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パンで呑みたくなるマンガ、パンで呑ませてくれる店

フォローさせていただいている方の記事を読んで、ふつふつとマンガが読みたくなった。

前になんだかんだ紙の本が好きという記事も書いたのだけれど、巻数が多くて場所をとるマンガに関しては電子書籍に軍配が上がるなあと感じている。私が宮殿みたいな家に住む大富豪だったら、紙でマンガを買い続けるかもしれないけれど。

特にお酒をテーマにしたマンガの感想には共感しきり。
岩盤浴をしながらワカコ酒をだらだら読んでからのビール、なんておいしそうなの!!

そんなわけで読み返したのが、クラフトビールの魅力を描いた「琥珀の夢で酔いましょう」。

■パンで呑みたくなるマンガ

ジャンルはたぶんというか当然グルメマンガなんだけど、単なるグルメマンガじゃなくて、いい大人がいい大人なりの悩みも抱えつつ、ぶつかったり連帯したりしてる姿が優しく描かれているのがいいなあと思う。舞台が京都だからかな、「大人の青春群像劇」という様相で、読んでいると元気がでる。

もちろん、思わず喉が鳴るクラフトビールの描写も満載。実在の銘柄がどんどん出てくるので、読んだ後は実際に飲んでみたくなって、オンラインストアを探してしまう。
他の飲み物でよく使われる概念を使っておいしさが説明されているのがわかりやすくて面白い。ワインの印象が強い「ペアリング」とか、コーヒーでよく使われる「フレーバー」と「アロマ」とか。

そうしてこれでもかとクラフトビールの魅力が語られる中で、思わず膝を打ったのが主人公のひとり・剣崎七菜が提唱する「ビールは飲むパンでありパンは食べるビールである」説。両者は同じく小麦を主原料としている(しかも考えてみると発酵という過程を経るところも一緒)のだから、合わないわけがない、というわけ。
ビールのつまみと言えばソーセージやら唐揚げやらはたまたナッツなんかが定番で、炭水化物をあわせるとしたらポテトサラダやポテトフライ、つまり穀物ではなく「芋」だと思い込んでいた私であるので、「パン×ビール」は完全に盲点。でもピザとビールの相性を考えたら、確かに合わないわけがないんだよなあ。
なによりマンガの中の、パンとビールのピクニックが完全に楽しそうなのだった。日本一パンの消費量が多い(=おいしいパン屋の数も多い、といってしまっていいのではないかと思う)京都で欲望のままにパンを買い込み、晴れた公園で食べる! ビールと一緒に!
これをやらずに人生と言えようかと思って、中之島公園で実践したら完全にちかごろ若人が言うところの「優勝」だった。皆さまもぜひ。

■パンで呑ませてくれる店

「パンでビールを飲む」、つまり「パン=酒のあて」という方程式を脳にインストールした人間にとって最適なパン屋が大阪にある。
ここだ。

飲食店激戦区である大阪・谷町六丁目タニロクエリアに居を構えるタニロクベーカリー・パネーナ、コンセプトはずばり「お酒に合う大人のパン」。なんてこと。

転職で岡山から大阪に越してきたとき、しばらく谷町六丁目に住んでいた。家賃の高さと(夫の)通勤時間を苦にして早々に引っ越してしまったのだけれど、もう一度その選択をやり直せるとしても多分同じ場所に住むと思う。だって違う場所を選んでいたら、このお店に出会えなかっただろうから。
引っ越してからも、近くに寄る用事があれば必ず立ち寄っている。

3~4人入ればいっぱいになってしまいそうなこぢんまりした店内には、壁際ぐるりに所狭しとお酒のあてになるパン=あてパンが並んでいる。種類がたくさんありすぎて、どれもおいしそうで、選べなくなるのだけれど、結局いつも食べたことのある、気に入っているものを買ってしまう。つぎこそは別の種類のものが食べてみたいと意気込んでまた訪れて、そしてその繰り返し。きりがない。

特に必ず買う! のは、看板商品でもあるくるみパンだ。

しっかりしたきつね色の表面から想像されるハード系の食感に反して、いざ割ってみると中は真っ白もちもちのリッチな質感。そこに惜しげもなく、歯触りのよいくるみがどっさりと!
よくあるくるみパンは地のパンが甘めなことが多いイメージなのだけれど、パネーナのくるみパンはしっかり塩味が効いている。さらに特筆すべきはこれでもかと使われたバターだ。公式インスタグラムに載っている製造過程の写真を見ると、焼く前の生地には大量の角切りバターが練りこまれていることがわかる。なんてことをしてくれるんだ!
逸る気持ちを抑え、スライスしたものを軽くトーストすると、ふわりとバターの匂いが立ち上る。口に含むとじゅわっと乳製品の深い風味があふれ出て、小麦の香りと絡む。そこにアクセントとしてカリッとしたくるみの食感と香ばしさが加われば、お分かりですね、もう、呑むしかない。鉄板はビールか白ワイン、軽めの赤ワインも合う。

いらぬ諍いの種を生まないよう、夫と私の分、かならず二つ買うパンだ。


もうひとつ、ついつい手に取ってしまうのが、「栗とバターとホワイトチョコ」(つくづくバターに弱いのだ)。

これもくるみパンと同じく、噛むとじゅわっとバターがあふれ出すリッチな食感だ。違うのは、とろけるように甘いパンだということ。
生地に練りこまれているホワイトチョコは、それほど「ホワイトチョコだよ!」と主張をしてくるわけではないのだけれど、生地をもちもちあまーいミルキーさに仕上げるのに一役買っている。
そして贅沢に加えられた栗! ほっくりと蒸しあがった栗の周りの生地は、色素を移してそこだけ紫がかった淡い茶色に染まっている。栗の風味とホワイトチョコの甘みが染みこんだ、しっとりを超えてとろりとした部位は、栗本体よりご馳走かもしれない。
赤ワインやこっくりしたラム、香りのいいウイスキーなんかと合わせて、秋の夜長に食べたいパンだ。

ほかにも豚肉のうまみとパリパリ小気味いい生地の食感が楽しめる「ヤマトポークベーコンのバトン」や(自家製ベーコンがほんとにおいしい、これ単体でも売ってほしい。ぜひともビールと合わせて)、

ボリュウムたっぷりで迫力のあるバインミーなど(これもパンはもちろん、ぎゅうぎゅうに詰められた牛の煮込みやなますが本気でおいしい)。
何を食べても全部おいしい。

そして今ひそかに狙っているのが、2号店である「パネーナ うつぼ店」だ。名前のとおり靭公園の至近にあるこちらのお店は、なんと18時以降立ち飲み屋に早変わりするとのこと。
そしてあてパン食べ放題! ぜひとも行かねば。


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