わたしを成仏させる旅
私の右肩には、生霊がくっついている。最近になって気づいたことだ。
異動が決まってから、年次が少し下の同僚に、キャリアについての相談をもちかけられることが続いている。
今の会社は社員のほとんどがプロパーから構成され、異動や配置も通例に従って行われることが多い。そんな環境で、中途採用(=転職歴あり)かつこの度社内公募制度を使って希望の部署へ異動する、という私の経歴は、どうやらずいぶんと「キャリアビジョンがはっきりしている」ように見えるらしかった。
抱えている悩みは十人十色だ。
やりたいことがわからない。
希望のキャリアにチャレンジしたいけど、踏ん切りがつかない。
今の仕事に満足できない。
私が身を置く会社は、仕事はこのままでいいのか、漠然とした不安がつきまとって離れない。
一応それなりの期間、人事の仕事をしているし、その流れでキャリア形成に関する勉強もしてきた。なにより自分自身も同じようなことに悩んできたから、持ちかけられる相談にはそういった知識や経験から、ある程度打ち返すことはできる。それに、こういった話はこちらがアドバイスをするというよりは、話していくうちに相談者が答えを見つけることが多いものだ。
それなのに、話してよかったです、と言われるたび、なぜかどこかで後ろめたさのようなものがふつふつと湧きおこる。
その後ろめたさの理由に気づいたのは、同じく中途入社の先輩――Kさんとする――が誘ってくれた、酒席でだった。
せっかくだから大阪を離れる前に大阪っぽいものを、という理由で選んでくれた串カツ屋で、旺盛な食欲を見せながらKさんが言う。
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