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【詩】鼻歌

鼻歌が聞こえる
トイレ掃除の音とともに、それは聞こえる
心が弾むからではなさそうだ
思いがけず、会いたい人に会えたからでもなさそうだ
今日が、待ちに待った約束の日だからでもなさそうだ

鼻歌が聞こえる
洗濯物を取り込む音とともに、それは聞こえる
頭の中を渦巻く嫌悪を必死に振り払うような
追いかけてくる記憶から、一心不乱に逃げるような
怒りと悲しみを見ないでいるためのような

鼻歌が聞こえる
大根を包丁で輪切りにする音とともに、それは聞こえる
鼻歌が聞こえる
それはどんどん大きくなる、狂気のように
それはどんどん大きくなる、何かに取り憑かれたみたいに
 



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