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カナダの映像業界で働くには

この記事にビザの出してもらいやすい職種として挙げてありますが、もう少し詳しい話を...とリクエストを貰ったので…


このポスト内では、便宜上 VFX・映画・ゲームをまとめて「映像業界」と呼ぶことにします。

「映像業界」は幅広い

ビザが出やすいのは技術職

まず、日本における「映像業界」というと「映像制作プロダクション」「映画配給会社」「テレビ局」「ゲーム会社」「アニメ会社」等をみなさん思い浮かべるのではないでしょうか。

この中でもカナダでビザの出やすい職種は技術職になります。
いわゆる「アーティスト」「クリエイター」「デザイナー」もしくは「プログラマー」を指します。

映像制作には三段階の過程がある

日本でもハリウッドでも、映画やテレビドラマ、CMやミュージックビデオの制作過程は大きく分けて三段階に分かれています。

  1. プリプロダクション

  2. プロダクション

  3. ポストプロダクション

企画や予算の作成、キャスティングを行うのが「プリプロダクション」、撮影や音声などいわゆる「現場」に携わるのが「プロダクション」で、出来上がった画像を編集したりするのが「ポストプロダクション」です。

この中でもカナダでの就労ビザが出やすいのは「ポストプロダクション」における技術職になります。
「プリプロダクション」「プロダクション」にもそれぞれアーティストが存在していますが、ユニオンに参加するのが条件だったりとややハードルは高めになります。

どんな技術職があるのか

コンセプトアーティスト
キャラクターや世界観をデザインする仕事です。

ストーリーボードアーティスト
絵コンテを描く仕事です。

マットペインター
背景などに使用する絵を作成する仕事。
DMP=デジタルマットペインティングなどと呼ばれたりもします。

モデラー

CGソフトウェアを駆使してモデルを作成する仕事です

リガー
モデラーから上がってきた3Dモデルに骨組みを入れる仕事です。スタジオによってはエフェクトアーティストやモデラー、アニメーターがこの作業を担うこともあります。

アニメーター
手書きの2Dアニメーターと、CGソフトウェアを駆使して3Dモデルに動きをつける3Dアニメーターが存在します。

トラッカー
CGを実写に合成する際に、専用ソフトウェアを使用してマッチングさせるためのトラッキングを行う仕事です。

ライター
英語では"Lighter"で文字通り光を取り扱います。上がってきたCGモデルに専用ソフトを使用して照明を当てる仕事です。

エフェクトアーティスト
爆発や炎、水や建物倒壊時の破片などを専用ソフトウェアでシュミレーションする仕事です。

コンポジター
合成をする仕事です。下位互換に「ロト」「ペイント」という背景にある余計なものを消したりする職種があります。

エディター
上がってきた映像を編集する仕事です。

カラリスト
色を最終調整する仕事です。

パイプライン・テクニカルディレクター
アーティストというよりはプログラマー寄りですが、社内全体のパイプラインを管理したり、トラブルシューティングする立ち位置になります。

応募条件

上に挙げた技術職への就職を狙う場合には日本でも、カナダでも自分の作品をまとめた「デモリール」「ポートフォリオ」の提出が必須となります。

※日本国内の場合は新卒枠での応募は伸びしろを考慮しての採用になることが多いので、そこまで専門性・クオリティの高いものでなくとも採用のチャンスはあります。

デモリール・ポートフォリオの作成方法

独学で作品を作り、それをまとめたデモリール・ポートフォリオで応募することも可能ですが、そういった成功例に私は今のところ出会ったことがないです。

カナダで採用されている人たちは日本国内で働いていた経験があるor関連した学校を卒業している、というケースがほとんどです。

結論から言うと、専門性のある学校に短期でもいいので通うことをオススメします。また、はじめからカナダでの就職を狙うのではなく、日本で経験を積んだのちに応募すると成功率が上がりやすいです。

とりあえず業界に入ってしまいましょう。

日本人にはモデラーとアニメーターが多い

日本人に多いのはモデラーと3Dアニメーターの二つですね。

何故かというと、この二つの職種は他業種に比べると歴史があるからです。この二つをメインに教える専門機関は他業種に比べて多く、世界的に見てマーケットに存在しているアーティスト自体の数も多いのです。

私の知る限り、日本からやってきた若い日本人アーティストはほぼモデラーor3Dアニメーターでした。
どちらもアニメーション・実写・ゲームとどの業界でも活躍できます。

難点としては入れ替わり率が低いので募集がない時は全くないことと、アーティストの供給が安定しているため、他業種と比べて給与は低めの設定なことでしょうか。

専門性を極めることで自らの価値を上げていくことは可能です。
モデルに使用するテクスチャー作成専門の「テクスチャーアーティスト」や生き物の3Dモデルに毛を植える専門の「グルーマー」などなど…

歳のいった日本人はコンポジターが多い

逆にやや歳のいったアーティストではコンポジターが多いです。

コンポジターは教える専門機関の数がまだまだ少なく、学校が皆無だったころから活躍しているようなシニアレベルの人たちに話を聞くと「もともとはアニメーターになりたかったけど、勤めていた会社でコンポジターの仕事を兼業していたらいつの間にかそっちになっていた」というようなパターンが多いです。

しっかり学びたい場合はカナダにいくつか専門学校があるので、そちらへ通われることをオススメします。

コンポジターはどんな作品でもほぼ必須な職種なので就職のチャンスは他よりも高いです。緊急性の高い仕事が多いので給与も高い傾向にあるのですが、契約期間が短いことが多く、残業が非常に多いことがほとんどです。
最短契約ですと、友人のCM制作のために雇われた3日日契約なんてのがあります。

アニメーション・実写では活躍できますが、ゲーム業界では必要とされることはレア。

その他、狙い目な技術職

基本的にどの技術職でも、カナダ人だけでは人手が足りていない状態なので狙い目です。

中でも狙い目なのは

  1. マットペインター

  2. エフェクトアーティスト

  3. ライター

  4. カラリスト

マットペンター
私の働いたM社ではジュニアにはビザを基本的には出さない方針でしたが、マットペインターのみは例外で世界中からジュニアにビザを出していました。フォトショップだけではなく、Mayaなどの3Dソフトが使用できるとかなり重宝されます。

エフェクトアーティスト
使用ソフトウェアが比較的新しいので、まだまだ人手不足です。多くのスタジオで使用されているHoudiniの体験版は無料でダウンロードすることが可能。
日本ではエフェクトを特化して教えている学校はないので、しっかり学びたいならばカナダにある専門学校に通うことをオススメします。スタジオにもよりますが、リストアップした職種の中では一番時給が高い傾向にあります。スタート時の給与から高めの設定なので、就職さえできればすぐに学費の元は取れます。

ライター
最近になってぽつぽつとライティングを教える専門コースが作られ始めてきましたが、まだまだ人が足りていません。他業種のアーティストとしての採用だけど、就業中にタダでライティングを教えてあげる!というようなスタジオさえ存在します。契約は年単位の長期にわたる場合が多く、安定している傾向にあります。

カラリスト
同じく専門学校がないので人手不足な職種です。実際に現場で経験を積んでいく流れが理想的だと思います。なんでもいいのでとりあえず映像プロダクションに入り、その中でそういったポジションの作業の空きがないか狙っていったらいつの間にかカラリストになっていた、という話をよく聞きます。

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