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はじめてタイムマシンに乗った日

池袋駅東口を出て、ドン・キホーテ近くの路地裏にタイムマシンはある。東京の大学に進学した理由の半分は、このタイムマシンだ。

まだ、都心にしか設置されていないタイムマシン。二年前に友達からその存在を知り、ずっと夢見てた。

聞いた通りの場所は、自動販売機が延々と立ち並ぶ路地裏。一番奥に歩いていくと、古い電話ボックスのような物が建っている。扉には今にも消えてしまいそうな文字で「Time Machine」と書いてある。確かにここだ。

取っ手を掴んで、引いたり押したりしても鍵がかかっているようで開かない。よく目を凝らすと、千円札を入れる場所がある。なるほど、入る前にお金を払うのか。

期待の高揚感に震える手で、千円札を入れるとロックの外れた音がした。中は狭く暗い。椅子が一脚あり、そこに腰を掛け扉を閉める。

辺りは完全に暗闇に包まれた。程なくして低い振動音とともに、壁一面が徐々に点灯する。

「約六五〇〇万年前、人類は誕生しました。私たちは進化した頭脳で科学、文化を作りあげ……」

割れた女性のナレーションに、粗雑な3DCGが二十分ほど続く。映像が終わり、スチーム音が鳴る。謎の煙が首もとまで来たところで意識が遠退いた。

気がつくと、タイムマシンのなかは灯りがついていた。腕時計で時間を確認すると、タイムマシンに乗った時間で針が止まっていた。

扉の取っ手に手をかけようとすると、扉がガタガタと動く。外の人間は諦めたようで、扉が静かになる。

自動販売機にお札を入れる音が聞こえる。いや、違う。それに呼応するように、タイムマシンの扉のロックが解除された。

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