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【柴田正幸さん】「食は人を変える力がある。感動を与えられる人になりたい」

湯沢出身、現在は東京都調布市にある人気のイタリアンレストラン「DonBravo」で働く柴田さんにインタビューを行いました!

これまで多くの試行錯誤を経験し、今後はさらに大きな目標のために進まれます。”起業家精神”を持って進む柴田さんに迫ります。

*DonBravo(ドンブラボー):http://www.donbravo.net


湯沢での記憶

父親が湯沢でホテルのコックをしていたので、幼稚園の頃からかっこいいな、という憧れを持って見ていました。次第に父親が最初の目標になり、小学校の頃には「絶対超えてやろう」と思うようになっていました。同時に東京で修行したいという願望が芽生えていました。高校卒業後、願望通りに東京に出て来ました。


東京での修行時代

まずは、辻調理師専門学校の東京校に入学しました。そこでフランス・イタリア料理を1年間専攻しました。当初は厳しいイメージがありましたが、先生は穏やかでフレンドリーな校風、知識を細かい部分まで落とし込んで教えてくれました。志を持った仲間と高めあいながら学べる環境でした。

卒業後、最初に入社したのが青山のイタリアンレストランでした。終電まで仕事が終わらず、レストランの床でシェラフを敷いて寝て、朝起きて流し台で体を洗っていたこともありました。ここは4~5ヶ月の勤務でした。

次に、広尾のイタリアンレストランに勤務しました。芸能人がよく来ていたお店で。お店の近くに社宅完備、福利厚生もしっかりしていたんですが「このままでいいのか」「厳しい環境に身を置かなきゃ埋もれちゃうんじやないか」など、違和感がありました。やりたいことを考えるようになり「ビストロではなく、ガストロノミーをやりたい」と思うようになっていきました。

その頃、前のお店のオーナーから「リニューアルするから戻ってこないか?」と声がかかり、一緒にお店を作っていけると思い、移ることにしました。1年半くらい、ワインやサービス、デザートを学びました。その次に、三宿のイタリアンレストランで、2年勤務しました。

そこで今の勤務しているオーナーについてこないかと言われて、ドンブラボーを一緒に立ち上げ、4年半くらい経ちました。それまでは色んなものを見たいという願望があり、1~2年でお店を移動することが多かったです。


現在のお店DonBravo(ドンブラボー)での経験

評価がネットでわかる時代、徐々に美食家など食通の人が来るようになって来ました。やってきたことは間違っていなかったと思うようになってきました。その実感は昨年の9月頃からですかね。

*食べログ評価:https://tabelog.com/tokyo/A1326/A132601/13144681/

お店の場所が都心ではないので、都心に発信出来なければ意味がないと思い、自分たちしかできないことを考えていました。

例えば、イタリアンのジャンルも色々あり、郷土料理・創作料理・東京イタリアン(日本の食材をイタリアン風に)等。

どのジャンルにもないものをどう作るかを考えて行きました、どこにもおさまらないものですね。その一つとして、文化をどう繋げるかを考えていきました。例えばイタリアンでも色々な種類がある、ナポリ、ピエモンテ、ローマ、etc. 日本も同じで、地域にとって様々な料理があります。

そこで、日本の食文化とイタリアの食文化を繋げたら、僕等にしかできないものになると思うようになっていきました。例えば、煮込みの文化。ハチノス(モツ)を、日本のモツ煮の文化と、イタリアの白ワイン煮と掛け合わせる。白ワインで煮込んだハチノスに、べったら漬けを添えたり、八丁味噌をフリーズドライにしてかけたり。他にも、日本海の寒ブリをカルパッチョのようにし、ローマのテリーヌ(コッパ)を合わせて魚と肉を掛け合わせたベースを作り、テリーヌはイタリアンパセリを添えたりするので、湯沢のセリと春菊を合わせナッツのペースト、オリーブオイルを合わせた春菊オイルを掛け合わせるとすごく合う。さらにブリには大根も相性が良いので、いぶりがっこを乾燥させて砕き、塩をかけて。いぶりがっこ塩を作って添えています。

ただ秋田の食材を使うだけではなく、私はイタリアンにしっかりと落としていくことをしています、そうしないと自分がやる意味がないと思っているので。

ローマと東京は気候が似ていますが、私は秋田出身なので、そこに更に秋田の文化を入れていきたいと思っています。秋田に気候が似ているのは、トリノやピエモンテですね。そこでも働いていたいと思っていますし、食材を通して繋がるものがあると思っています。

海外へ修行

来年の春過ぎに修行のため、イタリアに行きます。

元々、20歳くらいの時から行きたいと思っていたのですが、2年前まではシェフに止められていた。シェフには「ある程度のものを知ってから行くほうが吸収できる」「インスパイアされるものが全然違う」と言われていました。すぐにでも行きたい気持ちを抑え、この人には筋を通してやめたい、義理と人情の世界、行ってこいと言ってくれるタイミングで行こうと思いました。

ハングリーになることが大事で、ハングリーだからこそクリエイティブなことができると思っています。人生80年、生きている以上かっこよくいたいし、その土台作りが今だと思っています。

最初はフィレンツェで語学を学びます。数ヶ月は勉強し、そのあとは働きながら1年間滞在しようと思っています。来年の春、ローマで1つ星を取ったシェフが日本に来るので、その方の繋がりからローマで働けるかもしれませんし、もしくはその繋がりからで別の道が開けるかもしれません。イタリアの後はパリと、イエールのお店からも声を掛けて頂いているので、フランスにも行こうと思っています。コペンハーゲンも行ってみたいですね。期間は決めていませんが、3年間くらいは海外にいると思います。コペンハーゲンはレストラン「noma」が街のクオリティを上げていますよね。それも食の力の一つ面白い事例だと思います。


12/31、湯沢でのイベントの位置づけ

10年間日本で修行し、これからイタリアに行くという中で、現時点での挑戦、区切りとしての位置づけです。育ってきた環境で、知っている人たちに食べてもらいたい、イタリア料理を知ってもらいたい。あんぱいで行きたくないので、攻め続けた料理を出したいと思っています。

間違いなく美味しいミネストローネとかではなく、今東京の自分たちのお店で出しているようなメニュを出します。お客様がどんなリアクションするのか、自分への挑戦です。湯沢の人にどう捉えられるんだろうという挑戦ですね。

イタリア料理イコール、ピザ・パスタだけじゃない、ということを知ってもらいたいですし、お互いのきっかけになれば良いと思っています。ちゃんと修行した人間の出す味は違うと信じていますし、知ってもらいたいです。

数時間で、何ができるか。1%でも、1人でもいいから食べるのって面白いんだ、とかマリアージュやペアリング等の組み合わせの可能性、文化の可能性を感じてもらえたらなと思います。

食は人を変える力があると思っているんです、食で自分が変わったので。食に感動して、初めて自分からもっと勉強したいという意欲が湧いたんです。ワインもそうです、生産者が気になり、その生産者の違う種類のワインも勉強したり、マリアージェの可能性を知ったり。

感動を与えられる人になりたいんです。

ありがとうだけじゃない、料理という自分ができることで、興味を持ってきてくれている人へ、心を動かせれるものを作りたい。そういう空間にしたい。愛がないとできない仕事なので。

【柴田正幸シェフのディナーパーティー】

日時:12月31日19時〜

場所:Cafe Lounge 17 秋田県湯沢市柳町2-1-4

内容:料理+飲み放題 4000円

先着30名様

080-9252-1717(店番)にて予約


湯沢でチャレンジするということ

将来的に、湯沢でお店やりたいと思っています。水も食材もいい。東京で手に入る食材と違いますし、取れてから10分で食べれるので、香りが生きています。爆発力があるんです。全然違うんです。湯沢の食材を東京に送るよと言われるんですが、現地で食べるのと全然違うものです。イタリアは各地に星付きのレストランがありますが、日本だけミシュランが東京版など、都市だけにあります。

東北も各県に有名店がにあります。秋田にはまだないような気がします。東京だけでなく、アジアからも見てもらえるような食にしたい。湯沢の食材を湯沢で調理してみたい。それを調理する調理人が必要なんです、それが自分であると言えるように、言ってもらえるようになりたいんです。


編集後記   

起業家をとりあげているこのブログですが、柴田さんは起業はまだされていないものの、起業家マインドをもち、さらに地域を大きく変えるような人と感じたため、お忙しい中時間を作っていただき、お話を聞いてきました。

体の奥底から出てくる「人を感動させたい」という言葉や想いに強く共感しました。また、ローカルの強みを肌で感じていながら、グローバルに向かう視野の広さ・行動力は地域を変える大きな力になると感じました。

今の柴田さんの料理、今後海外で修行しながら作る料理、帰国後の料理、それぞれ食べてみたいと思いました。本場イタリア、そしてフランス、近年「noma」を中心に食が国の経済にインパクトをあげているデンマーク。出国前に一度、そして海外でもまたお会いしたいです。

12/31、湯沢市でのパーティーが良い時間になること、期待しています。(MAKOTO/堀江)

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