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映画評「NOPE/ノープ」/というより、映画館にいた人の話

私は先日、「NOPE/ノープ」という映画を観ました。

予告を見る限り、UFO襲来ものか最高だぜ、と思っていたのですが、これが非常にへんてこりんな映画。

いわゆる、「宇宙人侵略」系のハリウッド底抜け超大作でないことは、事前に予想もしていたし、話が始まって、それは確信に変わる。
がしかし、時間がどんなに経っても、一向に本筋が現れてこず、ほぼ全編に渡って、「なに見せられてんだこれ」という戸惑いにまみれる映画であります。

本筋らしきものがチラと現れ、「あーそういう映画なのね」と思ったら、途端に煙に巻かれてまたよくわかんない割に、やたらとスリリングな展開が始動。
いいぞいいぞ、その調子で大爆発とか起きないかな、と思いきや、絶妙にツボを外しつつ、また予想もつかない展開になだれ込んでいく。
そういう意味では、正体がわかるようでわからない、まさにUFOのような映画です(うまいこと言ってるね、あたし)。

上映が終わって冷静になり、素因数分解していけば、いろんな映画が混在しているように感じられるのですが、上映中は、その繋ぎ目が独特かつシームレスなので、「なんじゃこれ」感が強い。
どう味わってよいのやら、初めてウニを食べた時のような、そんな映画です。

そんな感じで、映画の登場人物たちがUFO事件に巻き込まれている傍ら、ちょっとした事件が私にも起こりました。

上映中、ふと気付くと、私は最後席通路側の席だったのですが、映画館の真ん中あたりの通路で、女性が立ちすくんでいる。

「トイレに行くのかしら。トイレに行こうと思ったら、面白そうな展開に突然なっちゃって、立ち止まってしまってるのかな」
なんてことを思ったのですが、どうにもおかしい。

トイレに行くのであれば、座席を立ったら、すぐに段差を降りて出口に向かうはずなのに、その女性は、上に登ったり下に降りたり、最後席後ろの通路を抜けて、ぐるりと回って、一周。
その後も、立ち止まったり歩き回ったり、映画館内をぐるぐると周回。

私は後ろからその模様を眺めながら、兎も角もなんだあいつと思っていた。

スクリーンでは、いまだかつて見たことがない、ちょっと気を抜けば意味不明な物語が語られており、そしてスクリーンの外では、謎の女性が映画館を徘徊している。
きょろきょろと顔を動かしているので、忘れ物でも探しているのかとも思ったが、彼女の視線は、床というより、映画館全体に向けられている。
何を探してるんだろうか。

こええ。
興味はあるけどお知り合いにはなりたくない、そんなUFOのような女性である(またまたうまい)。

女性は、何週目かの周回を終えると、私の左肩後方、1.5mくらいの位置で立ち止まった。

どうにも集中できないので、私はスクリーンの出来事そっちのけで、その女性をチラチラとみていた。
狂人の類かしらんとか思ったが、身なりもしっかりしているし、そんな感じはない。
警戒したが、手ぶらなので何か凶器を持っているわけでもない。
薄暗いので判然とはしないが、表情には陰はなく、いたって真摯に悩んでいる様子である。

幽霊でも見えているのか、それともこいつが幽霊なのか・・・

すると、私の視線に気付いたのか、彼女は私のほうに更に近付いてくる。

最悪ぶん殴られたりするかもなと思っていると、彼女は私にこうささやきかけた。

「あのー・・・出口ってどこでしょうか?」

そっちかい!と通常であればツッコミたいところだが、殴られずに済んだ安心感が勝り、
「一番下に降りて、左にいけばありますよ」
と小声かつジェスチャー付きで説明すると、彼女はその通りに歩き始め、外に出たのであった。

スクリーンでは引き続き、UFOスペクタクルが発生している。

でも僕は、先ほどの女性のことを考えざるを得ない。

出口どこですか?って、いやいやお前そもそもどこから入ってきたんだよ、てことだし。

茶化すことでは決してないが、何か障害があったりするような雰囲気や口調でもなかった。

てことは、どうすれば1時間くらい前に入ってきた映画館の出口を忘れてしまうんだろうか。
あれか?「メメント」的な、15分で記憶を失ってしまう系の奴か?いやそんな人はそもそも映画なんて観ないだろう。

もしや・・・

「ターミネーター」よろしく、タイムスリップしてきた、未来人なんじゃないか?
原理はわからんが、未来で装置に乗って、パッと起きたら、そこは薄暗い映画館。
もしかしたら、未来人は、「これが、、、えいが?教科書でしか見たことないわ」「こんなことしてる場合じゃないわ、私は早く事件を止めないといけないのに」とまぁ、そんな感じだったのかもしれん。
もしくは、タイムスリップの衝撃で、記憶を多少喪っちゃってたりして。
そう考えると、目が覚めたらいきなり薄暗い場所にいて、かつ出口が不明であるという状況は、彼女的にとっても恐怖体験だっただろう。

がんばれ未来人。暗黒の未来のきっかけとなる、悲劇的な事件を防いでくれ。デデンデンデデン!

とか思ってたら、彼女はその後普通に座席に戻ってきて、再び映画を観始めた。
てことは、ただトイレに行きたかった人だったってことですね、名探偵ばりの推理をすると。

やっぱなんだあいつ。

そんなことにあれやこれや考えていたら、もともとわけわからん作りの映画なのに、一切の集中が削がれ、本筋を見失ってしまいました。

なので、もう一回観ようかなと思います。

理解していないので強くオススメはできないのですが、良かったらご覧ください、「NOPE/ノープ」。
今まで観たことがないタイプの映画であることは、間違い無いです。



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