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100年後の君に、詩集を贈る 番外編〜賢治と中也〜

「すべてこれらの命題は 心象や時間それ自身の性質として 第四次延長のなかで主張されます」

宮沢賢治は、大正13年、1924年に出版された「春と修羅」の序文にこのように書いています。今から約100年前です。ちなみに、その前年には関東大震災が起きています。

賢治は、自分の詩や童話の世界が、自分の人生の時間では完結せず、未来の時間に延長され、読者の心の中に深く広がっていくことを願って、37歳の最後の日まで数々の作品を残しただろうと考えます。

元々身体が弱く、病気によって自分の命が長くないことも知っていたからこそ、亡くなる直前まで原稿に手を入れ続けたのだと思います。自分の生命や魂を刻んだものを世界に残そうとして。

中原中也は賢治の「春と修羅」に激しく感銘を受け、影響も受けたようです。何冊も買い込んで文学仲間に配ったというエピソードもあり、中也は賢治の詩に深く共鳴したようです。

中也の「ゆあーん ゆやーん」などの擬音語、オノマトペは、賢治からの影響とも言われています。詩を「歌」とも言っていた中也、意識の流れをそのまま書き綴ったかのような、賢治の詩に流れるリズムや旋律に、深くインスピレーションを受けたと思います。

賢治が言う「第四時延長」は、四次元への延長、拡張みたいな感じのイメージかなと。心や魂が真摯に刻まれた、詩や歌は古びることがなく、永遠の輝き、無限の広がりを持っていると思います。

100年後の君に、中也の詩集を贈ります。

風が立ち、浪が騒ぎ、
無限の前に、腕を振る
中原中也「盲目の秋」より

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※本稿は、本屋しゃん企画の映画「タゴール・ソングス」に関連したオンライン・ブックフェアに、ゆよん堂として寄せた文章のアウトテイクです。100年後の誰かに届けたい本を色々な方が選書、コメントを寄せています。とても素晴らしい企画ですので、ぜひご覧になってみてください。

ONLINE ブックフェア  映画「タゴール・ソングス」誕生記念ー 100年後に、この本を心を込めて読む、あなたは誰ですか?
https://note.com/honyashan/n/nf834dcd3044a

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