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お盆前の読書会『不在と永遠、詩と物語』 レポート①

この夏、8月11日と12日の2日にわたって、お盆前の読書会『不在と永遠、詩と物語』を開催しました。東京・神保町から移動新刊書店ハリ書房さんがご出店に来て頂いたので、それに合わせて、店の前の駐車スペースにテーブル、椅子を設置して屋外で読書会を開催しました。

今回、お盆前とあって、喪失、詠別を読書会のテーマにしました。重たいテーマでしたが、参加者の皆様のおかげで、2日とも穏やかで楽しい雰囲気となりました。ご参加頂いた皆様には、本当に感謝しています。

読書会は18時スタート、暗くなったら様々なライトやキャンドルを灯しながら続け、まるでキャンプのような雰囲気でした。読書会終了後、枝豆や桃を食べたり、ビールを飲んだり、最後は花火までして、とても夏らしい良い時間となりました。

それでは、前置きが長くなりましたが、今回の読書会を彩った本をご紹介いたします。ひとまず、この記事では8月11日、12日に私が紹介した本を一挙ご紹介します。今回、参加者の方々からご紹介頂いた本も沢山あるので、何回かの記事に分けてレポートしていきます。

「くまとやまねこ」湯本香樹実・文、酒井駒子・絵

絵本「くまとやまねこ」は、親友のことりを亡くしたくまが、その死をどのように受け入れていくかという話。バイオリンを弾きながら旅をするやまねこが、悲しみに沈んでいるくまにとても優しい接し方をし、ある方法で手助けをします。その結果、悲しみのあまり、色を失っていたくまの世界に鮮やかで温かい色が戻ってきます。音楽というものの役割も感じさせてくれます。

「ムーミン谷の十一月」トーベ・ヤンソン
鈴木徹郎・訳

ムーミン童話小説は全9作あり、こちらはシリーズ最終作で、なんとムーミン一家が出てこない物語。ムーミン一家に会いにムーミン屋敷を訪れた、スナフキン、ミムラ、フィリフヨンカら。しかし、一家はなぜかいなくなっていた。一家の帰りを待ちながら、残された者たちはムーミン屋敷で共に暮らすことに。各々が不在となったムーミン一家に思いを馳せ、共に過ごした日々を思い出し、様々なことに気づいていく、切ない秋の物語。

「なつかしい時間」長田弘

詩人・長田弘がNHKの番組「視点・論点」語っていたことを文章にまとめた一冊。長田さんは様々な死者たちに、失われた風景や記憶に思いを寄せながら、詩や文学について真摯に語りました。番組の放送は17年という長期にわたり、その期間には東日本大震災も起こります。福島出身の詩人は惨禍を受け止め、なおも真摯に語り続けました。なつかしい時間を思い出させる名著です。

「えーえんとくちから」笹井宏之

笹井宏之さんは歌人・詩人。2009年に26歳でご逝去。苦しい難病を抱えながらも、創作に励み、美しい作品を残しました。彼の作品は、自分や他者に向かって歌われたレクイエムのようにも感じます。本当に透明で静かな作品ばかり。笑いや悲しみ、ユーモア、願いや祈りが込められていて、不思議な安らぎや温もりがあります。頬をそっと撫でていく風のような短歌や詩です。

「かぜはどこへいくの」
文・シャーロット・ゾロトウ
絵・ハワード・ノッツ
訳・まつおかきょうこ

夜寝る前に、小さな男の子がお母さんに色々な質問をします。「かぜはやんだら、どこへいくの?」などなど。お母さんはその一つ一つに優しく答えます。2人の対話はとても心温まるもので、鉛筆画による絵も繊細で美しいです。物事や現象に終わりが訪れても、違う形、違う場所で続いていくと語ってくれる作品。人の心も風のようなものかなと、この作品を読んで思いました。

「海のふた」よしもとばなな

ふるさと西伊豆の海辺で、かき氷のお店を始めたまりちゃん、まりちゃんの家にホームステイしながら、お店も手伝うはじめちゃん、2人の女の子のひと夏の物語。はじめちゃんはおばあちゃんを亡くしたばかりで深い悲しみの中にいる。タイトルは音楽家・原マスミさんの同名の歌「海のふた」より。沖縄な版画家・名嘉睦稔さんの版画が挿画となっていて、とても色鮮やかで美しいです。ゆっくりと海を眺めているような感じがする小説。

「想像ラジオ」いとうせいこう

2011年の東日本大震災を描いた、いとうせいこうさんの小説。大震災の2年後の2013年に初版刊行。大震災の過酷な被害を受けた町で、想像するとどこからか聞こえてくる、とても不思議な「想像ラジオ」の物語。生きている者たちが死者たちの思いを想像すること、たとえ一方通行であっても死者たちに語りかけることは大切なことだというメッセージが込められている作品。

「一人盆踊り」友川カズキ

歌手、詩人、画家、競輪愛好家と様々な顔を持つ、友川カズキの新旧の様々な随筆、詩を収めた一冊。友川さんが出会い、別れてきた人々、作家・中上健次、コメディアン・たこ八郎、弟の覚(さとる)のことが書かれています。友川さんは自分の歌や演奏を「一人盆踊り」だと言っていますが、亡き人々に対しても歌を歌っているのかもしれないと本書を読んで思いました。「ピストル」という曲は、歌と演奏が破裂していて凄まじいです。

さて、お盆前の読書会『不在と永遠、詩と物語』、喪失や詠別という重たいテーマでしたが、参加者の方々のリラックスした雰囲気もあって、何だか穏やかな気持ちになった良い時間でした。次の記事では、参加者の方々よりご紹介頂いた本をご紹介させて頂きます。どうぞまたお読みになって頂けたら幸いです。それでは、また。

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