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東京ひとり旅の記録①|あたらしいスカート、ルーブル展、巨大なハンバーガー

二泊三日で東京へ行ってきたので、その記録。
憶えておきたいことが多すぎたので、かなり長くなる予定です。こまめに目次を置いていくので、お好きなところをつまみ食いして読んでください。

1.旅支度

1年の中でおそらくいちばんの繁忙期、有休をめざしてばたばたと仕事を片付ける。どうしても3月のうちに東京に行かねばならぬ理由があったのだった。
ひょっとしたら旅先にPCを持って行かねばならぬのでは……? という恐ろしい考えも一瞬頭をよぎったが、なんとか目処がついて退勤し、一息つく間もなく荷造り。

■荷物を軽くしたいという話

ところで皆様は旅行をする場合、「荷物を少なくする工夫」をどの程度されるでしょうか。私は今までは化粧水だろうがなんだろうが割と家で使っているものをそのまま持っていきがちだったのだけれど、今回は直近であらゆる基礎化粧品が底をつきて買い替えたてだったため、フルサイズそのままだとかなり荷物が重くなるな……? と気づいたのだった。
そして今回駆け込みで調達したのがこちら。

化粧水、乳液、メイク落としなどがちょうど二日分くらい入る容量のプラボトル。柔らかい素材なのでチューブみたいに中身を押し出して使えるのが便利だ。
ただ、レビューにもある通り中身を充填するときに口が狭くてちょっと困った。化粧水など粘性のすくない液体は問題ないけれど、ぽってりした化粧落としジェルなんかは普通に注入しようとするとなかなか入ってくれず……清潔なトレイに一旦絞り出して、スポイトの要領で吸い取る、みたいなやり方でなんとか事なきを得る。

今使っているヘアオイルは香りも使用感も大好きなんだけど、ガラスのジャーに入っているので旅先に持っていくにはあまりに重い!
というわけで持ち運びが楽そうなヘアオイルを検索して適当にこちらを購入。レビューを見て、100均で売ってるのか……と思いつつ時間がなかったためそのままAmazonで買ってしまった。
毛先がなんとなくまとまればいいや、と思っていたのだけれどいざ付けてみると予想以上に髪がさらさらになってよい。人工的な強い香りがするので、高校生くらいに戻ったような懐かしい気分になった(シャンプーの香りを残すことに必死だったあのころ……)。苦手な人は苦手だと思う。

他の人の旅支度のこだわりや工夫を読むのが楽しくて好きだ。雑誌でよくやっている「鞄の中身特集」強化版って感じ。

↓楽しくて参考になる、大好きなお二人の「旅行鞄の中身」

■おニューのスカートで春の旅に出るよ

旅先の予定ももちろん楽しみだったのだけれど、今回地味にわくわくしていたのが、CABaNのスカートで出かけるチャンスが巡ってきたぞ、ということだ。

このツイートのわりとすぐ後に左側のペンシルスカートを買ってしまったはいいものの、私のふだんの服装からするとかなり奮発した買い物でもあったため、「最初にこのスカートでお出かけするタイミング」をはかりかねていたのだった。
そこに東京旅行の予定、しかもその直前から急に気温が上がって当日はぽかぽか陽気の予報! これはいくしかないね。

着替えに一応別のボトムスも持って行ってはいたのだけれど、結果として2泊3日の旅程をすべてこのスカートで過ごしてしまった。
繊細でリアルな草花の柄がとにかく素敵で、ふと下を向いたときに目に入るととても気分が上がる。やわらかいシルクの質感もすばらしくて、あたたかい日差しを浴びながら歩いているときにふくらはぎにひやりとした(それでいてとても優しい)布がふわり、ふわりと触れるのを感じるたび、しあわせな気持ちになった。
手入れがやや大変そうなのだけれど、長く大切に着ていきたいなと思う。

2.ルーブル美術館展 愛を描く(国立新美術館)

出勤するときよりも早起きをして朝7時15分新大阪発の新幹線で東京に向かい、ホテルに荷物を預けて降り立ったのが六本木。新国立美術館のルーブル美術館展に行くためである。
六本木、東京にいたころもよく行ってはいたのだけれどだいたい森美術館と国立新美術館目当てで、いわゆる東京カレンダー的な港区夜遊びとは光年単位で距離を置いていたのだった。今回の旅程でもこの2つの美術館にはいく予定で、ひとってなかなか変わらないものだなあ、と少しおかしくなる。

で、ルーブル展。

「愛」というテーマとベビーピンクのテーマカラー、メインビジュアルの絵画もラブリーでピュアな雰囲気だったのですっかり騙されたのだけれど、いざ展覧会に足を踏み入れてみると結構様子が違った。

なんてったって初っ端の展示室からしばらくギリシャ神話主題の絵画が続いてユピテルやサテュロスがあれやこれやしているところを散々眺めたあと、キリスト教の宗教画を挟んでオランダ17世紀の風俗画やロココ時代の雅宴画になだれこんでいく。宗教画のコーナーでは放蕩息子や聖母子像といった「親子愛」をテーマにした一角もあったものの、そのカテゴリの中に「ローマの慈愛」が紛れ込んでいたりして(元になった逸話の崇高さはわかるんだけど、現代人からするとこれを好んで描こうとする画家や手に入れたがる貴族の趣味にはちょっと深読みした目線をむけちゃうよね)、崇高な感情としての愛というよりはもっと生々しくてどろどろした情愛を描いた絵が多い印象だった。

ふるい時代の絵画を見に行くと自分の固定観念に驚かされることがあるのだけれど、この展覧会もまさにそうで、「愛」というあいまいな単語にいかにおきれいで清潔なイメージを持っていたか気づく。

ぱっと見やわらかな光や鮮やかな色彩がふんだんに使われた美しい絵なのだけれど、よく見るとそのなかに暴力や狂信、性愛の気配が濃厚に漂っている、みたいな作品が多くて何度か休憩しながらでないと全部見られなかった。作品数も多かったし、1枚1枚のエネルギーがすごくて、でもそのすべてがねっちり見ないと後悔しそうな美しさで。
すごいものを見てしまった、という感じ。京都にも巡回するようなのでまた行きたい。

以下、特に印象的だった作品をいくつか。

■まなざす者、まなざされる者

「だれかを求める者の眼差し」をテーマにした部屋があって、とても好きだった。

ニンフとサテュロス(アントワーヌ・ヴァトー)

暗い背景に白く浮き出るニンフの裸身と、サテュロスの筋骨隆々とした浅黒い肌との対比が「官能!!!」という感じ。眠る女とそれをのぞき見する男、という組み合わせを見るとどうしても川端康成の「眠れる美女」を思い出してしまってぞくぞくする。

これに対して「ディアナとエンデュミオン」は男女逆で、アルテミスが恋した青年・エンデュミオンの寝顔を見つめている、という構図なのだけれど、エンデュミオンの肢体がかなり女性的なのだ。少女のようにきゃしゃなディアナの姿と一緒に描かれていると、少女漫画の世界のよう。まなざされる者、という主題の特性なのかもしれないと思うと興味深い。

そのすぐそばにあった対の絵、「眠るアモルを見つめるプシュケ」と「ウルカヌスに驚かされるマルスとヴィーナス」は、丸いのぞき窓のような形もあいまって絵の中の人物の視線だけでなく「それを覗き見る自分の視線」も意識してどきどきしてしまう。
そして絵の美しさもさることながら、描かれた当時に飾られていた場所がすごかった。キャプションを読むと、ルイ15世が注文してポンパドゥール夫人の寝室に飾らせていたそうで。夫婦愛を描いた絵と不倫の現場を描いた絵を対にして注文し、それをよりによって自分が通っている愛妾宅の寝室に置くという所業……さすが最愛王、パねぇな、と思って思わずメモしてしまった。

■倒錯する美

西洋画の中に東洋のエッセンスが混じっている、という絵にどうにも弱い。

ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカとパオロの亡霊(アリ・シェフェール)

最後の展示室にどーんと飾られていたこの絵を見た瞬間、動けなくなった。生者であるダンテたちは背景に暗く沈み込み、地獄で責め苦を受ける一組の恋人がスポットライトを浴びたように白く浮き出るというドラマチックな構図。パオロの苦しげによじった首のラインから、フランチェスカの腰へと続く流れるような曲線に目が離せなくなる。
別に扇や着物が描かれているわけでもないのになんとなくジャポニスム的な雰囲気を感じるのは、フランチェスカが長くまっすぐな黒髪を持った姿で描かれているせいだろうか。黒々とした髪が流れてけぶる様子と、白い肌とのコントラストを見ると、自動的に鏑木清方の「妖魚」や島成園の「おんな」なんかを思い出してしまう。

noteに載せるのをちょっとためらう絵なのだけれど、「褐色の髪のオダリスク」もよかったな。
アラビアンナイトをテーマにした映画を観たばかりだったので、映画の中のシーンのあれやこれやを思い出してときめいてしまった。

■花とクピドにごまかされる

こうやって書いていくとなかなかヘヴィーな題材の絵ばかりだった気がするのだけれどそんなことはなくて、そういう絵を続けて見てちょっと気疲れしてきたころに清涼剤のように立ち現れるのがいたずら好きのクピド(展覧会ではアモルの呼び名で統一されていた)たちを描いた絵である。

アモルの標的(フランソワ・ブーシェ)
月桂冠を掲げている子の悪い顔を見てほしい

いたずらで人間を恋に落としたり狩りをしたり楽器を奏でたり(「音楽を奏でるアモル」で仲間がかぶっているいかついお面におびえるアモルがめちゃくちゃ可愛い)、ゼウスの武器を盗んだりお母さんに怒られて優しいデメテルの腕に逃げ込んだり、やりたい放題やっているアモルのかわいさとだいたいその背景で咲き誇っている花の美しさ。
そうだよな、退廃的な性愛や死ぬの死なないののディープな愛や軽薄で浮気な愛や崇高な親子愛やをこの会場でいろいろ見てきたけれど、かわいいものを見てきゅんとするこの単純な心の動きも「愛」で別にいいんだよな、と妙に納得して会場を後にした。

そうそう、HPでグッズを確認していたところ、フェイラーとのコラボハンカチが出るそうで!
フェイラー好きのnote友達さんのお顔(正確にはアイコン)が浮かんで、にこにこしてしまった。

3.でっかいハンバーガーを食べる

時間をかけてすごいエネルギー量の絵を見たせいか空腹の頂点に達していたので、食べ物を求めて東京ミッドタウンへ。
良い感じのハンバーガー屋さんへたどり着く。

自分で自由にカスタムできるハンバーガーが売りらしく、バンズからパティからトッピングから、すべて好きなものを選べるとのこと。
スマホで注文できるようだったのでQRコードを読み込んで、そこから5分くらい悩んでしまった。

こういうとき、自由な発想で他のお店では食べられないようなカスタムをできるような人がとてもうらやましいなと思う。
私は万が一にもおいしくないものは食べたくない、かといってこういうお店でレディメイドの商品(いくつかあった、おいしそうだった)を頼むのももったいない、というような守りに入った気持ちで、すべての選択肢において無難なものを選んでしまった。パティはビーフ、バンズはブリオッシュ。チェダーチーズとレタス、トマト、オニオン、ピクルス、アボカドをトッピングして、ソースはアボカドに合わせてアイオリで。
いろいろおしゃれな野菜があったり、チーズの種類もすごくたくさんだったり、ソースを何種類も選べたりしたので、次行く機会があれば下調べをして臨みたい……。

で、出てきたのがこれ。

風景画か?

10センチ以上ありそうな厚みのバーガーと、細くてカリッとした熱々ポテトの山がやってきた。
うわわ、と興奮して写真を撮った後、途方に暮れる。バーガーが分厚すぎてどうやって食べたらいいかわからず、とりあえず10本くらい連続でポテトを食べた(なぜならポテトは食べ方がわかるから)。フォークとナイフはついていたもののそれできれいに食べる自信はないし、よくあるバーガーをくるんで食べられるような袋状のナフキンも見当たらないし……とポテトをポリポリやっていると、カウンター席の隣に座っていたおじさまがバーガーをむんずと掴むのが視界の端に入って勇気をもらう。テーブルの上に置いてあるチラシにも「さあ、思いっきりかぶりつけ!」的な煽り文句が書いてあったし、お望み通りかぶりついてやろうじゃないの。

と思って意を決してむんずとつかみがぶりとやったら、円形のカウンターの向こうで私とまったく同じムーブ(とりあえず写真を撮り、首をかしげ、ポテトをひたすら食べる)をしていた妙齢の女性も覚悟を決めたようにバーガーを手に取ったので少しおかしかった。私も彼女に勇気を与えられたかしら。

ほの甘いブリオッシュも新鮮な野菜もおいしくて、表面がカリカリでぎゅむっとした噛み心地のパティは噛み取ると内側が薔薇色! 生焼けとかではなくきちんと火が通った、上等なローストビーフみたいな色。
ひるむほどの量だったけれど、ぺろりと食べてしまった。
食べながらふと、昔読んだ「ララバイ・フォー・ガール」という短編漫画を思い出した。あの話のなかで描かれる、自由の象徴としてのハンバーガーがとても好きだった。漫画の主人公のように、大人になったものだなあ、と頭のなかで呟いてみると、とても愉快な気分になった。

4.ミッドタウンをうろつく

お腹もくちくなったので、ミッドタウンの中を散歩。
とらやで行われていた、食品サンプルの展示に大興奮する。

うおお
うおおお

ビールを飲んで少し眠くなったので、21_21へ続く芝生の道のあたりでベンチに座って休憩した。

展示をやっているようだったので、ついでに見に行く。

オリジナル、という言葉の解釈が少し難しかったのだけれど、多くのプロダクトへ影響を与えたデザインを特集する、ということだったと思う。

展示の中に鋼管を使ったコートかけがあって、ステンレス棚なんかのことを思うとそれは今ではやや陳腐なものにも見えてしまうのだけれど、当時はすごくモダンで革新的なものだったんですって。ほかにもこれちょっとおしゃれな雑貨屋さんで売っているのでは?みたいななんてことのないソルト&ペッパーが、実は1950年代のものだったり。まっ白なお皿って今では全然珍しくないんだけど昔は未完成とみなされていて、それを覆した白磁の製品がこれです、みたいな説明の食器が展示されていたり。
単におしゃれなもの、かっこいいものを集めているわけではなくて、現代の生活に根差しているデザインのまさに「オリジナル」を見ている、という体験が面白かった。

影まですてき
完成版は「シンキングマンズチェア」という名前で展示されていたのが可笑しかった
打ちっぱなしコンクリとの相性の良さ
例のソルト&ペッパー

そんなこんなで2泊3日の1日程目は終わり。
書きたいことが多すぎて、はたして全日程分書き上げられるのか不安に思いながら、次回に続きます。



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