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駆け出しキャピタリストのころクセの強い先輩から学んだこと

「えぇー、っと、えぇー、、と、お前名前なんだっけ?」
「た、たけがわですよ!」

中途入社から半年たっても唯一の部下の名前を覚えない先輩が私のキャピタリスト人生初の上司でしたw

JAFCO〜H通信の投資部門というバキバキのキャリアの方でしたが、上記のようにすっとぼけたところがある方で、クセは強いのですが憎めない、私にとって忘れがたい先輩です。  

そんな先輩の言動で見習いたいと思ったところは3つ。  

* 起業家やプロダクトをひたすら褒める
* 初回アポから自分の知見やネットワークで貢献(しようと)する
* IPOまでの資本政策をVC側から提案する

「アポ取って。良い社長だったら同席するから」

とだけ言われてるので(汗)、自分が一度訪問して前向きに進めたい会社については、次回に先輩を連れていきます。移動中に軽くブリーフィング(資料は前日までに渡しても大体読んでないw)し、いよいよ社長と初対面、、
んでもって開口一番、

「社長! 絶好調ですね!」

これで一瞬私も先方も「えっ」となりますw 

ただ徐々に先輩のペースになります。プロダクトやサービスのことを聞きながらその場で触らせてもらったりデモを見せてもらいながら、とにかく褒める。最初は「何やこのあんちゃん」みたいな顔をしていた起業家も態度が軟化してくるのがわかる。他にもオフィスのことや社員の方の応対やら、基本褒める。当時の私からするとヨイショのやりすぎにも見えたのですが、起業家や経営者へのリスペクトや愛あってこその言動だったので受け入れてもらえていたのかなぁと思います。

で、話が盛り上がってきて、どこどこと提携したらどうか、とかどこどこに営業したらどうか、と具体的な話が出たタイミングで突然、

「社長、いま電話していいですか」

と、話題に出た提携・営業候補先の会社の経営者に携帯から電話をするわけです。でもって、ちゃちゃっとアポの日程まで決めてしまう。最初は人脈すげーとしか思っていませんでしたが、そのうちに初対面の場でこそ相手に貢献をすることが大事なんだと気づきました。

ただ話を聞いて帰ってくるのではなく、お土産を置いて帰る。私は少しアレンジして、話の起点を多く持てるように徹底して準備をするようになりました(例えば起業家のブログやSNSで経歴や投稿を全部チェックしたり)。

そして先輩は面談の最後に、

「今日のお話を受けて資本政策の提案をしますね」

と締めくくる(当然作るのは私ですがw)。

会社に戻ったらエクセルでIPOまでの資本政策表を作成してメールでその日のうちに送る。資本政策案ですからタームシート的な意味もありません。ただ、これを起点にそもそも考えてもいなかった資金調達の議論がスタートし、具体的な調達アクションへ進むこともありました。IPOまでの道筋を具体的に思い描き、それまで前向きでなかった資金調達やIPO路線へ一歩踏み出す起業家の方もいました。

資本政策を作ったことがあるひとは分かると思いますが、現在のラウンドについて起業家の希望の資金調達額やバリュエーションを足元のKPIや自社の属するマーケット動向を元に落とし所を探っていくことと、中期経営計画を元に、数年後実際にIPOしてどんなバリューがつくかというところまでの一連の資本政策を提案することではアプローチも受け手の印象も異なります。

当然面談時にしっかりヒアリングし、事業背景やビジネスモデルを理解したうえでこちら側で中期経営計画の叩きを作らないと資本政策へは落とし込めません。私自身もこの繰り返しでベンチャーキャピタリストとして(のちにはベンチャーのCFOとして)の基礎力を磨くことができたと思っています。

冒頭の通り、かなりクセの強い先輩ではありましたが、起業家や経営者へのリスペクト、初対面の場での相手への貢献意識、資本政策を能動的かつ中長期的に提案することの重要性、を私は学ばせていただきました(遡るとJAFCOイズムとか野村イズムにもつながるのかもしれませんがw)。

私がいまCAC含めて若手のベンチャーキャピタリストの皆さんのお手本になれているか甚だ不安ではありますがw 時は経ってもこの仕事の根幹や意義は変わっていないと思いますので、スタートダッシュをしきれていない方や結果が出なくて悩んでいる方、自分なりの指針を見つけられていない方こそ、焦らずに基礎固めをして、そのうえで自分なりの魅力を付け加えていくことをおすすめしたいなと思っています。

いまこの不安定な世情だからこそ、VCそしてキャピタリストの価値を問われているタイミングです。私もまだまだ起業家の皆さんに貢献できていません。ともに頑張りましょう!

ということで、若手のキャピタリストの方、起業家の方、テーマ限定せず何かしらディスカッションしたい方がいらっしゃいましたらお気軽にTwitterやFacebook等でDMくださいね。ではでは。  

もしサポートを頂きましたら起業家の皆さまへご馳走するなりして還元したいと思います。よろしくお願いします。