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ワンピ映画『オマツリ男爵と秘密の島』(2005)『STAMPEDE』(2019)感想

最近、noteを書く体力なくなってきた。
というか、そんなの書いてる暇があったら小説なり卒論書けよと脳内の俺がうるさい。よって、タイトルだけメモした下書きが死ぬほど溜まっている。

とはいえ、この映画は割と語りたいことが多かったため、忘れぬうちに書いておきたい(もう一週間経ってしまったが)
タイトルには2つ書いたが、主に語りたいのは前者「オマツリ」の方である。後者は語ることが特にないが、せっかく見たので比較として取り上げる。

つまりこの記事は、上記2つと最新作「FILM RED」を見たことがある私のワンピ映画に対する暫定的な総評である。



「オマツリ」の全体的な感想

「オマツリ」の感想を箇条書きで端的に並べると以下のようになる。

カメラワークカット彩度がワンピ的でないところかアニメ的ですらない。映画的
・ギャグは割と笑える
一味のキャラ崩壊は全体的にひどい。特にひどいのはチョッパー、ルフィ。一番耐えてるのはロビン。
サブキャラであるちょびひげや家族、敵キャラのカッパやどじょうに個性を感じる(これが描きたいんだろうなあみたいな)が、自分にはあまり刺さらなかった。なんなら邪魔だった
・トラウマと言われるグロテスクな花や弓矢の描写は悪い印象ではない
・総評として、ワンピ映画として見れば☆1をもらっても仕方ない映画。ワンピだということを忘れたとすれば、自分は☆3くらいの映画だと思う。
・結論、尾田先生はすごい(小並感)

「細田守にワンピを描かせてみたら?」という試み

正直、私は細田守の作家性や、当時の立ち位置にも詳しくないため、制作陣や細田守監督の意向は分かりかねる。
あくまで今振り返れば、

「オリジナルアニメ映画で人気を博する細田守監督が、世界的人気漫画ワンピースを描いてみたら?

という興味深いメディアミックスには映るという話だ。私はその観点からしか感想を述べることができない。(なんなら時かけとサマーウォーズしか見ていない私は細田守を満足に語ることもできないが)

そして、そういった観点でもって言えば、物語的に面白いかどうかはともかく、映画作品として面白い企画ではあったと思う。
引きの多いカメラワークやカット割り、明らかに低い彩度など。普段のワンピースでは絶対にできない挑戦的な演出は、それが良いか悪いか私には判断できないが、面白いとは思えた。

とはいえ、明らかにフェイスアップ(画面いっぱいに顔が写るカット)の時間が極端に短すぎるとは思った。マンガ的な観点から言えば、「寄りの表情」というのは、感情移入の観点で重要な位置を占める。もはやそれ以前の問題で振り落とされている気がするが、子供や少年層にとってはとっつきにくい(分かりにくい)演出にはなっていたかもしれない。

なぜか笑えるギャグ

私がこの作品で一番満足度が高かったのは実はギャグだ。
後で語るが、監督は(そしておそらくは脚本も)ワンピース及び麦わらの一味についてキャラ理解が深いとは言えない。

それにもかかわらず、前半ところどころで笑える掛け合いが何度かあった。キャラに依存しない掛け合いの妙を感じたのは、脚本の得意分野なのかもしれないとは思った。

鑑賞後、当時の予告を見たが、まさかの「ギャグ売り」をしていたのは死ぬほど驚いたが。「笑劇」だの「笑撃」だのと書いてあったが、さすがにそれは予告詐欺だろう。笑えるのは事実だが、それを期待して観に行った子供にとっては、後半怒涛の笑えない展開が待っている。

一味のキャラ崩壊について

これが多分レビューで一番言われていることだろう。
「こんなのはワンピースじゃない」という直感は、ワンピースをどんな深度で読んでいる読者でも当たり前に持つ感想だと思う。

その要素は挙げたらキリがないほどだが、主に2点ある。バトルの下手さキャラ崩壊だ。
まず、この映画はどう見てもバトル映画ではない。最初にダイジェスト的に全員の技を見せてはいるが、ルフィは一度も「ゴムゴムの~」と言わない。クライマックスでさえ、だ。
ワンピをバトルものとして期待する層からすれば、今年の「FILM RED」然り、評価は低いだろう。

しかし、やはり大半の低評価は後者の「キャラ崩壊」から来ているように思える。
この「オマツリ」は、シナリオ上で一味の不和が描かれる。その描き方があまりに不自然なのだ。

ナミとウソップが喧嘩するところで、「さっき私を裏切ったでしょ」「裏切りはお前の十八番だろ」といきなり言い出すところなど、全く意味が分からない。
サンジがルフィに「こんなことになったのは、この島に来たいと言ったお前のせいだぞ」と言うシーンも最悪だった。

言うまでもなく、彼らは絶対にこんなことを言わない。言うまでもなく。

あまりに酷すぎて、この一味のキャラ崩壊は「オマツリ男爵」の能力なのではないか?と私は信じ込んでいた。
実際、一味が喧嘩する前に「オマツリ男爵様は仲間をバラバラにさせる……」的な意味深なセリフがある。これが試練をさせて自然発生的に仲間割れするという意味ではなく、仲間をギクシャクさせるための何かしらのファンタジーな能力を使っているのではないか?ということである。しかし、そんな描写はないから読解としては有り得ないと友人に一刀両断された。だとしたら、やはりこの不和の描き方は下手としか言いようがない

一味の不和以外にもキャラ崩壊は度々見られる。そして、その原因の一旦は細田守(もしくは伊藤正宏脚本)の「人間不信」ではないか?と思っている。人間不信というと極端だな。
人間を無条件に信じることに対する懐疑心」こそが、一味のキャラ崩壊に繋がっているのではないかという仮説である。

それが顕著なのは、やはりチョッパーである。
チョッパーは原作ではウソップのホラを信じたりと、お世辞に照れたりと、懐疑心の殆どないキャラとして描かれている。それがこの映画では、オマツリ男爵しかり、家族の父親しかり、何度も他人に対して疑いの姿勢を示している。

同じように、ルフィも前半ほとんど「ちびまる子ちゃんの山田くんか?」ってくらい誇張された馬鹿に描かれていた。これはルフィやチョッパーみたいな人を無条件に信じるキャラの描けなさというか、そういう作家性みたいなものが表れているように思えて仕方がなかった。

先日「竜とそばかすの姫」がテレビ放送された時も、Twitterで「細田守のネット不信や大衆不信」について言及するコメントが多かったように見えたが、それがどの程度正しい批評なのかは私には判断しかねる。(逆に言えばそれを見た後だから、そう理解してしまった可能性もある。)

だからこそ、人を疑うということを知っている(当時まだW7編前で正式に一味にもなっていない)ロビンが最もキャラ崩壊の程度が少なく済んだという訳である。

細田守は「ワンピース哲学」を否定し、解体したかったのか?

こうして見ていくと、細田守はそもそも「ONE PIECE」という作品に通底する根本的な哲学を破壊して見せたかったのではないか?という気にもなってくる。

レビューにも「ワンピースを否定するような展開」という言葉を見つけた。
それはおそらく、先述した一味の不和だろう。
確かにワンピースでは、「無条件に仲間を信じること」が美徳とされ、麦わらの一味はある意味では「能天気に笑う無計画な船長とそれに振り回されるもなぜか裏切らない仲間たち」に見えるかもしれない。

実際、この映画が制作されたのは2005年。作品内の時系列を見るに、空島編とW7編の間である。完全に擁護できるとは言えないが、もし細田守が新世界編までワンピ原作を読んでいたら、こんな映画は作らなかったんじゃなかと思う。


尾田先生は細田守にアンサーするかのように、原作で模範解答を描いている

私は「細田守が悪者で、彼は悪意で以てワンピースを否定したのだ」と言いたい訳では断じてない。
むしろ、彼の哲学をワンピースの哲学とぶつけることは面白い試みだと思うし、ルフィのような特異なキャラに対して思うことがあるのは、芸術家やクリエイターに限定されない、普通のことだとも思う。

だから、彼が提示した「一味の不和」という展開自体は厳密にはワンピースを否定することにはならない。なぜなら、それは後の原作のW7編で実際に起こる展開だからだ。

もっと言えば、「仲間を失うルフィの絶望」という展開も、「仲間を失い闇落ちした悪役」という展開も、全部後の原作でやっているんですよねご丁寧に。それぞれ、シャボンティ諸島とスリラーバーク編が対応するかと思います。

そして、それは無理に描かれたのではなく、もちろん「オマツリ」を意識したわけでもなく、ワンピースに必要な展開だったから描かれただけです。

ルフィというキャラクターは、自分的には1巻を読んだ時から説得力のあるキャラに見えたのですが、それは既に人気だということを知っていたからかもしれないですし、人によってはやはり「よく分からない」キャラではあります。実際、彼の哲学って意外と語られないんですよね。

だからこそ、仲間と喧嘩する展開も、仲間を失う展開も、そこから成長する展開も、必ず必要なんですよ。そうして彼の生き方を提示していく必要が物語の抑揚的にもあるべきでした。

それを細田守は先取りして描いたんだと私は思いました。
ただ、その彼がワンピースに向けた問いを、彼自身上手に答えられなかった。もしくはワンピースに見合う形で答えを提示できなかったのかなと思います。

結果、「言いたいことは分かるけど、言い方が決定的に間違っている」映画になったなという感想です。

そういう意味で、尾田先生はすごい。
W7の仲間の不和も、映画と同じくかなりギスギスしてるけど、全然キャラ崩壊を感じないから。ウソップはメリー号への想い、ルフィは船長としての責任、などとちゃんと自分なりの筋を通したが故にすれ違っていると、ちゃんと説得力を持ってギスギスさせることができているんですよね。

いや、自分の物語だから当たり前と言えば当たり前なのかもしれないですが、それでもちゃんと自分のキャラを作者が動かしているように見せずにキャラが動いているように見せるのってなかなかできないです。

映画としては批評しがいのある「オマツリ」

細田守が著名なアニメーション作家になったこともあり、「オマツリ男爵」はかなり語りがいのある作品です。
トラウマっぽいグロテスクなシーンもありましたが、「ワンピでこれをやるのか!」みたいな楽しみ方をしていたし、映画的なカットなども含めて「ワンピらしくないワンピ」を見るのは普通に新鮮で良かった。
というか、最初にそう割り切っていれば面白いのではないでしょうか。

一緒に見た友人には「当時、これを見た子供が可哀想だ」とグロい描写に憤慨していたので、そこで割り切れるかどうかで評価が分かれそうですが。

……あとは箇条書きに書いたサブキャラの話をしようかと思ったんですけど、もうあんまりモチベがないし、特に価値のある話だとも思わないのでやめます()私には刺さらなかったという好みの話なので。ただ、棒読みの娘さんだけは何とかしてほしかった……(ルフィに注目したい時に親子の話がノイズでしかなかったし、そういう物語が得意で描きたいのは伝わってきたがそれも別に薄っぺらくて感動しないなあと思った)(括弧に入れてごり押しで全部話しとるやないか)

一方、もう二ヵ月も前に見た『STAMPEDE』はなんというか、批評どころか感想も特にないような映画でした。
ワンピ映画の最高傑作!集大成!みたいな感じでレビューは絶賛だったので期待したんですが、友人にもあまり刺さらなかったようで。

当たり障りないというか、一言で言えば「ファンが考えた最強の映画!」みたいな感じだったんですよね。本当にプロが作った?みたいな。
ファンサービスがあるのはいいんですが、ファンサービス100%はちょっと…みたいな。あれ、なんか悪口が止まらないみたいになってますねやめましょう。

まあでも、この作品を見て僕は「FILM RED」が如何に出来が良かったのかを認識しました。そんなにめっちゃ良いとも思ってなかったけど、これに比べればめっちゃ良かったなと。

STAMPEDEの一番ひどいところは、ストーリーがなさすぎるんですよね。悪役に大した哲学もなく、ただ沢山キャラを出して共闘させるためだけの舞台装置だけがある、みたいな。
サボとエースの共闘とか、ウソップを馬鹿にする敵に怒るルフィとか、原作の感動ポイントを十倍希釈して詰め込みました、みたいな。
……あれ?また悪口羅列してませんか?いけないいけない。

ラフテルに対する永久指針も、映画の立ち位置的にも当然最後壊されるだろうとは分かっていたんですが、あれはなんかルフィの哲学が少しだけ反映されたような気がして、いい締めだったんじゃないでしょうか。「ロジャー」という名前を出すというのも、予告のことを考えたプロモーションという感じで、まだ大人の仕事って感じがしましたね。安直ですけどね。(今更だけど、上から目線ですね。もうこの映画に関しては仕方ない)

ワンピースの面白いバトル映画、求ム!

結局、ワンピ映画3作品を鑑賞した結果。
可も不可もないストーリーではダメで、一方で酷評されるのを覚悟でバトルをやめた攻めた映画の方が面白いということになってしまった。

そんな訳はない……と信じたい。信じたいわこの未来(バトル映画)を。。
(というか今回で原作が面白すぎるのも考えものだよな、と少し思った)

なので、他にも名作と言われている「STRONG WORLD」や「FILMシリーズ」を見てまた改めて、「ワンピのバトル映画で面白くするにはどうすればいいのか?」を考えていければと思います。(SWはテレビで弟が見てたのを3回は見た気がするけどちゃんとは覚えていないのでまた見たい)


一応言っておくと、私は批評めいた上から目線は好きではありません。散々してきた気がしますが。 
ただその作品の何が良くて何が悪くて、どうすればもっと面白くなるのかを考えたいだけです。それを批評と言われたらアレですが。少なくとも難癖つけたい訳ではないのです。
それが将来、仕事にも繋がるはずだと信じていますので。



さて、ここまで結局2時間もかかってしまいました。また6000字弱。
早く小説書かないといけないのに。。。卒論。。。嫌だ。。。。

はい、という訳でもしオススメの映画やマンガや、意見や反論、不平不満、文句などなどありましたら教えていただけると助かります。
ここまで読んでくださった方はありがとうございました!






P.S.
毎回恒例、文体が常体から敬体にアハ体験してる。。
途中で違う文章を見たからですね。。ご愛敬ということで許してください。






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