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アナログな世界の君

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2021年4月の記事一覧

アナログな世界の君

デジタルが増えてきた世界。
誰もが携帯電話やスマートフォンやパソコンを持ち、情報交換をする時代。
その出会いは一つの駅から始まった。

彼女と出会ったのは、駅の電光掲示板の前だった。
物珍しそうに電光掲示板を眺めていて、流れていた文字を見ていた。
そこに行きたかったのか切符売り場に向かっていた。

僕はというと友人の待ち合わせという訳でもなく、ただ駅前で人間観察をしていた。
周りから少し変わってい

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アナログな世界の君②

これでやっと乗れる。
普通だったらここまで時間が掛かるものではない

 「ダイヤル式が使えるなら、押すだけのタイプの方が楽だろう……
 さぁおばあさんにかけて迎えに来てもらおう」

 「そうですね……お母さんの電話番号は分かりますが……おばあちゃんの電話番号は分かりません……」

そこが重要だろうに。
お母さんに連絡を取って、おばあちゃんの連絡先を聞けばいいな。

 「けどお母さんは連絡されても多

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アナログな世界の君③

それを聞いた瞬間に、この子は危ない場面に遭遇したのだと分かった。
それについて行ったら、きっと泣いて戻ってきたんだろうな。
親切な叔父さんがわいせつな叔父さんに変わった瞬間だった。

 「そういうのは危ないからついて行かない事……東京は危ないからな……知らない人について行く事はしない方がいい」

 「そうなのですね…危ないのですね……ほてるは危ない所なんですね……」

別の事を刷り込んでしまった気

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アナログな世界の君④

千代はずっと切符を握りしめて人と人の間、僕の隣に立っていた。
時たま寄りかかってくるが、すぐに離れていった。
僕はというとスマートフォンでチャットアプリを開き、人の会話を見ていた。
たまに列車の窓から見える見慣れた東京のビル群を茫然と見ていた。

自分の世界に入っていると、周りの事が気にならなくなる。
今立っている自分の肩幅くらいしかない空間でも広く感じられる。

千代の目の前に座っている赤ちゃん

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アナログな世界の君⑤

とりあえず無事という事で本当に安心した。

すぐにその連絡に“向かいます”と返事をし、千代を迎えに行くことにした。

“全く……仕方ないな”
そう一人事を言いながら靴を履き、玄関から飛び出ていった。

なぜか落ち着かない気持ちで迎えに行き、しばらくして警察署に着いた。
事情を話し、中に入って待っていると向こうから千代が来た。
そのとき見た千代の顔は元気そのものであった。

「聡さん昨日ぶりですね!

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アナログな世界の君⑥

きっと千代も不安を抱えているだろうに。
元気にふるまっているのだろうと思うとこちらが悲しくなってくる。
まぁこの子の事はまだ読めないからなんとも言えないのだが。

「そうなのか
それは大変だったな
そんな大変な思いをしている間、僕は適当にぶらついて探していただけだからな……ははは」

僕は冗談交じりの笑顔を浮かべながらそう言った。
さっき、必死になって探したと言ったばっかりなのに変だ。
自分でも分

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アナログな世界の君⑦

「そ、そんなに押さなくてもいいじゃないですかあ
先に入らせていただきますよ
色々ありがとうございます」

扉の向こうから千代の声が聞こえてくる。
その声の後、部屋は静まり返った。
部屋の片づけをしようと思って、お風呂場から少し離れていく。

片付けている最中、がたがたと服を脱ぐときの音がかすかに聞こえてくる。
そして浴室のドアを開けて入る音がする。
僕だって男だ。
少しはもどかしい気持ちになる。

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アナログな世界の君⑧

「これはすごいですね……
色がついています……」

色がついている?
そんなことで驚かれたらこっちがびっくりする。
テレビももしかして白黒テレビとかしか家になかったのか。
さすがにそこまで時代錯誤だとこちらも困惑する。
だが、今までそういう片鱗は見えていた。
片鱗というか割と丸見えだったまである。
出会った時から、違和感があったが違和感とあまり感じていなかったのかもしれない。
そういう空気感を漂わ

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アナログな世界の君

「そうだな……じゃあ一時間だけ眠らしてもらうとするよ
部屋にあるものは触るなよ?
危ないからな……昨日のお風呂なんか見ていると何をやらかすのか分からないからな
とりあえずご飯は炊けているから、それだけ食べるといい
おかずはないが、食べないよりましだろう」

しっかりと自分の欲望を満たすことと、危険を回避できるだろう事を言った。
一時間くらいなら、そう深刻なことは起こらないだろう。
ご飯もあげておけ

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