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ターゲット年齢の戦略的高年齢化とTwitterUGC促進が得意な『ほろよい』

「人生で初めて友人と飲んだお酒がほろよい。」
「ほろよいなら楽しくお酒を飲める。」

このブランドとは、そんな出会い方をしている人も多いのではないだろうか。

私もお酒を飲み始めた当初、全然お酒は強くなかったけれど、ほろよいなら美味しく飲めたし、友人との会話も楽しむことができたと記憶しています。

アルコール度数が低いことに加えて、果実感のある味で飲みやすく、缶のデザインが可愛く、店頭に並んでいる商品の種類も多くて選ぶのも楽しい。
お酒初心者は手に取りやすいブランドとして認知されていると思う。

そんな、素敵なブランドほろよいについて、ブランディングトレースを実践していきます!

ほろよいブランドの変化

ほろよいブランドの変化をざっくり考察するにあたって、下記のリリースの変遷を見ていきたい。

2015年リリース
2016年リリース
2017年リリース
2019年夏リリース
2019年秋リリース
2020年リリース

リリースのポイントをまとめると下記図のとおり。

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商品のターゲットと、それに合わせて起用するタレントが変化している。
ターゲットは、「20代若者→20〜30代→幅広い世代」と変更。また、起用タレントも、二階堂ふみ、沢尻エリカ、黒木華&佐藤二朗のように、20代、30代、30代&50代のように大きく変化している。
ここから、ターゲットの年齢層が時代を経るに従って高年齢化していることに、ほろよいのマーケティング戦略が潜んでいると考えられる。

2009年:発売当初

ほろよいは2009年に発売された。
ほろよいは、チューハイにカテゴライズされるが、2009年までのチューハイ市場は次のような変遷を辿っている。宝酒造が1984年に初めて「タカラcanチューハイ」というサラリーマン男性向けのチューハイを発売。その後2001年に、キリンが女性をターゲットにした「キリン 氷結」を発売した。ここから、チューハイ市場における「果実感」が一種のトレンドとなった。

この流れの中で、2009年にサントリーがほろよいを発売。
お酒が苦手な若年層・女性や、お酒初心者のためのチューハイとしてや、ちょっとリラックスしたいけど二日酔いはしたくないというニーズを満たす商品としてヒットした。

2016年:ブランドリニューアル

商品を発売して7年目にあたる2016年、上記の通り沢尻エリカをCMで起用し、リリースの商品ターゲットも「20代」から「20〜30代」と表記を変更した。

この背景には、発売当初のターゲットであった20代が、30代になっており、
今まで通り20代をターゲットにした商品では既存顧客が離反してしまうことが課題にあったことが伺える。また、これは私の推測だが、少子化により新規顧客が減少していたか、今後の先細りが予想されたということも、もう一つの理由としてあったかもしれない。

そのため、2016年時点でのブランドリニューアルの目的は、大きく2つになる。

①既存顧客の維持(≒商品価値の維持)
②新規顧客の獲得

近年のブランディングの動向

2019年には、黒木華と佐藤二朗をCMで起用している。これまで二階堂ふみ・沢尻エリカを起用してきたイメージとは全く異なる。

この背景には、まず、黒木華のような30代女性で発売当初からほろよいを飲んでくれていた既存顧客を維持しながら、その親世代にあたる佐藤二朗のような新規顧客を獲得していくという戦略が読み取れる。

また、ブランドのメッセージも20代・30代中心に訴求していた「仲間と楽しむ」から「懐かしの味」へと変化している。
この「懐かしの味」をブランドイメージとして訴求していくために、黒木華だけではなく佐藤二朗を起用したと考えられる。というのも、30代の黒木華が「懐かしの味」というよりも、その上の年代の人と一緒に「懐かしの味」を共感し合うシーンを演出する方が、より自然に「懐かしの味」を表現できるからである。

マーケティングの特色

ほろよいブランドは、他のサントリーブランドと比較して、明確に2つの違いがあると思う。

①商品の機能的訴求が少ない
②秀逸なSNSマーケティング戦略

①商品の機能的訴求が少ない点について
サントリーの代表ブランドである、金麦とプレミアムモルツは、webサイトにてとにかく商品に対するこだわりを徹底して表現していた。
例:天然水100%使用、開発担当者のコメントの掲載 など

一方でほろよいのwebサイトでは、商品のラインナップとSNSでの「ほろよい部」の紹介、黒木華と佐藤二朗からのコメントがメインコンテンツとなり、商品の機能的側面に関する説明はほとんど掲載されていない。

この理由として、商品のメインターゲットが若年層・女性、お酒が苦手な層であり、商品の機能性の違い・特徴よりも、まずお酒を手にとってみたいと思わせることができるかということに、webサイトの主眼が置かれていると考えられる。

②SNSマーケティング戦略について
サントリーブランドでは、InstagramとTwitterを運用しているが、特定のブランドではブランドごとにSNSアカウントを立ち上げて運用している。

ほろよいでは、ほろよい専用のTwitterアカウントがある。
このTwitterアカウントには、大きく下記3つの特徴があると思う。

(a)アカウント名:「ほろよい部」
(b)ユーザーが楽しめるコンテンツが多い
(c)ユーザーのオーガニック投稿のコメント付きRTが多い

(a)アカウント名:「ほろよい部」について
このアカウントが面白いのが、アカウント名が「ほろよい部」になっているということ。SNSネイティブ世代である若年層を巻き込んでいこうとする姿勢や、ほろよいファンとのコミュニケーションツールとしてTwitterを活用しようとしていることが伺える。

(b)ユーザーが楽しめるコンテンツが多い点について
GIFゲームや、ほろよいに最高に合うキャッチコピーを募集するなど、ユーザー参加型のコンテンツを頻繁に投稿している。
Twitterでのコミュニケーションを通して、ファンと継続的に接触しようとしていることが伺える。

(c)ユーザーのオーガニック投稿のコメント付きRTが多い
非常に秀逸な戦略だと感じたのがこちら。
通常、企業アカウントでユーザーのツイートをリツイートする場合、ハッシュタグやメンションなど、ブランドに対して何かしらのアクションをしていることが多い。

しかし、ほろよいの場合は、ハッシュタグやメンションなどを特につけていなくても、ほろよいブランドに関するツイートであれば、コメントをつけてリツイートをしている。

ここにはおそらく、ファンのUGCの生成を促進させたいという意図があるように思う。
企業アカウントでユーザーの投稿をこちらからリツイートすることによって、ユーザーは企業アカウントに見てもらえたという喜びや、ブランドとの距離の近さを感じる。また、ほろよいのTwitterアカウントをフォローしていれば、頻繁に他のユーザーの投稿がリツイートされていることを見て、ブランドに対して親しみやすさを感じる。

その結果、ユーザーがブランドからのリツイートを期待して、オーガニックで投稿をする可能性がある。
このユーザーの心理変化を、企業アカウントでのオーガニック投稿でのリツイートというアクションをとることによって、UGCの生成を促していると考えられる。

終わりに&学び

学びの深いブランディングトレースでした!
特に一番面白いと思ったのは下記2点。

①ブランドのリニューアル時の設計。
ブランドをリニューアルするときは、既存顧客の維持と新規顧客の獲得という2つを同時に達成しなければならないということ。

②TwitterのUGC生成戦略
食品・飲料のTwitter戦略の場合、Twitter上でUGCを作るための方法として、キャンペーンがよく考えられる。ほろよいでは、キャンペーンに関するツイートではなく、オーガニック投稿にメンションをつけたリツイートが多いことが、他の食品・飲料ブランドとの明確な違いだった。そこには、キャンペーン問わず、Twitter上にオーガニックで投稿してほしいというUGC生成戦略が潜んでいるということ。


以上!

またやります!!

<参考資料>
日経クロストレンド:氷結にほろよい、ストロングゼロ 缶チューハイの歴史総まくり
GLOBIS 知見録「ほろよい」復活に見るリポジショニングの重要性
ソーシャルメディアを使うのではなく"付き合う"サントリー酒類

<ブランディングトレースシート>

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