#ほろ酔い文学
【SS】株式会社のおと/#毎週ショートショートnote
『株式会社のおと御中』
宛名を書いて、封をする。
せっかく内定を頂いたのに、お断りの手紙をしたためることになるとは思いもしなかった。
「書けた?」
「うん、一応ね。」
「ごめんね。」
「なんで謝るの?」
「せっかく内定もらったのにさ。」
「でもぎりぎりまで決まらなかったのは事実だし、もうどこでもいいから入りたい!みたいになってたところだから。」
「会社員の方が気楽だったかもしれないけど、でも付
【SS】タイムスリップコップ /#毎週ショートショートnote
ここにコップがある。
私にとっては時を忘れさせてくれるコップだ。
すなわち晩酌用のコップ。
持ち重りのする厚手のガラス。縁の部分が少し分厚く、口あたりが良い。上から2センチくらいに模様が入り、普段はその線より下、呑みたい日はその線より上まで注ぐ。
酒器にこだわる人からは笑われるだろうが、私はこのコップでないと、呑んだ気がしないのだ。
ビールでも、日本酒でも、ワインでも、ウイスキーでも、焼酎で
【SS】涙鉛筆/#毎週ショートショートnote
ふと、本当に、ふと思い出したのだ。
あれは小学校の低学年の頃、よく隣に座った嫌な奴がいた。
髪がざっくばらんなことも、着ている物が子供っぽくないシンプルなTシャツにショートパンツなのも、文字ばかりの本をいつも小脇に抱えているのも、先生にあてられた時にすました顔して答え、そして先生に褒められてもにこりともせずにすましていることも、何もかもが気に食わない奴だった。
そんなある日、自分が先生にあて