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4年を経て、アメリカ③

今回の渡米でライブをする予定はありませんでした。
4年半もの間、アメリカに置いたままになっている自分たちの大切な機材や家財道具を整理するための渡米でした。
無事にアメリカに着いた時、たった一週間ほどの滞在だけどライブができたらいいよね、という話になりました。僕自身としては半信半疑というか、まあできたら嬉しいけどできるのかなあ、いやでもできるかもなあ、というフワフワした思いでした。メンバーがバッファローのライブハウスの知人に連絡を取りました。その半日から1日後にはもうスケジュールが決まりました。しかも連絡した日からほんの数日後のスケジュールが。そして数時間後には対バンも全て決まりました。

できるのかなあ、と思っていた僕の感覚は言ってしまえば普通の感覚です。
できるかもなあ、と思っていたのはアメリカでツアーをやってきた経験とかバッファローで暮らしてきたことに基づく感覚でした。
日本の感覚で言えばできるわけないと思うだろうし、そもそもそんな交渉をしようとも思わなかったかもしれません。
でもこの時僕らは「ライブできたら楽しいよね!」という気持ちでいました。
そして連絡をしたライブハウスの知人も「それは面白いね!」と乗ってくれたし、参加してくれた対バンも「それは面白そうだね!」と乗ってくれました。対バンは皆バッファローで何度も一緒にやったことのあるバンド達ばかりでした。
「楽しそうだね!」というただ一点だけで決まっていくのは素晴らしいことです。
誰も無理をしていません。
こういう話をすると、さすがアメリカは意思決定が早いのですね、みたいな話になりがちだと思うのですが、そんなビジネス文化の違いみたいな話ではないのです。文化の違いだのシステムやら組織論の話でもない。
ただ人間同士の関わりの問題だと思うのです。話は至ってシンプルなのです。
音楽を通した人と人とのつながりだけで日程も対バンも決まるのです。
だって音楽なのですから。しかもバーやライブハウスで演奏する大衆音楽なのですから。楽しそう、面白そう、久しぶりに会える、それだけありそうあるべきだとも思います。
音楽も規模が大きくなればなるほどシステムやビジネスに絡め取られていくわけですが、そもそもの原点はただ楽しいとかワクワクすることであるはずです。僕はビジネスの全てを否定はしませんが、ビジネスを第一に考えると音楽は困難になります。つまらなくなります。
ビジネスの話でいけば、今回の僕らのライブはビジネス的には大成功でした。
平日の夜のライブでお客さんがとてもたくさん来てくれました。売り上げもたくさんあったそうです。
他の業種は必ずしもそうではないかもしれませんが、音楽はまず楽しいことや面白いことからスタートしないとビジネスとしても娯楽としてもうまくはいかないのだろうというのが僕の基本的な考えです。
今回の僕らの場合は様々な特殊な事情もありましたが、本当に楽しい時間でした。
こんなにあっという間にスケジュールが決まってこんなにたくさん人が来てくれるのかというのは4年半を経たご褒美のようにも感じました。

話は前後しますが、このライブをやる前に僕らにとっては感動の機材との再会、とうエピソードがありました。その再会がなければそもそもライブ自体がなかったわけですし。その辺りのことはまた次回に書きたいと思います。

続く

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