**.10年目看護師が新人になってみた実証実験報告.**

どうも、自称スパイ看護師です。
今回は私が看護師人生をかけて行ったスパイ活動について報告させていただきます。

**.10年目から初めての手術室へ.**

へき地離島や災害救急を志し、「どこでもどんなケースでも対応できる看護師になる」を目標に、10年間ICUや外傷センター、お手伝いでERや、へき地病院、急性期病棟などで経験を積みました。
「完璧」なんて無理だし、「全部中途半端」と言われればそれまで。自覚はあるし、受け入れている。(実際に起きた弊害についても触れていきたい)
風当りはもちろん強かったけど、私が目指す世界はきっと引き出しが必要だという独断と偏見のもの逆風を突き進んできました(笑)
※キャリアの方、もうやめとけとかアドバイスあればどうかわたしをやさしく止めてください・・・(笑)

なので、絶対進む先に必要になるであろう座学では到底カバーしきれない未経験分野の手術室へ足を踏み入れました。(すべて自己判断当社比)

**.職場の受け入れ状況.**

入職にあたり私は初体験の分野だったので、しっかり謙虚に学ぶ姿勢でいこうと心に誓っていました。
そして入職前職場では「10年目のICU=怖そう厳しそう」というイメージだったそうです。

ですが、新卒さん3人と並び挨拶した私。
「どれが既卒かわからなかった」と言われ、そのイメージはすぐに払しょくされ、フレッシュなものと書き換えられましたが、もししっかりとオーラを持った方だったなら敬遠されるといった弊害があったかもしれませんね。

私はいつだって謙虚であるべきという信念は変わらないし、親しみやすい人間でありたい、それはこれからも大事にしようと思っている。
でも、そのようなイメージが後々まで後を引くとはその時は夢にも思っていませんでした。

**.いざ参る!手術室最初の1週間.**

一週間で師長さんに「すいませんやめます」と言いました(笑)
その理由は一言でいうと「当たり前が違いすぎて愕然として怖かった」から。

あくまでたった1週間、初見の印象をユーモア交えて話すと、
・私のベースは集中治療「先手・急変を防ぐ」
 →手術室は「スピード命!!!!」

・術前訪問は術後退院後まで想像してもらいたい
 →手術室は「スピード命!!!」

・機械とか見てイメージつけてから・・・
 →手術室は「その場で覚えろスピード命!!!」

という感じでした(笑)

わたしの当たり前は、そこでは「そんなことより早くして」と否定されるようなことだった。
※例:ガスの結果で補正が必要かと思いついでに薬を取りに寄ると看護師2年目の先輩に「は?何やってんの早くして」と言われる毎日。(といってもたった1週間の時点だが)

安全よりも大事なこと?
と思いつつも、何が当たり前なのかわからなくなった私は、今まで学んできたことは何だったんだろうとか、本当に今までのすべてを自分が否定してしまった。(何度も言うがたった1週間笑)
「先手必勝!しっかりとした準備が生死やその後の人生を左右する」
と思っていた私には、
3つ目はともかく、上の2つは本当に理解ができなくて、
「わたしはこの環境で患者さんを守っていけるんだろうか」と思った。
※というか学ぶ姿勢で行くこと自体わたしが間違ってたんだろうけど

それほどまでに、場所によって「当たり前」や「正しいと信じていること」は違うのだ。転職する人は要注意。
最新論文を引っ提げて絶対にあなたが正しい主張をしても、それはどこに行っても変わらないのが世の常らしいです。結果世の中多数決。

完全な新人になったからこそそれがはっきり理解できて、つらかったけど今ではよかったと思っている。
施設によってはたった1週間でスパイ活動は結果が出ることもわかった。

**.後世に語り継ぎたい師長の言葉.**

そんなわたしがなぜ生き延びたのか?それは師長さんの一言。

私「師長さんわたしはやっぱりこの環境で患者さんを支えられない」
師「なに言ってるの~そりゃあ簡単じゃないよ~」
 「限られた時間で患者さんの思いを汲み取り活かす、看護の極みだよ」
私「・・・極み・・・だと・・・!?」

そんな世界があるなら見てみたいと思った。
今でも師長さんのことは尊敬しているし、感謝している。
※多分退職したから幻滅されているだろうけど(笑)

今でこそ言葉の力は無限大と言葉で表現できるようになってきたが、
この頃からたった一言で人を生き返らせることのできる世界にも興味が沸いた。

**.頑張ったこと.**

とにかく最初は大変だった。相変わらず2年目の先輩に「は?意味わかんない」といびられながらも(もはやネタ)頑張って経験を積んだ。

頑張ったことの具体例を自虐気味にお送りします。
※新人のリアルな気持ちとNGワードも重ねてお送りします。

***「なんでそんなこともできないの?」***
と罵られるので、意地で3回法(見学→フォロー付きで実践→見守りで実践で独り立ち)を乗り越え各種手術に入りました。

誰もが最初はできません、あなただってそうだったはず。
たった1年で忘れてしまったのね。
私みたいな変人じゃない限りはめげると思います。
新人さん大事にしましょう。
そして続ければ誰だっていつかはできるようになるから大丈夫。
1つずつ確実に目標達成して自分を褒めて進んでいけば
1年先あなたはきっとその人位もしくはもっとできるようになってるよ。


***「遅いもっと早く戻ってこれないの」***
そうどんなに罵られようとも、自分の担当手術に響かない限りはしっかり術後~退院後の生活をイメージできるような術前訪問を心掛けました。
リスクに応じて様々な指導も行いました。限られた時間ではあったけど、できることをしようと考えて、動きました。
全員は追えてないと思いますが、私の患者さんは家族さん含めONE TEAMとなって手術・病気に向き合い、結果術後合併症を起こさず頑張ってくれました。それは今でも誇りに思います。
もちろん表でアレルギーだとかあれやこれや表を埋めるだけの人よりは時間かかります。でもこの辺から気付き始めたことですが、合併症や術後帰室中の急変など、自分が防ぎえたことかもしれないことにすら気付かず病棟のミスだとあざ笑う看護師よりいいと思いました。

単純に時間がかかっているだけなのか
しっかりと患者さんと向き合っていた時間なのか
ちゃんと見極めて指導できているのだろうか。
あなた自身が必要な時間だと理解していないだけではないのか。
新人さんから学ぶこともあるのではないか。
いつだってupdate続けている看護師からは学ぶことが多い。
だから新人さんの可能性を信じているし、学ばせてもらってるし、支えていきたい。
自分が思う最高で大切な時間を過ごしてね。


***「余計なもの持ってこないで」***
相変わらずそう罵られていたけど私はやっぱりついでに薬なりなんなり持っていった(笑)だって必要だし、事実医師は使用する。
それは即ち専門性を活かしたチームのコーディネート。頑張った。
考えて行動した結果、その答えが別の人の行動としてリアルタイムで返ってくる。そして手術時間の短縮や状態の安定につながる。
これが、手術室看護の醍醐味なのかな?と少しだけ思った。

なかなか手術室に存在意義を見出せずにいたけど、術前訪問一人で行くようになったあたりから、「自分ができること」に目を向けられるようになってきて、罵られても割と気にしなくなってきた。自分の道を自分で切り開いた感を感じられるようになってきた。
最初は振り出しに戻ってしまった。何やってるんだろう自分。と本当に後悔したけど、よい経験したなあと。これから転職なり職場環境について考える人の参考にもなれればいいなと思った。

「余計なもの」は使う人によっては必要なもの。
先輩の言葉よりその目に見える結果を信じるようになった。
ささいなことでも成功体験を積み重ねていけばきっと未来につながるよ。

**.そして草の根活動が少しずつ根付いていく.**

上記のような毎日を過ごすことで、少しずつ周りが気付いてくれるようになっていった。
毎度ガス測定のあと部屋に戻ってきたときに「薬持ってきてくれたんでしょ」と待っててくれるようになった。

そして一番嬉しかったのが、それを見ていた新人さん。
「どうしてわかるんですか?」
疑問を持てる人は絶対に成長する。そして早いのだ。
好きこそものの上手なれって本当で、
動機づけ・意識づくりができたならもうこっちのものなのだ。
勉強のヒントを与えるだけですぐに色々吸収していたな。
若いっていいなあ。


某2年目の看護師に「逆になんでこうしないんですか?」って聞いてるのを見て、新人さんはしっかり意思を継いでくれた気がしてうれしくなった。
完全に多数決をひっくり返すまでは続けなかったから、その後新人さんはもしかしたら大変な目に合っているかもしれない(笑)
でもそれはそれで私もそうだったようにきっと学びがあると信じている。

**.10年目で新人をやってみた まとめ.**

・風当りも強くつらかったが、学びももちろんあった。
・目標設定がゆらぐとただ病んで終わるかもしれない。
「固定観念」はもしかしたら不要なのかもしれない。
 →多分これとのギャップが一番のつらさを生んでいる
・でも根拠は外してはいけないところ
・大事なのは「即興力」なのかもしれない
・自分の持ち味は活かすべし!ひたすら自己と向き合いブラッシュアップ!

結局うまくまとめられない残念な奴ですが、
以上現場からでした!