【ねぇそれって本当に大丈夫?】よくある人事の問題(その2:求人ー労働条件1)

 前回から少し間が空いてしまった。今回めちゃくちゃ長いです。時間のある時に読んでやってください。

前回の記事はこちら↓

 柚人です。正義感が強い性格が仇となってか、法令遵守をできない、法令の穴を突くようなぎりぎりの規則を作って会社の利益を捻出したり、無知なことをいいことにだましたり、人の可能性や意思を削り、ロボットや奴隷のような扱いをするようなこすい(方言?ずるがしこい)経営者や人事は大っ嫌いです。
 個人で稼ぐならまだしも、人を雇って働く以上、安定した利益を生み、従業員が働きやすく前向きに長く働ける職場を作る努力をする、きれいごとを並べてきれいごとを実現するのが、先頭に立って多くの人を導く人のすることです。
 ええ、こういうあたりオタクの思考です、潔癖論です。この記事や思考を見て、え?なんで人事やってないの?って方、仰る通りです。人事採用の仕事やってみたいんですが、未経験です。つまり未経験=給料が低いんです。生活できないんでその選択肢ないだけです。守銭奴じゃないけど報酬って大事よ
 あと人事の仕事って意外と官公庁への届出だったり、給与計算も業務の一つです。そのあたりやったことありません。なので、かなりやること多いんですよ、だから意外と組織作りをしっかり考えてやれる人事の人って少なかったりします。
 ただそれを理由に対応しなくていいなら、それは人事でなく一般事務となんら変わりません。経営者側に人事担当役員がいるなら、その人が怠惰してるに他ならないです。(そういう意味でいくと後述で出てくる富士通の平松さんは見本とすべきほど、ちゃんと組織と人を考えて動かれている人です)

 さて、前回は求人票に書いてある仕事の情報のいい例悪い例として
 ・業務内容が不明確だったり余計な情報が多い
 ・業務内容から労働条件と比べると法的にNGなケースがある
 ・中途採用、しかも専門職なのに配属先が不明
 ・必須要件の素朴な疑問、年数で何が評価できるのか
 ・サービスの総称を出されても総ナメしてる人なんてそうそう居ない
 ・定義があいまいで、募集側でないと判断がつかない基準はNG

といった点に触れてきましたが、今回はその続き、労働条件に関する話をします。

労働条件とは何か

 労働条件は、まず雇用関係にある間は「使用者(会社、または経営者)」と「労働者(社員、アルバイト等)」の間で労使協定というものを結ぶ必要が何度か出てきます。
 労使協定に関連する届出は厚生労働省管轄の各都道府県労働局の下にある労働基準監督署に届け出る義務がありますが、それは「会社が行政に対し、この条件でこの人たちをこう扱います。責任者は誰で両者合意の上に成り立っています」と宣言するもので、ここでいう労働条件は入社時に就職しようとする人と、会社の間で取り決める「入社時の扱い」を定める「労働条件通知書」に記載される事項の話です。
 労使協定には様々な様式(取扱いの違い)がありますが、労働条件に大きな変更がない限り、人事以外が触ることはありません。
 どんな届出があるんだろう?と気になる方はこちらをご覧ください。

労働条件の項目

 労働条件の項目は大体以下の通りです。
 ・勤務地
 ・転勤有無
 ・雇用形態/試用期間
 ・給与
 ・就業時間
 ・休日、休暇
 ・通勤手当
 ・社会保険

 多いですよね、長くなりそうだけど1つずつ行きましょう。頑張りましょう()
 この項目は労働する上で非常に重要なので、2回または3回に分けて説明したいと思います。
 今回は勤務地、転勤有無、試用期間について話します

 1.勤務地

 言わずもがな、どこで勤務するかです。
 例えばオフィス1つの会社で、事業も自社内で終わるものであれば「本社」だけ書かれているはずですし、東京に本社があって、自分は関西から離れたくないから関西の営業所や支社で働く、ということであれば「関西支社」などのように記載されているものを選べば間違いありません。
 ただ、たまにここに「顧客先による」「本社または顧客先」といった類の記載がありますが、IT業界にあるあるなSES企業やSIerにありがちな表記、または派遣会社によくみられる表記です。
 この手の会社に勤める際には十分に自分の置かれる状況を認識しておくことをお勧めします

 長くなるので、必要のない方はスキップしてください。
 というのも、自社以外の場所で働くということは会社間で諸々の契約がなされた上で出来ている「ビジネス」の一環なので、口を悪く言えば「人を提供(貸し)している」商売なんですね。しかしながら労働者供給事業というのは過去の社会通念から、職業安定法第44条にて禁止されています。
 つまり、人を提供することに関しては、商取引における出張対応などのサービスを除いて、継続的なものになると法的にはかなり綿密に制限がかかるようになっています。請負、派遣、出向に関して労働法、職業法で謳われている事項も多く、関連ガイドラインも多数出ています。
 ですが一般の方が職業安定法を理解されていることなんて稀でしょう。
 そこで良く起きる問題が「指揮命令系統」の誤認識です。
 人を提供するにおいて「請負」「準委任」「派遣(委任)」と三分されるのですが「請負契約」を行っている会社にあなたが就職したとして、顧客先で仕事を行う際、顧客から契約外の成果物(納品物)の作成や、契約内の成果物の作業方法まで指示された場合、それは請負契約の違反にあたります。
 次に「準委任」がSES(システムエンジニアリングサービス)の主たる形態ですが、これは請負契約同様、指揮命令はできず、あくまで業務遂行に伴う社会通念上の「業務上の注意」などは出来ますが「指示、命令」は出来ません。
 また、請負とは異なり、成果物を完成させる責任を負いません
 SESが問題視される点として、この「派遣」と「請負」の間という非常に熟知していないと簡単に間違える「納品物の完成責任」と「指揮命令系統」が、会社間の多重契約に基づき不明確になる点にあります。
 「派遣」に関しては、前提として派遣事業を届け出て法認可を受けている会社でなければ行ってはいけません。会社のHP等に認可番号などの記載の義務があるので確認してください。請負、準委任と異なる点として「指揮命令系統」を発注側が有する(労働管理も派遣先側)ので、「派遣さんこれお願い~」と社員同様に頼めるのが便利な点ですが、「派遣切り」「派遣いびり」「不自然な業務量の押し付け」などが問題になり「3年以上の同じ職場での就業禁止」や「強制労働の禁止」など様々な対策が取られつつあり、今後2~30年かけて変わっていくものと思われます。

2.転勤有無

 勤務地の話でかなり長くなってしまいましたが、ここもそれなりのボリュームになります。
 まず、自分の場合は転勤有の会社は基本受けません、あったとしても面接時に必要性を確認し、相互理解を図ります。
 コロナの影響でリモートの方向に進む会社も多く、富士通やカルビーなど大手でも単身赴任や転勤を無くす傾向にありますし、テレワーク環境の整っていない中小はそもそも多くの事業所を持たないので転勤という話は稀だと思われます。むしろ転勤なんて意味不明な制度、継続する会社はまず自分達を見直せ、と言いたいです。

 世間的に廃止の方向に進む動きになっていても、少なからず転勤のある企業はまだまだ残っているでしょう。
 そもそも転勤が発生する場合、引越しに慣れた独り身なら住む地が変わるものの引越しも然程大変ではありません。
 しかしながら、引越しに慣れていない実家暮らしの地元就職の人や、家族が居るとそういうわけにもいきません。親の介護、夫または妻の仕事、子供の学校、身近な親等(しんとう)に与える影響は大きいですし、会社命令とはいえ転勤にかかる住居探しや引越し費用に上限を設けるなどして従業員に余計な負荷を与えるケースもあります。
 何より住む環境が異なるということは長年親しんだ土地やその地域の空気などに慣れていた人にとってはかなりの心労となります。
 転勤族だから友達が出来ず、人付き合いがうまくいかないといった子供が大人になった時、まともにコミュニケーションが取れずに苦労する、父親が単身赴任ばかりで家に居ないから父親像が分からない、親の愛情が注がれていない、そんな子供たちに対して与える影響が大きい増やす行為を、会社の、大人の勝手な都合でさせるからにはそれ相応の配慮が必要です。
 そういった道徳的な観念が欠けているケースがあるのに、離職率が下がらない、従業員の信頼を失っていることに会社が、人事が気づかないケースも多いのです。
 なので、転勤有の会社はまず転勤がなく、それぞれの要望に合わせるグローバルなんて関係ない日本でも実践できる「多様性」を認める制度や文化を作る為に努力することから始めるべきだし、転勤を生じるような仕事なら「まず本当にそれって必要?人を配置転換して相応の利益が得られるのか?」というところから見直すべきです。
 すべき論を言い出すときりがないので程々にしますが、これだけ様々な可能性がそれぞれの努力によって実現可能なことが多くの人の目に触れた時代です。これから転職や就職する人は「これがこれからの時代のネイティブだ」と宣言して旧態依然の無駄なマナー、ルールを見直させる動きが必要だし、それで採用がうまくいかない、人手不足で事業が回らず縮小・倒産を余儀なくされた、といったらそれは経営の怠惰の結果そのものです

3.雇用形態、試用期間

 雇用形態は分かりやすいですね、正社員、契約社員、パート・アルバイトといったものです。
 雇用形態は正社員は言わずもがな、契約社員は基本的に有期契約で、限定的な業務・責務において勤務することを言います。よって、正社員ほどの負荷は掛からない分、正社員のように給与は高くなく、またチャレンジもすることが無いため、どちらかというと今では増えてきた業務委託のフリーランス等に近いかもしれません。
 ただし、契約社員は労働契約法16条によって守られている為、会社と取り決めた契約期間に余程の事情(注意しても直らない度重なる欠勤や服務規程違反、契約時に定めた業務の不履行、犯罪行為など)がない限り、会社から解雇することは出来ないのが労働者側にとって良いことでもあります。
 定年が60歳なのに対して、年金受給が65歳に引き上げられたため(といっても収入次第で年金の受給開始を早めることは可能)定年後も働きたい、という方と、長年の勤務の中で培った経験や技術を活かして後輩指導や一部業務の継続対応などをお願いしたい会社の合意から発生する「定年再雇用」は「嘱託社員」と言われることが多いですが、これも実態は契約社員に近い扱いとなります。
 パートアルバイトに関しては、更に業務を限定し、時給単位での給与計算を行うものですが、社会保険などの制度の法的要件が異なるわけでもなく、契約社員と同様、有期雇用契約となります。
 また、半年や1年ごとに契約を結び直しますが、5年以上勤務した場合は以降契約の結び直しをしなくてよい「無期雇用契約」(通称:無期転換)を「本人から申請すること」で結ぶことが可能になります
 このあたりが同じ職場で3年以上働いてはいけない派遣法の適用される派遣社員と異なる点です。

 ここで注意すべきはどちらかというと試用期間で、ここが結構誤解されやすい内容になります。
 正社員の場合、試用期間と試用期間終了後は変わらないケースがほとんどを占めます。
 ですが、稀に試用期間は契約社員、だったりアルバイトだと試用期間は時給が異なる、といったケースがあります。
 試用という言葉の通り、本当に働けるか、面接でいいこと言っておいて、実際職場に入ると挨拶も出来ない、仕事もできない、PCも使えない、といったことがないか面接での会話では把握しきれないので、お試しで働いてもらう、という期間で大体1~6ヶ月(アルバイトの場合は1~3週間前後)ですが、法的には決められていません
 試用期間1年、という会社も見ますが「1年も見ないと分からない?」と思います。
 ちなみに、試用期間といえども正社員の場合、無期雇用前提で契約するのが日本では当たり前となっています。
 コロナの影響で露見する前からも度々ありましたが「君にはこの仕事は無理そうだね」と退職示唆があった、その際に明確な時期や妥当な理由がなかったので出社すると席がなくなっていただったり、「あれ?もうこなくてもいいよ?」といった話、まだまだあるみたいです。
 試用期間といえど、雇用契約開始から14日を過ぎていれば雇用契約がなされている上、会社側の都合で退職させる以上、解雇予告は必須となっています。解雇予告とは30日前に解雇通告を出すか、急遽の解雇の場合30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
 また、退職にあたりよくあるのが「会社事由にしたくないが故に、退職届を書かせる」という行為です。
 これに応じてしまった場合、退職の取り扱いとしては自己都合退職になり、失業保険等の受給もかなりの日数(約3ヶ月)を要することになります。(会社都合による解雇の場合、最短7日で受給が可能になりますし、受給可能期間も倍以上となります)
 また、この際に密室で長時間の面談を実施する、何度も呼出し勧告する、拒否してもまた言ってくる、机をたたく、怒鳴り従業員を怯えさせ、判断力を低下させ書かせる、といった行為は退職強要にあたり違法行為です。
 一般的にはパワハラ、と言われますが、犯罪行為とも取れて、強要した側は会社から懲戒処分を受けることになります。
 たとえ結果的に離職したとしても、失業保険の受給に必要な「離職票」を発行しない、「離職票」に「自己都合」と書かれ送られてきた、などのケースも多く、その場合はかなり悪質(発行しないこと自体、違法行為)ですので、ハローワークを通した離職確認要求や、異議申し立てが必要となります。

 余談ですが、昔からの考えで今の50代以上の方にはいまだに根深く、ことわざにもある「3日坊主」「石の上にも三年」という言葉にちなんで、人を見るには「3日」「3週間」「3ヶ月」「3年」という言葉があります。
 3日続けられるか、3週間で概要を理解し一人で出来るようになるか、3ヶ月で体に馴染むか、3年続けて一人前になれるか、といったところですね。
 実際自分は前職で入社3年目に転機を迎え、人との接し方や仕事のやり方が変わり、周りからの信頼も一気に変わりました。
 あと、隔週夜勤に入る時期があったのですが、1週間ごとに昼夜が逆転するので体がなかなか馴染みません。その時は体が慣れるまで3ヶ月かかりました。
 実際、その環境に体が慣れるのにはそれぐらいの日数を必要とします。
 試用期間をある程度設けるのは、上記でどのように変わるかを見るという点でも使用者・労働者双方にとって優しい仕組となっています。

まとめ

 めちゃくちゃ長くなりました。
 勤務地、転勤有無、雇用形態・試用期間について書きましたが、このあたりはホントまだまだ闇が深いです。
 「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらを見ているのだ」というワードがありますけど、いやほんと知れば知るほど世の中やっべぇ・・・って思いますよ、うん。
 働くことが当たり前、ベーシックインカムの制度のない日本では遊んで暮らすということが出来る人はほぼ一握りです。
 そして、その財を成してきた人も大体頑張ってきた人たちですし、人の労働なくして生活は成り立ちません。(誰かが働いてくれているからこそ、電気があり、水道が通っていて、火が使える。食料が近くのスーパーやコンビニに運ばれ買える)
 最初に経営の怠惰だのなんだの言いましたが、実際人事担当者がいなければ面接ってできませんし、人事が働かなければ給料が支払われません。
 ですが、人の労働を「感謝」ではなく「強要」する非人道的な奴隷などの行為があったからこそ、そういう人たちを守る為に法律がありますし、国というコミュニティの中で、社会生活を送る為の規範として法をもとにしたガイドラインなどが存在し、人の道徳や倫理、尊厳が守られています
 それらを無視する、ということは人を人と思っていない、替えの効く道具だと言っているようなものです。
 そんな人たちから自分や仲間を身を守る為にあるのが「知識」です。
 法律の専門家じゃないから別に知らなくてもいい、のではなく自分に関わるもので知らないことがあれば「疑問」を以て「回答」を見つけてください。労働法(労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、労働組合法、労働関係調整法)や厚労省ガイドラインはそれらを用意してくれています。

 なんか最後幸福論者や厚労省の回し者みたいになったな・・・。
 とにかく今6600文字に届くかというところです、長々と読んでいただいてありがとうございました。

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