桂離宮――敗者の美学
日本では古来より『万葉集』や『古今和歌集』に代表される「花鳥風月」「雪月花」という美意識が連綿と続いている。花は散り、鳥の鳴き声は途切れ、風は凪ぎ、雪は溶け、そして月は満ち欠けを繰り返す。そうしたどこか欠落したもの、未完成なものに対するものに古来より日本人は美を感じてきた。たとえば、和歌の「もののあはれ」、能の「幽玄」、茶道の「侘び」、松尾芭蕉の「さび」。百人一首には月を詠った和歌が12首もある。
なげけとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな(「嘆け」といって月が私に