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「海外で出稼ぎ」に対する違和感

先日NHKクローズアップ現代でも取り上げられたぐらい「海外で出稼ぎ」というワードがカナダ内でも話題になっている

カナダのほとんどの州の最低時給は日本より高く、日本と同じ職業に就いた場合、カナダの方が収入が高くなることが多い
また、昨年から一気に円安が進んだことも重なり、カナダで稼いだカナダドルを日本円換算することでより「日本で働くよりカナダの方が稼げる」と思われている

収入だけを見て「カナダの方が日本より稼げる」場合があるというのは事実
一報で実際にカナダに住んでいる日本人の多くが日本で報じられる「海外出稼ぎ」報道に対して違和感を感じているのもまた事実

その違和感の大きな理由は二つ

  • 全員が思った通りに職に就ける訳ではない

  • 収入だけに着目して支出には触れない

実際にカナダにいる日本人の一部が感じているこれらの違和感を無視して、「カナダに行った方が日本より稼げる」という過大広告だけが広がり、実際にこれからカナダに来る日本人が苦労しないだろうか?
違和感を感じている日本人の多くはそこを心配しています

違和感1 全員が思った通りに働ける訳ではない

私が住むカナダ BC州の最低賃金は$16.75です(2023年12月現在)
2023年12月30日現在の為替レート$1=106.46円で換算すると約1783円。
日本で一番高い最低賃金は東京で1072円、反対に一番低い最低賃金は853円昨今の円安の影響もあり、現時点ではカナダBC州の最低賃金が日本より断然高いと言えるだろう

単純計算で同じ時間働いたとしても日本よりカナダの方が稼ぎが多い

しかし、残念ながらカナダに来た日本人全員が日本より稼げる訳ではないという側面も

カナダで就労が認められる日本人はカナダでの就労許可が必要です
カナダの永住権保持者、カナダのWork Permit保持者、ワーキングホリデービザを取得した人は就労時間制限はありませんが、Study Permitで渡航する留学生には20時間/週という就労時間制限がある
(一部期間限定で就労時間制限撤廃の対象になっているStudy Permit所持者がいますが、全Study Permit所持者の労働時間制限が撤廃になっている訳ではありません)
週に20時間しか働けない学生の場合、日本で時間無制限で働けていたときと比較すると収入が減る場合が多い

また、就労時間制限がない就労許可を持っていたとしても、そもそも雇用されない、なかなかシフトに入れてもらえない、シフトが削られるというような事態も発生し得る
特にトロントやバンクーバーのような大都市の場合、学生やワーホリビザ保持者が圧倒的に多いため、求人の争奪戦状態が続いている
また、閑散期はシフトを減らされることも多々ある為、仕事に就けない、働ける時間が短い場合は思ったほど稼ぐことができないということはあり得るのです

また、日本で安定した職場に恵まれ、賃金が高かった人はカナダに来たことで収入減になる人もいます
日本のキャリアを活かしたかったが、同業では採用されず、別業界&最低賃金で働くような人もいます(と言うか、実際そういう人の方が多い)
なので、日本で恵まれた職場にいた人ほど、給与を含むカナダでの職場環境に疑問を感じる人もいます

もちろん、渡航してすぐに仕事を見つけられる人、同じ業界で仕事を見つけられる人、シフトも減らされず順調に働ける人もいる
個人的には状況は人それぞれなので、金儲けだけで渡航するより海外で働く経験を楽しむとか別の目的も持った上で渡航した方が精神的にも充実しやすいのではないかなと思う

違和感2 収入だけに着目して支出には触れない

上記にも書いた通り、カナダの最低賃金は日本より高い傾向にあり、順調に働くことができれば日本より高い収入を得られることもある

特に飲食店等のサービス業でお客様と接する仕事に就く場合、カナダではチップを払うという慣習があり、そのチップの分配はお客様と接するポジションの人が多くもらえる仕組みになっている為、客単価が高いお店やお客様が多く来る人気店等はお給料の他にチップをたくさんもらえるという利点がある
このようなチップが貰える職についている人が特にテレビ等で「海外出稼ぎ」というテーマで取り上げられているように感じる

それらの報道では収入にばかりが多く叫ばれ、支出のことにはあまり触れられていないようなものも

カナダには日本の牛丼チェーンのような外で安くご飯を食べられるようなところは皆無で、生活費を抑えるには自炊中心にならざるを得ない
現在、カナダにおいてもインフレが続き、物価がどんどん上がってきているので、自炊コストも上がってきている
外食した場合、先程紹介したチップを払う側になるので、カフェだと10~15ドルぐらい、食事だとお酒を飲まなくても20ドル以上払うことになりがちだ
親に仕送り等をしてもらっている裕福な学生以外は外食を制限したり、お金をやりくりしながら暮らしている

また、バンクーバーやトロント等の都会は家賃がかなり高い状態が続いているのも支出が多くなる原因の一つ
バンクーバーでいうと不動産屋さんから部屋を借りて一人暮らししようとなると家賃だけで平均2000ドルぐらいかかる
カナダではレイオフされたりシフトを減らされるようなこともあり得るため、よほど今の職場/生活に定着したと感じない限り一人で数千ドルの家賃の部屋を借りるのはリスクが高くなる為、シェアハウスを選ぶ人が多い
シャアハウスでは何人かのルームメイトと住むことになり、煩わしさはあるものの家賃が800~1000ドルぐらいに押さえることができる

報道では短期海外移住者が他国で稼いで豪遊しているような切り口で表現されているものもあったが、実際に私の周りに見る日本人のほとんどは自分のできる範囲で働いて、たまに外食などで楽しみ、日常は堅実に生活している人が多い印象

特に今は円安が進んでいることもあり、あえて円換算することで稼ぎが多いように思われることが多いですが、支出が高くなりがちな外国の場合、「海外で稼いできた!」っという実績を作るには多く外貨を円安の間に日本に持ち帰るしかなく、そのためにはカナダで貯金に力を注ぐ=支出を抑えるしかない

一見キラキラした報道の裏にはこのような泥臭い現実が海外生活にはある

「稼げる」という部分だけを見て安易に飛び込まず、仕事を見つけやすくする為に英語力を渡航前に上げる、住む場所が見つけられなかった時を想定してなるべく日本で貯金してから渡航する等、リスクも見極め、対策を取った上で渡航し、海外生活を楽しめる人が増えるといいなと思う


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