【エッセイ】君の指が音を奏でる
連れ合いはピアノが好きだ。
小中学校の時に習っていたとのこと。
特に発表会とかがあるわけでもないくらいの小さな教室だったらしい。
実は私も同じか、もっと長い期間習っていた。恥ずかしながら発表会もあった。
しかし、私は今、楽譜も読めなくなっている。
あの時の月謝と時間が、正直勿体無い。
対して連れ合いは、日々楽譜とにらめっこし、練習曲をこなし、新しい曲にも挑戦している。
同じ曲でも、違う楽譜を手に入れ、見比べたり、自分で運指を決めたりと、本当に熱心だ。
実は私は曲名などなど、よくわかっていない。
でも時々ふとかかる曲が聴いたことある!とはなる。
何を弾いているのか聞いてみた。
なんでも私がバッハやモーツァルトは心地よさそうに聴いているそうで。
気を遣ってもらっている。
ありがたい。
少し話は逸れるが、先日読んだ本に「自学自習」という言葉があった。
本では、主に読書による自学自習について述べられているが、連れ合いはピアノの練習において、まさに実践している。
例えば、自学自習の最大の問題点とされている、継続の難しさと習慣化するためのルールが本では以下のように紹介されていた。
1. ペース配分→何日でこのくらいとか、色々考えている様子
2. スキマ時間の活用→暇さえあれば弾いている
3. 自分に合ったツールの使用→電子ピアノで時間への制限を無くし、Amazon music unlimitedでさまざまなピアニストの曲を聴いている
4. 学びの案内人(先達)をもつ→往年の名ピアニストからYouTubeなどでのピアノ演奏まで色々参考にしている(時々ピアニストみたいに弾けないからって、しょんぼりするのはやめていただきたいが、笑)
5. 一定期間、一つのテーマに集中→この曲に挑戦したい!と何度も練習している
学ぶってこういうことなんだなと、連れ合いのピアノを弾く姿を見て、改めて気づかされた。
せっかくなので、なにかSNSにでもUPしてみればと言うと、そういうのは苦手だと言う。
自己顕示欲のためではなく、あくまで自分が好きであるから、自己肯定のために弾いているようだ。
そんな純粋さが素敵だと思った。
私も好きなことー文章を書くことーをやってみたい。
誰に評価されるためでもなく、好きだからと言うだけで、続けてみたい。
そう思えたのは、連れ合いのピアノを聴いているからかもしれない。
素敵な音色が背中を押してくれている。
また元々、人に聴かせることは苦手なのだとか。
緊張すると弾けなくなるそうだ。
でもそんな姿を私には見せてくれる。
どうかすると私はどんな名演奏家の演奏よりも、連れ合いの演奏が好きだ。
辿々しくも愛らしいその音色が。
時々混じる鼻歌と、間違えた時に慌てるその声が。
『天才柳沢教授の生活』という漫画がある。
ここにピアノと読書の関係が描かれるエピソードがいくつか。
しばらくは専属の弾き手と聴き手でいるのもまた幸せだろう。
こんな関係が幸せだと言ってくれたことがある。
さて、今日もまた君の音色を聴きながら、本のページをめくろう。
私は連れ合いのピアノがとても好きだ。
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