしている。


その横文字が好きな会社でカタカナの職につき働きもたらされた変化がある。
向こうの人を意識するようになった。できるようになった。


死んだ人のことじゃない。向こうの人を意識と言っても人間関係などではない。そんなものはいつも頭の中にへばりついて夜中の食いしばりに現れているのでできれば忘れたいものです。


30代ももう半ばになり、物を選ぶときこだわりが強くなってきた。
「メイドインジャパンの綿100」と主張しながら下着を選んでいた祖母の気持ちがわかるというか。


もう4年くらい愛用しているブラジャーがこれ以上洗濯したくないほど守りたい気持ちが湧いてきたので、同じものを買い足すことにした。
余談だが、私はブラジャーを手洗いすることなどは無い。絶対にない。ブラジャーを自分より同等に或いは上に置くことはない。

通販サイトを見ても、HPを見ても、目を凝らし読み取った品番を打ち込んでも同じものが出てこないので、とうとう問い合わせをした。
「このブラジャーをとても気に入っていますが同じもの、もしくは似たようなものはありますか?」
「残念ながら同じものはありません、似たものもありません。ですが、1番近いとすればコレですかね…!この部分の素材が近いのです。」


1週間くらい悩んだのち、PayPayがお得な日に購入した。

それはもうバッチリでルンルンと気分も胸も上がる2週間過ごしたのち、ふと「あ…お礼言ってないや…」と思い立ち、メールを送った。

「とてもよかったです、ご提案ありがとうございました!」

もちろん承知の上だ。
返信くれた青島さんは仕事だし、何ならテンプレートやマニュアルがあることも私は知っている。
ただ、会ったことのない私のことを想像し情報を集めメールを送付してくれたことは間違いないのだ。たぶん先輩に聞いたり社内システムにて調べてくれたと思うのだ。
そこには人がいる。 

もう一つ。
今ソファの購入を検討している最中で、目ぼしいソファがあり、ショールームで試せるかの問い合わせをしたのも最近の出来事で。
電話口の人は「あーそれはメールで問い合わせてください、ここは事務所なのでごめんなさい」とのことで「へいへいすみません、へいメールします〜」というクスンなときでもそれは発揮された。
こういったことにちょっぴり腹を立ててきた私だったけど微塵も腹が立たない。
人だ。向こうには人がいる。


私も仕事柄、お客様にメールをする。
テンプレートを貼り付けたり、アレンジを加えたりしてメールを送る。
相手の意向に沿うように、ときにはそぐわないことを詫びるようなメールを送る。言い回しに注意を払う。先輩から手直しが入る。
会ったことのない相手の、所属、情報、接続詞、言葉で、相手のことを想像し打ち込んだ文章の送信ボタンを押す。
そこには、私がいる。


ソファはショールームには置いてないと返事がきた。
「在庫を調べましょうか?」と言ってくれたが
「座り心地を試してみたかったので在庫は大丈夫です。」とお断りを送付した。
「座面はしっかり硬めです、実写の画像があったので送ります、参考にされてください!」
と添付で写真が送られてきた。


やっぱり向こうには人がいる。ビンビンに人を感じる。


提案してもらったブラジャーは本当にいい感じで、4年前のベテランブラジャーもようやく肩の荷が下ろせますよ、ってホッとして前よりくたびれて見えるほど。だが、肩紐を引き縮めます、まだまだあなたには活躍してもらうつもりです。

ブラジャー、ソファ、メール、あの本、この冷蔵庫、ポストのチラシ、ペラペラのマグネットにも、表にも向こうにも前にも後ろにも中にも人がいる…

そう思うとわたしはやけに楽しくなるタイプだ。


・・・・おしまい・・・・


おまけ。

そうして物が捨てられなくなり、捨てるときキスするタイプです。
人間と別れるときは、もうキスはいいだろうというくらい疲れている場合なので、特にキスはしません。
どこにでも人はいます。
あなたと私は、1人しかいないんだけどね。

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